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ひろがれ!APネットワーク

インドネシア
インドネシア、ジョグジャカルタでの草の根活動

ガル・スクマラ
(ダスキン2期生)

 私は2000年9月から2001年7月の初めまでの約10か月間、ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業の第2期生として、日本で研修を受けました。日本に来る前の私は自分が難聴だということを隠し、聴者として生きることに必死でした。生まれ育ったインドネシアのジョグジャカルタでは障害者に対する理解がまだまだ低く、生活しにくいからです。
 しかし、日本でいろいろな研修と経験を積み、帰国後は地域の障害者のための活動をしています。今年の春からは、日本から来てボランティアとして活動を助けてくださっている坂本知加良さんの協力を得て、「マタハリク」というグループを作りました。
 マタハリクという名前を付けたことには、大きく分けて二つの意味があります。マタハリというのは、インドネシア語で太陽という意味があります。
 一つめに、インドネシアではとても貧富の差が激しく、障害をもっている人、子どもなどは貧しくなかなか光が当たることがないので「彼らに光を当ててほしい」という意味合いが含まれています。
 また、太陽というのはとても大きな力を持っています。私たちは今はまだまだ何の力も持たない団体ですが、太陽は希望を与え、力を与え、生きる力となります。一部の人たちだけが光を浴びるのではなく、すべての人たちが平等に光を受けることのできる世界になってほしいという願いが込められています。
 マタハリクの活動としては、聴覚障害をもつ子どもに絵本の読み聞かせや補聴器の支援、障害者センターを作りたいと思い、そのための活動を始めました。また、手話に対する意識を高めるための普及にも努めています。インドネシアの聴覚障害者たちは、依然として手話を使うことを恥ずかしいと思い、以前の私のように障害を隠して無理に聴者の社会に溶け込もうとする傾向にあります。そういう人たちに私は、「障害をもつことは恥ずかしくないんだよ」、「無理しなくてもいいんだよ」と伝えていきたいです。このように思う背景には、障害をもつ子どもを隠す親にも責任があると思います。そのため、私たちは親に対する啓発活動も行っています。
 グループの活動を進めるうえで、私たちは人間的な繋がりを大切にし、さまざまな広がりを大切にしたいと考えています。活動が常に草の根的存在でありたいということで、セミナーなどさまざまな企画を考え実施し、多くの人を集め、情報を得る機会を豊富に与えることにも力を入れたいと考えています。そのような状況を多く作ることで、個人的な主導権を障害者個人に委ねることができると思うからです。この企画には親、子ども、政府関係者、障害者だけでなく、すべての人が参加できるという点が大切であり、ただ話を聞いてもらうだけでなく、自分たちでイベントそのものを提案する力をも育てたいという考えに基づいて活動を展開しています。
 以前、私はインドネシアでの障害者に対する厚い壁の前に成すすべがなく、ただこの状況に耐えるだけでした。しかし、ダスキン・アジア太平洋リーダー育成事業の2期生として日本で研修をさせていただき、本当に多くのことを学びました。その中でも一番大きなことは、「障害は恥ずかしいことではない」ということを知ったことです。日本でたくさんの障害者と出会い、どんなに障害が重くても自立し、生活している姿をみて感動しました。それからというもの、私はこのような障害者の姿をインドネシアでも見たいという思いが強く心に残りました。
 しかし、母国に帰ってきてあまりの日本とのギャップに失望し、志半ばに諦めかけていました。幸運にもそのような時、日本から多くのボランティアの方が来てくださり、なかでも高村真理子さんに来ていただき、セミナーを開催していただいたことは私にとって本当に大きな転機となりました。今まで障害者は、政府の指示通りのプログラムを消化するだけでした。しかし、私たちは、日本から支援を受け、とても効果的なセミナーを開催しました。私たちマタハリク団体が行ったイベントにインドネシア政府は大変に驚き、親、子どもは希望を抱き、多くの効果を上げました。このような大きな効果を期待していなかったので、本当にうれしかったです。これからもマタハリクと共にインドネシアで活動していただける方をお待ちしています。
 最後に、支援していただいた日本の方々に、心からお礼を申し上げたいと思います。また、ダスキン・愛の輪財団、並びに日本障害者リハビリテーション協会の皆さん、そして日本のマタハリクメンバーに心から感謝をしています。これからも前途多難な道のりであると思いますが、共に歩んで行っていただきたく思います。