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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年2月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●ロープの利用、他●

提案:勝矢光信 イラスト:はんだみちこ

勝矢光信(かつやみつのぶ)さん

昭和22年生まれ。進行性筋萎縮症。在宅生活。障害者の旅行や散歩を研究。著書は、『車いすといっしょに旅に出よう!』(日本経済新聞)


ロープの利用

私の電動車いすには、2本のロープが付いています。これが、意外や意外、とても役立っています。今までに便利と感じたのは、砂浜を引っ張ってもらう時、車いす登山の時、船の昇降をする時です。階段を持ち上げてもらう場合も、4人で持ち上げるよりも多くの人の協力があったほうがよいのです。2本のロープを前に立つ人が引っ張ることで、力が分散されます。また、介助者がかがまなくても済むので、腰痛防止になります。特に、段のある「幅の狭い入口」を越えるとき、横からの介助が不可能なので、前方の人がロープを引くことで、介助が楽になります。

ベッドへの移動・入浴介助・トイレ介助などでも、介助者が腰を痛めないよう、ズボンのベルトに「ロープ」をつけて、体全体で引っ張ったり、力の入れ方を工夫することができます。さらに、洗濯物を干すのに使ったり、変幻自在。ロープは「人類最大の発明品」と思います。


料理の工夫

料理は、とてもおもしろい。金は無いけれど、時間はたっぷりある「時間持ち」には、安い食材で、いかにおいしい食事を作れるか。これが、毎日の楽しみで、料理の本を見ては、いろいろ試しています。成功もあり、失敗もありますが、生きがいになっています。

手の力が無い場合にお勧めなのが、食材をすべて電子レンジに通すことです。包丁で切る力が無いと、料理をあきらめてしまう人が多いのですが、たとえば、じゃがいも・にんじん・ごぼう・大根などは、1分ほど電子レンジで熱を加えると、軟らかくなって、包丁を入れやすくなります。その後に、みじん切りにして、カレールーを乗せ、再び電子レンジで熱を加えます。すると、カレーライスができあがります。料理を作ってもらうばかりの人生から、友人のために作ってあげる人生に転換し、生きる喜びが増しました。

余談ですが、歯が弱い場合も、果物をすべて電子レンジに通すことで、甘く熟した状態になり、きわめて食べやすくなります。りんご・みかん・なしも、軟らかな甘い状態になります。特に、バナナは、おいしくなります。「そんなバナナ」(笑)と言わないで、一度お試しあれ!


寒さに負けず

服を着ると疲れるし、寝るときも、布団をかけすぎると重くて、胸が苦しくなります。冬は、障害者にとって厳しいものがあります。そこで、クール宅急便などに使われる「保冷剤」をためておき、寒さ対策に利用しています。1分ほど電子レンジで熱を加えると、「簡易湯たんぽ」になります。「保冷剤」の中には、ゲル状の物が入っていて、それが熱を蓄えます。その温まった「保冷剤」を、寝るときに体の冷える部分に置くのです。それだけで、朝までぐっすり。何回でも使えます。ただし、長時間電子レンジで熱を加えると、袋が破けて、ゲル状の物が飛び出しますので、ご注意ください。私は、何回か失敗して、適切な熱を加える時間を会得しました。

もう一つは、ホッカイロを何回も使う方法です。カイロは鉄が酸化鉄になる「酸化現象」なので、帰宅して使わないときは、空気を遮断するために、ビニール袋にしまっておくのです。そうすると、5回ほど使い続けられます。寒さにめげないで、外出しましょう!