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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年2月号

民間からの評価

グランドデザイン案について―雑感

荒井洋

今、机上に平成16年10月12日開催の社保審障害者部会で配布された「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」と称する文書がある。

精神障害者を対象とした社会復帰施設の全国組織としての立場からは、何はともあれ「障害保健福祉の統合化」が謳われたことについて、16年7月13日付の障害者部会中間まとめで、基本的な方向性として三障害共通の枠組みとすべきとされ、改めてその理念がデザイン案にもられたことに深い感慨を覚えた。これは、これまで精神障害者福祉が身体障害者福祉や知的障害者福祉と、制度政策上において区分されてきた歴史にようやく終止符が打たれ、文字通り同じ土俵の上で障害者を地域で支える方策や、身近な所で必要なサービスを受けられる地域づくり等、具体的な事項について議論ができる環境が整えられつつあることに他ならない。

さらに、障害者が就労を含めて、その人らしく自立して地域で暮らし、地域社会にも貢献できる仕組みづくりを進める視点にも強く賛同を表明する。次に打ち出された「制度の持続可能性の確保」は、どんなに制度政策が崇高な理念を掲げても、長期にわたり持続していかなければ意味が薄れる。今後の諸制度が、基本的に多くの国民のコンセンサスを得て、介護保険制度も視野に入れて、安定的な財源によって賄われる仕組みが整備されるよう望む。

そのうえで、グランドデザイン案に先立ち提出された「精神保健医療福祉の改革ビジョン」に示された、1.国民の精神保健福祉への理解の深化、2.精神医療の改革、3.精神障害者への相談支援、就労支援等の施設機能の強化やサービスの充実を通じ、市町村を主体とした地域で安心して暮らせる体制整備、などの枠組みを強化することを踏まえ、必要な基盤整備を図ることが重要であろう。一方で、グランドデザイン案に示された個別事項については、まだまだ具体的な数値や、事業概念の表現がわかりにくい面が見受けられる、との批判もある。個別事項については、障害者自立支援給付法(仮称)成立以降に審議予定であるようだが、三位一体改革の動きの中で、経済財政運営と構造改革に関する基本方針03、04年版とも平成18年までの改革期限を打ち出している状況では、審議に十分な時間をかけることは難しいであろう。しかし、いみじくも部会委員の一人が発言していた「三位一体改革を含め、いま審議されていることは革命と呼ぶのに等しい状況である」と。21世紀にふさわしい革命ならば、当事者、施政者、事業者が限られた時間の中でとことん議論し、あるべき姿を創出することが重要であろう。

(あらいひろし 全国精神障害者社会復帰施設協会事務局長)