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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年5月号

支援費制度見えてきた課題と対応
~北広島市の取り組み

向島久博

支援費制度がスタートし1年余りが経過しました。居宅支援受給者証の更新手続きも修了し、昨年の慌ただしく過ぎた制度移行事務手続きは嘘のようです。私たち行政も混乱しましたが、それ以上に利用する方と家族は不安でいっぱいだったのではないかと思います。

一昨年の11月から、北広島市(北海道)では支援費申請手続きを開始しました。手続き開始に当たり、制度の概要を理解してもらうため、説明会を開催しました。通常、説明会を開催する場合は行政が一方的に日時、会場を設定し、多数の方々を対象とした説明会となります。これまで、このような説明会を見ますと参加者は少数で質疑も限られたものとなり、なかには説明者のほうが参加者より多い場合も見受けられました。

しかし、支援費制度の説明会は出前方式といいましょうか、親の会の定例会、地域での小グループ単位、養護学校の勉強会などの場を利用した説明会を行いました。小規模の説明会でよかったことは、ひざを合わせ、顔が見え、相談、質疑内容も個々の状況に対応することが可能となり、これにより参加者の不安、疑問を解消できたのではないかと思います。

不安といえば、昨年の1月上旬制度実施の2か月前、厚生労働省がホームヘルプサービスの上限設定を検討しているとの情報が流れたことです。障がい者自身の自己選択と自己決定が尊重され、障がい者とサービス提供者とが対等な関係となる、利用者本意の制度を構築するのが支援費制度ではなかったのかと。しかしこれは、個々の支給量の上限を定めるものではないことが示され、利用する方や家族は一安心しました。

当市では、ホームヘルプサービスなどの居宅支援事業を行っていましたが、ガイドヘルパー事業を支援費制度移行前の平成13年11月から事業開始したことが、その後の移行に際し、スムーズに行えた一つの要因ではないかと思います。これは、制度立ち上げに当たり情報収集するなかで、パーソナルケアサービスを行っていた事業者の方の意見や親の方の要望、意見を集約し、当初考えていた対象年齢枠を撤廃し、対象者を児童まで広げました。

また、委託事業者については、市外事業所も含め複数としました。これにより、サービス提供基盤の充実と利用者が複数の事業所から選択できることが可能となり、事業所間の競争意識が高まり、質の高いサービス提供につながり、結果的に使いやすい制度、使ってもらえる制度となりました。

障がいをもつ方が住み慣れた町や地域で生活を続けるには、福祉サービスの充実が求められますが、相談支援の体制も同様に不可欠です。

支援費制度においては、地域サービスの情報提供や、利用手続きの支援、並びにケアマネジメントを実施する総合的な相談窓口の重要性が高く、どの町でも整備する必要性が求められています。

この相談支援体制を整備するため、平成13年10月「障がい者生活支援センターみらい」を開設しました。事業の機能を生かすため委託事業とし、2名体制でスタートしました。平成13年度相談件数148件、平成14年度1,689件、平成15年度3,795件と大幅に相談数が増えたことと、3障がいに対応できる体制を整備するために、現在は3名の専門職員を配置し、相談を受け付けています。

支援費制度が始まって1年が経過し、利用状況など特徴がみえてきました。

一つめは、利用者が事業所の質とヘルパーの対応を見るため複数の事業所と契約し、子どもの障がい特性に対応できるヘルパーなのかどうかを見極めて事業所を選定していること。

二つめは、児童の居宅支援、特にガイドヘルプは夏休みなどの長期休暇の利用が著しく、通常利用の2.2倍の利用実績があり、休暇時の生活支援に大いに役立つサービスであること。

三つめは、介護保険からの参入による事業所の割合が多く(道は9割、北広島市7割)、サービス提供基盤は進んでいるが、障がいに応じた専門の事業所(特に自閉症など障がい特性に対応できる事業所)の数は不足しており、充実が望まれていることなどがあげられます。

これらのことから、支給量と必要とされるサービス提供(事業所)のバランスが重要で、支給決定を受けても使える事業所がたくさんなければ空手形と同じになってしまうことが明らかになりました。

グループホームは地域で暮らす障がい者にとってかけがえのない住まいであり、また、地域生活への移行を進めるうえでも重要な受け皿です。しかし、平成15年度の認可を見ますと全体数は微増であり、無認可のグループホームはまだ数多くあります。当市の状況は、平成15年度新たな認可は認められず8か所のままで、無認可のグループホームを増やす結果となっています。

また、就労については、不況の影響を受け、リストラに合うグループホームで生活する障がい者が増えてきています。これからの生活を考えますと、障害基礎年金だけでは生活費が不足し、貯金などを取り崩していかなければならない状態になることから、今後も就労支援に力を注がなければならないと思います。

最後になりますが、支援費制度を生きたものにするためには、利用に値する社会資源と相談支援体制の整備が不可欠と思われます。

(むこうじまひさひろ 北広島市保健福祉部福祉課)

支援費支給状況

1.障がい者数   単位:人

  身体障害者手帳(内児) 療育手帳(内児)
14年4月1日 1,816(39) 290(73)
15年4月1日 1,956(39) 300(67)
15年11月1日 1,998(36) 315(72)

2.居宅生活支援の状況

平成14年度 169人
平成15年4月1日 186人(14年度に対し17人増、比率10%増)
平成15年11月1日 244人(14年度に対し75人増、比率44.4%増)
(15年4月に対し58人増、比率31.2%増)

(1)身体障がい者   単位:人

  実人員 居宅介護 デイサービス 短期入所  
14年度 50 42 (13)  
15年4月1日 53 51 (11)  
15年11月1日 76 74 (12)  

デイの( )は通所介護事業所利用による相互利用

(2)知的障がい者   単位:人

  実人員 居宅介護 デイサービス 短期入所 グループホーム
14年度 25   17
15年4月1日 44 26   35 11
15年11月1日 58 39 42 11

(3)障がい児   単位:人

  実人員 居宅介護 デイサービス 短期入所  
14年度 94 22 63 32  
15年4月1日 89 40 51 47  
15年11月1日 110 50 64 51  

3.施設支援の状況   単位:人

  身体障がい者 知的障がい者
14年度 59 106
15年度 60 127
比較 +1 +21

社会福祉法授産12名除く

3.事業費   単位:千円

  居宅支援 施設支援
14年度 77,778 442,817
15年度 113,604 435,197
比較 +35,826 -7,520

15年度事業費は11ケ月分
* 12ケ月ベースで比較すると、居宅は159%、施設は107%

5.相談支援について

障がい者生活支援センター「みらい」

  延べ相談件数 支援費申請を援助した人数
14年度 1,689 51
15年度 3,795 47

H15年12月現在で道内10市(15年度で新たに4カ所開始)

1.支援費サービス基盤の状況(市内に所在する事業者)

(1)居宅

  身体障がい者 知的障がい者 障がい児
居宅介護
デイサービス
短期入所
グループホーム

(2)施設

  身体障がい者 知的障がい者
更生施設
療護施設
授産
通勤寮

(分場及び通所事業は本体施設に含める)


北広島市役所
〒061-1192 北海道北広島市中央4-2-1
電話 011-372-3311(代)
http://www.city.kitahiroshima.hokkaido.jp/


障がい者生活支援センター みらい
住所:北海道北広島市白樺町1丁目7番地2
電話/FAX:011-376-7776/011-376-7778
Email:miraitmt@agate.plala.or.jp

図 みらい関係調整図