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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年12月号

1000字提言

婚カツしようよ!!

小山内美智子

こんにちは。私は札幌に住む56歳のただのおばさんです。24歳の息子がいます。心は25歳です。アンバランスな人間として生きています。

脳性マヒという障がいを抱えながら56年間生きていると、福祉の流れが少しずつ大きく変わっていっていることを目にしてきました。両手が使えない私としては思春期に入り将来、何をして暮らそうかと考えました。頭がかゆくてもかけない。トイレに行きたくてもズボンとパンツを下ろせない。お尻を拭くことができない。人間として生きていけるかどうかと不安に思いました。

従兄弟たちは、どんどん結婚をして家庭を築いていました。結婚式には私だけ招待状が来ませんでした。お金がないから遠慮しているのだと思っていましたが、その謎が解けたときショックを隠しきれませんでした。脳性マヒという障がいは遺伝しないことが分かっていましたが、私の若き日には遺伝すると思われていたようです。他の仲間たちも親の葬式でさえ部屋に鍵をかけられて行けなかったことや、交通事故で脊髄損傷になった人が結婚式に呼ばれなかったことなどを耳にし、呆(あき)れ果てました。

結婚式には醜いアヒルは出席できないのでしょうか?今は、結婚式も身内だけという形式が増えてきて気楽になりました。しかし、親戚の結婚式には出なかったけれどボランティアに来ていた人の結婚式には飽きるほど出席して、スピーチを頼まれました。私は、話が上手いのでスピーチをすると会場中がハンカチを持ち、涙するのです。一人で食事ができないのでボランティアの分も払い、プレゼントも買い、厳しい出費でした。スピーチ代を少しでも払ってほしいと思ったこともありました。しかし花嫁さんは、1週間に一度決まった曜日と時間に来て、洗面・着替え・お風呂・ストレッチ体操・トイレ・読書など、すべてボランティアでしてくださり、夜遅く帰っていったのです。それを考えるとありがたくて、結婚式に呼んでくれたことに感謝で一杯でした。

今はホームヘルパー制度となりビジネスでケアを行うので、結婚式にもあまり呼ばれなくなったことが少し寂しいです。やはり一生に一度くらいは幸せな2人を皆で祝福し、飲んで騒ぎたいものですね。不景気風が吹き荒れ、その時間さえ持てなくなったことが寂しいです。

最近、他人(ひと)のことを言ってはいられません。息子の時にはどうしようかと悩んでいます。美しい彼女を紹介され、結婚してほしいのです。結婚式はどうしたらよいのか、あまりにも呼ぶ方々が多くて困っています。そんなうれしい日が早く来ることを心から望んでいます。願わくば、私も大恋愛をして、心と心の華やかな結婚式をしたいと夢見ています。

(おさないみちこ (社福)アンビシャス施設長)