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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年5月号

見えてきた課題

重度身体障害の利用者として

小森猛

◆支援費制度の問題点◆

支援費制度が始まり1年が経ちます。

この制度を利用することで、一生涯施設での生活であると諦めていた人が独立し、自立生活を始める人が増えています。また、家族からの生活から独立し、自立生活をする人も増えてきました。

措置から契約へと移り変わったことで、障害当事者が『措置の中には権利は無いんだ!』と、ずっと訴えてきた結果、ようやく自分たちの運動で勝ち取った権利とも言える支援費制度の理念にはすばらしいものがあります。

しかし、中身はまだまだ充実していないのも現状です。まずは、消費者である障害当事者の必要とするだけの支援費を支給できていません。

京都の現状は、身体障害者、知的障害者ともに移動介護は32時間を上限としています。障害当事者のニーズに合ったサービスをと言われていますが、できるだけ支給時間を押さえようとケースワーカーは考えています。

この制度も予算があって成り立っているのは分かっています。しかし、この予算の問題で昨年の1月は、支援費の支給が1か月120時間となりました。また、今年に入ってからというもの予算が大幅に赤字なので、支援費の単価の見直し問題、そして介護保険への統合問題といったことが浮上し、障害当事者としては夜も寝られない時間を費やす人もいます。

毎年毎年予算の問題で、振り回されています。本当に、怒りが込み上がります。せっかく重度の障害者が施設や親元から離れ、独立し、自分らしい生活を送れるようになったのに、また施設や親元に逆戻りになるのではと、不安を抱えさせるような問題を国は平気でやっています。

また、支援費制度の問題点としては、『痰の吸引、導尿、適便、床擦れの処置等が医療行為で、ヘルパーはしてはいけない』『ガイドヘルパーが通学、通勤、作業所の送り迎えに利用できない』等、より重度な障害者が独立することは、まだまだ困難です。

そして、障害者が社会参加していくためには、まだまだ中身の充実が必要で、本当に使いたい所でサービスが使えないのが現状です。これではいつまでたってもノーマライゼーションの社会にはなりません。もっと使いやすいパーソナルアシスタントのような姿に支援費制度がなってこそ、障害者も社会参加ができ、ノーマライゼーションに近づくのです。

支援費制度をもっと充実させ、この制度を大切に考えてほしいものです。

(こもりたけし 京都頚髄損傷者連絡会会長)