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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年3月号

予算の概要を見て

居宅生活支援サービス等の推進

福岡寿

1 記念すべき義務的経費化元年

ノーマライゼーションの推進とはいいつつ、居宅の予算は、これまでずっと、裁量的経費の枠内で執行されてきた。とりわけ、支援費制度スタート以降、その伸びにひやひやしながらの2年間を経過した。

介護保険の財源活用も、グランドデザイン案も、一つの大目標は、居宅支援の予算を義務的経費に変えることだったと言える。

そうした意味では、平成17年度予算は、記念すべき、義務的経費化元年と言える。

とりわけ、平成14年度までのグループホームの設置は、国の箇所付けに基づく、いわば、お裾分けだったが、平成15年度の支援費制度スタート以降は、事業所の指定を満たし、都道府県・指定都市が事業所指定を行うことによって、事業展開が可能となった。そのため、グループホームの箇所数の増加を国はコントロールできなくなった。しかし、これまで、裁量的経費の悲しさで、県によっては、「指定を一時保留させてもらいます」という事態もまま、見られた。

こうした背景を考えると、居宅支援の義務的経費化の中に、地域生活援助事業(グループホーム)も含まれた意義は大きい。

2 伸びすぎてしまった居宅支援費対策として生まれた「タイムケア事業」

とりわけ、予想以上に伸びすぎてしまった、居宅介護(ホームヘルプ)をどうするか、これが、最大の課題のひとつであった。

国は、ケアマネジメントに基づく給付管理と包括型、そして、応益負担の導入によって、根本的な解決を図る方向だが、国としては想定外のホームヘルプの伸びが見られた。

養護学校などに通う障害児の放課後、土日、長期休業対策として、児童居宅介護がこれほどまでに伸びるとは想定していなかったようだ。

平成17年度新規事業として、8億5百万円の予算化をした「障害児タイムケア事業」には、「障害児の放課後、土日、長期休業には、あまりホームヘルプを使わないでください。その代わり、タイムケアをどうぞ」という意図が見て取れる。児童デイサービスとの関連で対象者を中高生に絞った点や、自己負担の面で、国の目的にドンピシャとはまる事業として機能するか、若干の疑問はある。しかし、筆者としては、レスパイトケアサービスが認識され始めて10年にして、ようやく、こうした事業が予算化されたことに、それがたとえ伸びすぎてしまったホームヘルプ対策の鬼っ子として事業化されたとしても意義を感じる。

3 ホームヘルプの介護報酬単価の横並びと「行動援護類型」の創設

ホームヘルプの介護報酬単価は、この2年間、猫の目のようにくるくると変わった、この単価に振り回された市町村、事業者も多いと思われる。

国は、一日も早く、ホームヘルプの報酬単価を高齢者介護保険の単価と横並びにしたいという意図から、身体介護と移動介護(身体介護有り)の長時間利用時での加算単価を見直した。一方で、高齢者介護保険で想定されているおおむね90分程度で収まるホームヘルプとは異なる中長時間の見守りを含めた支援として、身体障害分野での「日常生活支援(重度訪問介護)」とは別立てで、重度の知的障害者や精神障害者に対する支援の類型として「行動援護類型」が創設されたことは意義深い。

これは、介護保険で想定されている、直接的限定的なフィジカル支援にとどまらない、メンタルな支援も含めた中長時間の援護類型であるが、これまで、たとえば、行動障害のある自閉症の方などに中長時間ホームヘルプで係わるときに、「純粋な身体介護でも、純粋な移動介護でもないのにな、むしろ、パニックを抑えながら、かなりメンタルな見守りも含めた支援なのにな」という現場の実感を反映した類型の創設であると言える。

支援費制度施行時に、こうした現場とのコミュニケーションを密にして、タイムケア事業やホームヘルプが検討されていたら、もっと違っていたのにな、と悔やまれる気持ちにもなる。

4 最後に

紙面が尽きてしまったが、最後に、ケアマネジメントの制度化を控え、2年前に国が一般財源化のバーターとして用意した「障害者地域生活推進特別モデル事業」をどのようにアレンジしていくか、予算は減額されているとはいえ、それでも4億円に近い予算が、平成18年度以降にどう変身し、有効活用されていくか、興味深い。

(ふくおかひさし 北信圏域障害者生活支援センター)