音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年6月号

評価と課題 障害者基本法一部改正の成立にあたって

山田宜廣

改正がもたらすもの

今回の一部改正は、障害者の自立と社会参加の一層の促進を図るため、基本的理念として障害者を理由として差別その他の権利利益を侵害する行為をしてはならない旨の規定や、都道府県及び市町村に障害者のための施策に関する基本的な計画の策定の義務づけ、中央障害者施策推進協議会を創設するなどの重要な内容や、紆余曲折があったが全党一致の取り組みなど総意を得たもので意義ある改正である。

特に市町村障害者基本計画策定の義務化(平成19年4月1日施行)は、今後の取り組みにたいへん大きな意味をもつと思う。社会福祉基礎構造改革の重要な柱である「地域福祉計画」の策定や「地域福祉活動計画」の策定の推進など、地域福祉時代の到来にあって障害者基本計画の義務化のもたらす影響は有意義な効果をつくり出すものと期待する。また、中央障害者施策推進協議会の設置は、障害者団体の期待が強く、今後の運営に対する関心は高い。社会福祉協議会としても障害者福祉の充実に地域福祉の推進の立場からさらに全力をあげて取り組む地歩を築くことが必要であり、今後展開していきたい。

改正への対応

全社協障害福祉部に障害者基本法の改正についての具体的な対応が求められたのは、昨年7月1日自由民主党厚生関係団体委員会・障害者特別委員会合同会議で法案の説明をしたいという連絡であった。全社協の内部組織である心身障害児者団体連絡協議会(心身協)・身体障害者団体連絡協議会(身体協)の構成団体、全国社会就労センター協議会、全国身体障害者施設協議会に対して出席要請があり、意見交換したことが実際上の始まりとなった。むろんその前から法案の動きについては、さまざまな形で情報提供があった。

こうした動きに先立って全国社会就労センター協議会(セルプ協)は、15年度事業計画で「障害者差別禁止に関する法律検討委員会」の立ち上げや学習会の開催など独自に検討を開始した。また、心身協・身体協の構成団体の中には、改正に向けてさまざまな取り組みを独自ないしは、共同で検討をしていた団体もあり、改正の機運は大きくなっていた。

認識を深める

私自身が理解を深めるのに重要な資料になったのが、『月刊福祉』2002年10月号の特集記事「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラム。「アジア太平洋障害者の十年」最終年に関する行動基調で「わが国に横たわる障害分野に関する基本的な課題の列挙の中に「障害者差別禁止法」の制定」を読んだこと。この中で、国内の重要な動向に「障害者差別禁止法」の制定を求める動きが書かれていた。このことを契機にしていくつかの文献を読んだ。この課題にさまざまな経緯があることを学んだのは、『障害者施策の発展』―身体障害者福祉法の半世紀―(丸山一郎著、中央法規、1998)である。この中の差別的取り扱いの禁止の変化(110頁―111頁)の文章であった。『障害者福祉論』(新版・社会福祉学習双書2004第3巻、全社協発行)の「障害の法的定義」の記載も参考になった。セルプ協で立ち上げた委員会は、障害者差別禁止取り組みの背景や必要性、これまでの動向や今後の方向について模索した議論を重ねており、この論議も理解を深めることになった。この論議は、まもなく整理されるものになる。

今後の取り組み

法案審議の経過なども関係者からの報告や直接確認することなどもしたことがあり、廃案の一報が入った時には難しさも感じた。今国会での法案上程にあたり、全国身体障害者施設協議会が「社会への自立が極めて困難な最重度障害者の生存権保障」について議員と意見交換することもあった。さまざまあり法案の行方には強い関心をもちつづけてきた。

この法案の成立が今後の障害者福祉に大きな足跡を残すものになると思う。これからは、地域で、障害者基本計画の策定が地域福祉計画や地域福祉活動計画と連動し、障害者にとって住み良いまちづくりや環境の整備がさらに促進されることを念じるとともに、もられた内容の実現をめざしていきたいと思う。

(やまだよしひろ 全国社会福祉協議会障害福祉部長)