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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年2月号

障害者自立支援法をめぐって

施行直前に思うこと、懸念すること、望むこと
利用者として応益負担について思うこと

林優子

10月31日、障害者自立支援法が成立しました。全国で慎重審議を!の声が巻き起こっている中での強行採決はとても残念です。この法の最大の問題は、毎月発生する応益(定率)負担です。一般就職が難しく、作業所などに通いながら、地域で暮らしている障害者は少なくなく、私もその一人です。

作業所の月々の工賃は平均して1万円に満たない所が多く、ここからの1割として、1千円程度なら負担できますが、この法律は、生活費である年金や預金、同一世帯の人は家族の収入を含めて、月々数万円の負担になります。

そもそも、工賃を得て働く場、作業所を通して少しでも社会に参加していこうとする所から、利用料を徴収するという考え方に疑問があります。作業所の工賃アップをといいますが、現状から見ても厳しいし、もっと障害者の生活実態を知ってほしいし、一般就職はそんなに簡単ではないのです。作業所はそんな障害者の受け皿です。

私たちは障害があるために、人の支えが必要です。支援があってようやく障害によるマイナス面がゼロになり、当たり前の暮らしができるのです。

国は何かを決めるとき、いつも基準を設けますが、収入が最も低い人に合わせてほしいです。

「福祉サービスは買うもの」という考えから、国の社会保障予算が削減され続けています。最近では「障害者だから何でも無料(ただ)ではなく、障害者も社会の一員として支払うべき…」といった意見を耳にしますが、払いたくないわけではなく、払えないのです。衣服、日用品、通院や交通費などの費用も必要です。また、入所施設にいる障害者の手元に残る年金も僅かです。この状況は、朝日茂さんの『人間裁判』を思い起こさせるほどにひどいです。自立支援とは名ばかりで、私たちは在宅を余儀なくされ、40年前の暮らしに逆戻りしてしまうのではないかという不安があります。

先日、市役所の方と懇談する機会があり、「みんなで支える制度」という説明がありましたが、そのための所得保障・利用する際の認定基準、有期限のことなど懸念材料が多いことは否めません。施設運営の面でも、補助金の大幅削減が囁かれ、このことは障害者本人だけではなく、そこで働く職員の生活をも不安にさせ、利用者と職員が共倒れになってしまうのではと危惧しています。

運動の中で、1975年の国連決議『障害者の権利宣言』を思い出しました。13の条文からなるこの権利宣言には、生きるうえでの基礎が謳われています。このことを考えたとき、制度利用の自己負担(応益負担)の撤回を求めていくのは、決してわがままではないと確信しました。自立支援法を少しでも良いものに変えていくため、諦めずにみんなで運動を続けていきたいです。

最後に今できることの一つに署名があります。皆様の一筆一筆が力になります。きょうされん第29次国会請願署名にぜひ、ご協力願います。

(はやしゆうこ あかしあ労働福祉センター第1作業所)