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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年2月号

民間からの評価

グランドデザインについて

小澤温

2004年10月のグランドデザイン、さらに、同年12月末には、「障害者自立支援給付法」(案)が公表された。この間の厚生労働省の姿勢は、これまでの行政の常識から考えると異例とも言えるほど急である。グランドデザインは、あくまで、制度設計のグランド(基盤)の議論なので、このデザインをかなり練ってから、具体的な法律になっていくのが、常識であろう。この文章が印刷される頃にはさらに新たな展開が起きていると思われる。

グランドデザインの位置づけは、社会福祉基礎構造改革の理念や枠組みといった全体的な流れの中で考える必要がある。政策の標準的な流れからみると、基礎構造改革(理念)からグランドデザイン(体系的、具体的な提案)、そして、必要な法律改正、支援費制度の開始、という手順が本来のあり方だが、この間の経過は、社会福祉基礎構造改革(理念)からいきなり、支援費制度の開始といった感じが否定できない。その結果、支援費制度で現実に生じた問題の解決のためのグランドデザインの提案という状況がうかがえる。その場合、グランドデザインは、その実現に伴って、個々に生じた問題対応に終始し、次々と新たな矛盾、問題を生み出す危険性がある。その前提のうえで、以下、評価点と問題点をみていく。

グランドデザインの評価点は、支援費利用にあたっての市町村を中心とした相談・ケアマネジメントシステムの導入、障害の種別を超えた施設の体系化、居住生活支援の体系化が主なものとして挙げられる。もちろん、細かくみると、課題は多い。たとえば、相談支援やケアマネジメントの導入で、どのくらいアドボカシー機能が担保できるのか、施設サービスを日中活動の場や居住の場といった単純な区分にできるのか、居住支援サービスの再編によってグループホームなどの地域資源が増加するのか、といった点が挙げられる。

グランドデザインの最大の問題点は、応能負担から応益負担(定率負担)へという考えにある、利用者負担によるサービス利用抑制の論理がその根底にみられることである。このことに関しては、サービスの必要性に関しての判断基準の明確化による国民の合意こそ重要なのではないかと思われる。そのためには、支援費利用にあたっての相談支援、ケアマネジメントに基づくケアプラン作成といった地道な実践的な取り組みの基盤整備を早急に進める必要がある。

(おざわあつし 東洋大学社会学部教授)