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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年4月号

フォーラム2005

国連障害者の権利条約推進議員連盟の発足とこれからへの期待

金政玉

これまでの経過

現在、周知のようにニューヨークの国連本部においては、「障害者の権利条約」の策定作業が進められている中で、2月22日、「国連障害者の権利条約推進議員連盟」(以下、条約推進議連と略)の発会の集いが衆議院第二議員会館において行われた。以下、条約推進議員連盟の発会に至るこれまでの経過を簡単に振り返ってみたい。

2001年12月、国連総会において障害者の権利条約に関する特別委員会が設置されて以降、NGOも参加して国連加盟国の政府代表による審議が開始された。その後、第1回特別委員会(02年8月)、第2回特別委員会(03年6月、条約交渉のたたき台を作るための作業部会の設置を決定)、特別委員会作業部会(04年1月、「作業部会草案」作成)、第3回特別委員会(04年6月、草案の第一読)、第4回特別委員会(04年8月、草案の前半部分について公式協議による第二読と、第1条~第7条4までの非公式協議)、第5回特別委員会(05年1月、第7条5~第15条冒頭までについて非公式協議)が行われ、合意形成のための議論が続いている。

JDFの取り組み

昨年10月に正式に設立したJDF(日本障害フォーラム)の「国連障害者の権利条約推進に関する専門委員会」(以下、条約委員会と略)では、これまで障害者の権利条約策定の動向を踏まえた国内における戦略的方針を確定するために、主に次の取り組みを進めてきた。

第一に各特別委員会で出された結果についての評価と分析を踏まえ、草案の重要な論点に対する意見書等の作成と政府や政党への提出、第二に各特別委員会の前後にわたり外務省を窓口に政府・各省庁との協議の継続、第三に各政党・議員との懇談を通じた特別委員会への参加の呼びかけである。とくに第4回特別委員会(04年8月)では、日本からはJDF関係者を中心とする派遣団と共に、国会議員が5名(以下、敬称略―八代英太〔自民党衆議院議員〕、原口一博〔民主党衆議院議員〕、石毛えい子〔民主党衆議院議員〕、今野東〔民主党衆議院議員〕、岡崎トミ子〔民主党参議院議員〕)が参加したことは、この間のJDFが進めてきた一連の取り組みの成果であり、特別委員会の会議場でも多くの注目を集めた。特に八代英太衆議院議員が当事者議員として特別委員会の会議中に記念スピーチを行い大きな拍手を受けたことは、日本の政府・議員・NGOが緊密に連携して条約策定に向けて積極的に貢献していこうとする姿勢への評価の表明であったともいえる。

条約推進議連の発会の集い

こうして、第4回特別委員会に日本から政府代表団・NGO(日本障害フォーラム〔JDF〕準備会)と共に国会議員5名が参加したことを契機に、早い時期に超党派の条約推進議員連盟をつくることが了解されていた。

条約推進議連は、発会日時点で123名の議員が入会している。その内訳は、衆議院議員79名(自民50、民主21、公明4、共産2、社民2)、参議院議員44名(自民26、民主10、公明3、共産2、無所属3)。役員人事(敬称略)は、会長(中山太郎元外務大臣)、副会長(河村建夫〔自民〕、原口一博〔民主〕、福島豊〔公明〕、小池晃〔共産〕、阿部知子〔社民〕、黒岩宇洋〔無所属〕)、事務局長(八代英太〔自民〕)、事務局長代行(石毛えい子〔民主〕)。当日は、多くの議員と秘書、関係省庁(外務省、内閣府(現 総理府本府)、厚生労働省、文部科学省、法務省、国土交通省、総務省)、JDFの役員及びJDF条約委員会委員、報道関係者等、約100人が集まり盛会となった。

議員からも積極的な発言が行われ、条約と国内法との関連をどのように検討していくのか、特に差別禁止法との関係、教育における学校を選ぶ権利と統合教育との関係、合理的配慮や教育・雇用等の問題に関心が集まっていた。

連携の課題

今後の条約推進議連との連携づくりにおいては、議連における国連特別委員会への関心づくりとともに、条約に基づく国内法制の見直しに向けて積極的に取り組みを進めていくことができるよう、関連テーマを設定したセミナーや学習会、ヒアリング等の機会を積極的に働きかけていくことが重要になっている。

こうした取り組みを行っていくために条約委員会では、本年1月の第5回国連特別委員会報告書では、第7条5から第15条冒頭にかけての議論をまとめた「コーディネーターによる特別委員会への報告」が、付属書として添付されており、この「コーディネーター報告」が特別委員会における最新の議論を反映したテキストとなっていることから、これを翻訳し、その最新の各条文の条項や脚注が国内の障害者法制とどのように関連し、どういう論点があるのかを明らかにし、コメント等を付記した討議資料の作成を行うこと。同様に今後の第6回特別委員会(本年8月)および第7回特別委員会において審議が予想される条文については、すでに第3回および第4回特別委員会で審議された論点などを整理し、国内障害者法制との関連性を明らかにした討議資料を作成する準備を行っていくことになっている。

条約推進議連との連携の可能性に期待して、今後の取り組みを進めていきたい。

(きむじょんおく DPI日本会議事務局次長、JDF国連障害者の権利条約推進に関する専門委員会)