音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年5月号

見えてきた課題

事業者の視点から

日野博愛

支援費制度施行後1年を経過、予想されていたこととはいえさまざまな問題や課題が明らかになってまいりました。さて、この支援費制度2年ほどの準備期間があったにもかかわらず、事業者や支給決定事務に関わる市区町村担当者への説明会は制度施行1年前から、支給決定に関わる極めて重要な部分はほとんどこの後半の6か月に集中し、利用者保護と制度への円滑な移行のためのみなし規程適用という配慮はあったものの、なんともあわただしく始まった支援費制度、また他方では三方一両損的な印象も拭い去れなかったと思います。

つまり利用者、事業者、市区町村それぞれの視点から考察すると、特定日常生活費の創設などによる利用者の負担増、身体障害者療護施設などの大規模施設や身体障害者授産施設、居宅支援におけるデイサービス事業などの大幅な収入減、国の財政が逼迫(ひっぱく)している中、サービスの支給量や障害程度区分判定においてバラツキが見られるなど地方財政への微妙な影響が強く感じられました。

支援費制度では、利用者主体の契約制度でなければならないし、契約の段階で利用者の自己決定、サービスの選択が保証されていなければならないはずです。1.選ぶに資するだけのサービスの種類、量、2.選んでも安心できるサービス体制の質、3.事業者の情報、4.十分な負担能力などの確保が前提となるわけですが、残念ながらこのような財政基盤、サービス体制基盤、支援体制基盤などの整備は市区町村により遅れや格差が生じているのが現実です。

事業者の視点から実務的な面を検証してみると、1.みなし規程の取り扱い、2.障害者程度区分判定、3.入所調整に関することなどに格差が明確であり、国の役割が制度の大枠を決め、運用については地方に任せているといったところに問題があるのではないでしょうか。市区町村によって格差や温度差が生じるのはある意味、国にも責任の一端があると考えます。

国の財政が逼迫し地方財政に影響が出てきている今、施設が果たすべき役割を的確に捉えなければと思います。1.利用者の自立や社会経済活動への参加を促進する、2.利用者の意思及び人格の尊重、3.居宅に近い環境、地域や家族との結びつきを強化。具体的には、1.積極的なあらゆる情報の収集・開示、2.生活向上のための苦情解決、3.リスクマネジメント、4.評価への対応、5.職員の質の向上。最後に、これからの社会の変化や制度の変化また、サービスの多様化などへの対応をスムーズに図ることが施設の役割であり課題ではないでしょうか。

(ひのひろちか 千歳療護園施設長)