音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年9月号

日産車用最新型純正手動運転装置
『オーテック ドライブギア タイプe』のご紹介

眞崎敏史

1 日産の福祉車両に対する取り組み

私たち日産グループでは、生活のいろいろなシーンでお役に立ちたいとの意味をこめ、福祉車両を『ライフケアビークル』(LV)と呼んでいます。

オーテックジャパンは、日産自動車が100%出資して設立した会社であり、各種の少量生産車を担当しています。ライフケアビークルは、日産の開発部門と連携して、商品の企画から開発を行い、製造され、日産の販売店を通じて皆様にお届けしています。

ライフケアビークルには、介護用車両も含め、幅広いタイプをラインナップしていますが、特に日産車にジャストフィットする純正手動運転装置『オーテックドライブギアシリーズ』は、活動的で車好きなお客様からたいへんご好評をいただいています。

私たちは、クルマとしての基本機能である行動範囲の広がりという価値はもちろんですが、単にA地点からB地点へと移動する『箱』としてではなく、その移動を楽しくすること、すなわち、所有する喜びや、運転する楽しさなどをご提供したいと考えています。

今回ご紹介する、純正手動運転装置『オーテックドライブギアシリーズ』は、このようなクルマづくり思想のもとに、より多くのお客様に日産車の楽しさを堪能していただきたい、と考え開発いたしました。

2 開発のあゆみ

私たちは、手動運転装置に関しては後発参入であり、まさに手探り状態でしたが、その開発にあたっては、多くの車いすユーザーの方のご協力をいただき、実際に試作品で試乗していただくなど、現場・現物主義で開発してまいりました。

まず大切にしたかったのは、自動車メーカー純正としての信頼性、操作性、そしてインテリアとの統一感を含むデザイン性でした。数年の検討期間と開発期間を経て、1999年に初代オーテックドライブギア(写真1・以下ドライブギア)を発売いたしました。2002年には、さらなる進化を遂げた手動運転装置、オーテックドライブギアタイプe(写真2・以下タイプe)を発売いたしました。

写真1 オーテックドライブギア
写真1

写真2 オーテックドライブギアタイプe
写真2

3 信頼性・安全性へのこだわり

まず最大の特徴は、ベースとなる車両と同じ3年6万キロの保証をお約束していることです。これは、初代ドライブギアにも適用され、二代目であるタイプeにも受け継がれています。これを保証するメカニズムとしては、ブレーキ機構に2本のワイヤーを採用し、万一1本が切れるようなことがあっても2本目のワイヤーに切り替わることで、安心してお使いいただけるようになっています。万一1本目のブレーキワイヤーが切れた際には、ブレーキの操作力が明らかに軽くなり、ディーラーでの修理を喚起するようになっています。

タイプeのアクセル機構には、世界で唯一の電子制御方式を採用しています。この電子制御方式の採用は、標準車のアクセル機構が従来のワイヤー構造から電子制御構造に進化したことにより実現したものです。

タイプeでは、標準車のアクセルペダルに採用されている電子ボリュームと全く同等の電子ボリュームを手動運転装置の手元部分に内臓させています。手動運転装置の電子制御部品は、標準車のアクセルペダルと手動運転装置のアクセルで、全く同等の信頼性が確保されています。

車両側のアクセルペダルは、スイッチ操作で完全に切り替えられるようになっています。従って、手動運転装置を使って運転している際に誤って足が突っ張ってしまい、アクセルペダルを踏み込んでしまっても車は何も反応しません。逆に、手動運転装置を使わずに足でペダル操作する際に、誤って手動運転装置のアクセルグリップに触れてもいっさい反応しないため、健常者と共用する場合でも安心してお使いいただけます。

運転操作は、多くの手動運転装置とまったく同じく『引いてアクセル、押してブレーキ』です。グリップにはブレーキロック、ホーン(クラクション)、ウィンカー(方向指示器)のスイッチを備えています(写真3)。

写真3 オーテックドライブギアタイプe
写真3

なお、足操作と手操作の切り替えには30秒から60秒の時間がかかります。この間に、アクセルペダル側と手動運転装置側における、アクセルの全開と全閉の位置を完全に一致させる電気的な処理を行っています。これにより、手動運転装置で走行する際にも、車両が本来持っている性能を100%引き出すことを可能にしています。また、従来必要であったアクセルの遊びの調整なども不要となっています。

4 快適性へのこだわり

電子制御方式の採用により、アクセルの操作力はたいへん軽く滑らかになり、同時に左手を預けられる台座『パームレスト』の採用が可能になりました。アクセル操作はパームレストに左手を預け、わずかに手前に引くだけですので、長時間走行や、曲がりくねった道でも安定した姿勢で快適に運転ができます(写真4)。

写真4 オーテックドライブギアタイプe
写真4-1 定常時
写真4-2 アクセルON時
写真4-3 ブレーキ時

また、このように、アクセル操作の際に大きく肘を引く必要がないため、長時間走行の際の疲労が少ないだけでなく、走行状態からとっさにブレーキをかけたい時にも、アクセルからブレーキに移行する時間が短くなっていますので、ここでも安全性にも貢献しています。

5 デザインへのこだわり

デザイン自体も美しさと運転の楽しさを重視し、グリップには本物のアルミ素材と本革を採用しています。手のひらを預けるパームレストも滑らかな曲面として、しっくりと手に馴染む形状を採用しています。これらの操作部位の形状は、さまざまな使用シーンを想定しながら、手や指のかかり方などを検証しながら、決定しました。

また、足元の構造物も、角のないすっきりとしたデザインのカバーで覆っており、配線類もスマートにカバーするなど、純正手動運転装置の名に恥じない品質の作り込みを行っています。これにより、車両の室内デザインとのコーディネートはもちろん、お客様の持ち物としてのこだわりを感じさせる仕上がりとするよう、配慮しています。

以上のように、安全性や運転の楽しさ、快適性やデザインへの徹底したこだわりが評価され、オーテックドライブギアタイプeは、手動運転装置として初めて、2003年のグッドデザイン賞を受賞いたしました(図1)。

図1
図1

6 商品ラインナップ

ご紹介しましたタイプeは、フェアレディZからマーチまで、多くの日産車に純正改造車として装着車をラインナップしています(一部車種を除く)(写真5)。ご購入の際には、日産自動車の販売店にて、ドライブギアの装着可否をお問い合わせいただき、新車注文時に『ドライブギアタイプe装着車』をご発注ください。

写真5
写真5-1
写真5-2

装置の装着可否につきましては、カタログか、もしくは株式会社オーテックジャパンのホームページ(http://www.autech.co.jp/LV/)でもご覧いただけます。なお、ホームページ上からカタログのご請求も可能です。

手動運転装置の取り付け位置に関しては、標準車も含めた性能保証の観点から細かな位置の調整はお受けできませんが、ホームページ上で装着位置(寸法)をご案内しておりますので、必ずご確認ください。

7 装備およびオプション

ドライブギア装着車では、車種ごとに必要と思われる装備をあらかじめパック装着してあります。たとえば、パーキングブレーキ(サイドブレーキ)が足踏み式の車種では、手押し式にしたレバーを標準装備にしています。運転席側のアシストグリップなどは、ご要望に応じてオプション装着が可能です。

また、車いすの収納のための専用オプションもご用意しています。右図は、セレナのオプション装着例ですが、助手席スライドアップシート(電動式回転昇降シート)と、車いす収納ウィンチの組み合わせにより、車への乗り込みと車いすの収納を楽にするアイデアです。この他にもいくつかのオプションをご用意しています(図2)。

図2
図2-1
図2-2
図2-3

8 最後に

私たちのご提供する手動運転装置は、多くの先輩企業には比肩できるレベルではありませんが、今後もお客様のショッピングの幅を少しでも広げさせていただき、日産車がお客様の生活の良きパートナーとなれるよう、努力していく所存です。

(まざきさとし 株式会社オーテックジャパン販促企画部)

参考(お問い合わせ先)

日産ライフケアビークルおよびオーテックドライブギアに関するご相談は、お近くの販売店のほか、下記でもお受けしております。お気軽にお問い合わせください。

●株式会社オーテックジャパン
 フリーダイヤル 0120-116-527