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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年5月号

見えてきた課題

統合には断固反対

小林文雄

平成15年4月からスタートの支援費制度は、従来の行政が与える福祉〔措置〕から障害者自らが必要とするサービスを選択することができる制度として、いささか大袈裟な言い方かもしれませんが、21世紀における期待される福祉像として、大いに注目されるものでした。

ところが、そうした期待と注目に反し、スタートから8か月足らずで何と70億円もの巨額の赤字を来してしまうという誠に惨憺(さんたん)たる有様を招いてしまいました。

そうしたことから厚生労働省は、もはや税額を頼りとする支援費制度の存続は無理として、急きょ介護保険制度への統合の方針を打ち出し、6月までには結論を出したいとしてすでに検討に入っております。支援費制度の破綻を招いた国の責任は誠に重大と言わざるを得ません。

ところで、支援費制度にあって私たち視覚障害者が最も必要とするサービスは、何と言っても外出時におけるガイドヘルパーということになりましょう。

そうしたことから今や私たちにとっては、支援費制度の成り行きが最大の関心事と言えましょう。

そこで〔統合〕の問題ですが、特に65歳以上の高齢障害者を対象に機能及び健康保持など身体介護に主眼を置いた介護保険制度と、一方、社会参加を促進しもって自立を助けようとする支援費制度とは、根本的に理念を異にしております。

したがって、統合には大変無理があると言わざるを得ず、殊に私たち視覚障害者としては支援費制度の介護保険制度への統合には断固反対するものであります。

ならば解決策についてはどうなのかと問われれば、なかなか難しい問題ですが、たとえば一つの方法として、少なくとも〔ガイドヘルパー派遣事業〕に関しては、この際切り離して、すでに支援費制度とは別建てで実施されている聴覚障害者における〔手話通訳派遣事業〕にならう形がベストかと思います。

これがごく自然な形であり、なおかつだれしも納得のいく形のように思われますが、いかがなものでしょうか。

とにかく、いかなる形をとるにせよ社会参加と自立、そして共生の理念だけは貫き通してほしいものです。

最後に、少なくとも、丸ごと統合には断固反対の意思を表明して筆をとどめる次第です。

(こばやしふみお 社団法人東京都盲人福祉協会理事・福祉部長)