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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年5月号

重点連載 障害者自立支援法と自治体施策

横浜市の取り組みについて
~利用者負担助成事業等~

横浜市

1 障害者自立支援法の施行について

障害者自立支援法(以下「支援法」という)は平成17年10月31日に閣議決定され、平成18年4月1日から施行されました。平成15年4月に障害者の“自己選択”“自己決定”を推進するという理念のもと、支援費制度がスタートしましたが、わずか3年でまたもや大きな変革を行うこととなりました。

支援法では、1.利用者負担を原則1割(定率負担)に変更する、2.統一した基準による障害程度区分を導入する、3.新たなサービス体系へと移行する、という三つの大きな特色があります。市町村としては、法律の施行までの期間が短いことから情報提供を早く確実に行うとともに、利用者負担の増によってサービス利用が制限されることのないようにサービス提供体制の拡充を図ることが重要であると考えています。

2 課題への取り組み

1.短期間での施行に向けて

横浜市では、施行に向けてさまざまな方法で情報提供を実施しました。支援費制度の際は、大規模な説明会等で対応しましたが、支援法では短期間なため、障害者団体、養護学校や親の会など小規模での説明会での制度周知に努めました。

また、利用者負担の決定等を行う行政窓口の職員(区役所等)にも複数回研修を実施し、利用者への制度説明と周知を適切に行えるよう準備しました。

昨年の12月に、現在サービスを利用している方全員に申請勧奨を行い、適切な情報を届け、申請し忘れることがないよう働きかけました。今後も新たな支給決定や、サービス体系の見直しが予定されていることから、早めの情報提供を行うことが重要と考えています。

2.利用者負担額の増大

利用者負担額について、支援費制度では市民税非課税世帯に属する利用者は自己負担がありませんでしたが、支援法ではみんなで負担し支えあう仕組みとして15,000円、または24,600円の負担上限額が発生します。そこで、横浜市では大都市に特有な事情に対応するため、現在と同じようにサービスを安心して使い、自立した地域生活を送ることができるよう、在宅サービス利用者で市民税非課税世帯の方は、利用者負担額が0円になる助成事業を実施することとしました。なお、この制度は3年間をめどに実施します。

3.サービス体制の拡充

横浜市では、運営委員会が運営する事業が重要な社会資源として障害者支援の一翼となっています。支援法によるサービスの体系が変動することになりますが、現在の運営委員会が支援法事業の主体者へ円滑に移行することを支援する制度を予算化しました。

表 横浜市の利用者負担助成

区分 負担上限額 助成後の負担上限額
一般 37,200円 37,200円
低所得2 24,600円 0円
低所得1 15,000円
生活保護 0円 0円

3 今後の横浜市の障害者福祉施策

措置から支援費へ、そして支援法へと、ここ数年で障害者を取り巻く環境は大きく変革しましたが、地域生活を支える仕組みや、安定して地域で暮らしていくことは変わるものではありません。

横浜市では平成15年に「横浜市障害者プラン」を策定しました。プランの中で、障害者施策の基本的な考え方として、市民一人ひとりがお互いの人権を尊重しあいながら、障害のある人もない人も同じように生活することができるよう、市民、企業、行政など社会全体による取り組みを進め、障害者が自らの意思により地域で自立した生活を送れる社会づくりを推進することを掲げました。

具体的な施策として、「普及啓発」、「相談支援体制」、「地域生活移行」、「医療環境・医療体制」、「障害児の生活・学習環境」、「障害者の就労支援」の6つの重点施策を定めました。

普及・啓発事業としては、障害者団体や支援者の方々とともに「セイフティーネットプロジェクト横浜」を組織し、第一弾の活動として知的障害者の理解を進めるために、コミュニケーションボードとチラシを作成し、市内のコンビニエンスストア等店舗約1,200か所に配布しました。

相談支援体制では、行政機関のみではなく、民間機関に相談を専門に行う職員を配置した拠点施設を各区に設置するとともに、固有の障害に関する専門性を有する相談支援機関も整備しています。また、障害者を支援する人々が連携を図るために、「地域生活支援会議」という連絡調整会議を設け、支援者同士が顔の見える関係を作り、個別の課題解決ができる体制の整備に取り組んでいます。

その他にもさまざまな事業・施策に取り組んでまいりますが、障害者自立支援法を円滑に実施するためにも地域での生活環境づくりや支援体制について、今まで以上に地域で安心した生活を送ることができるようにすることが、市町村の責務であると考えています。