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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2009年12月号

1000字提言

プロの力を借りて、作業所製品のレベルアップを!

栗原久

今年50歳になったが、30年間を障害者問題に関わらせてもらっている。そのうち、20年間は今の職場で仕事をしており、最近は現場から遠ざかってしまっていた。しかし、今、久々に未知の領域に携わり、刺激的な日々を送っている。

所属する障害者事業団は、一般企業への就労支援と、一方で職業的重度障害者の直接雇用も行うという、割と珍しい組織形態だ。しかし、これまで授産施設や作業所における福祉的就労の場とはあまり接点が無かった。少なくともこの10月までは……。

国の失業者対策で、緊急雇用創出基金事業というのがある。新規事業を起こして失業中の方を市役所などが雇用した場合、国(都道府県)から100%補助が出る仕組みだ。この制度を活用して、箕面市が事業団に事業を委託した。障害者授産製品販売促進等委託事業という長い名前の事業だが、要は作業所等の製品の販路拡大・収益増大が狙いだ。

この仕事を受けることになって、市内の全作業所等に御用聞きに回った。「どんなスタッフを事業団が雇ったら、あなたの所にメリットがありますか?」と。すると、次の3職種のプロを事業団で雇用して、課題解決に協力してほしいとの声が上がった。

1.パン・クッキー・焼菓子等製造

2.店舗レイアウト・POP広告等

3.HP(ホームページ)等IT関係や会計・経理

「今作っているパンやクッキーをもっとおいしいものにしたい」「PRが下手なので、プロの技を教えてほしい」「ITや会計の知識が乏しいために、困ったことがたくさんある」そんな切実な声に背中を押され、ハローワークに求人。そして集まってくれた3人のメンバーと今、作業所等の製品のレベルアップや、新商品の開発に取り組んでいる。

ここ箕面市は、滝ともみじが有名だが、最近は「ゆず」の産地としても売り出している。そうした地元の特産品とタイアップした製品の開発も楽しい取り組みだ。

実は、3人のメンバーは、半年雇用という短期間契約なので、正直言ってスピード感が違う。自分自身、仕事はそう遅くはない方と思っていたが、とんでもない。毎日3個4個と新企画が打ち出され、議論し、選択し、作業所や企業に提案していっている。

福祉領域の人間は自分もそうだが、商売が下手な人が多いと思う。こんな感じでプロの力を借りて、製品のレベルアップ、販路拡大をする方法もなかなかよいのではないだろうか?すでに多くのところで取り組んでいることだったかもしれないが、少なくとも自分にとっては、とても新鮮な感覚であった。

(くりはらひさし (財)箕面市障害者事業団常務理事兼事務局長)