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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2010年10月号

知り隊おしえ隊

環境に・人に・暮らしにやさしく…高知安芸での生活づくり

近藤秀夫

はじめに

「環境にやさしい」という表現や「エコ」という言葉は、いまや「物売り」の代名詞のように使われています。この言葉を「生活」に置き換えると「安全」や「快適」というのではないか、と表現力の乏しい私は思っています。

私たち二人は、東京の町田市から高知県の安芸市に移り住んで3度目の夏を迎えました。

高知では夏を表現する言葉に『こげる』を使います。人間が焦げる?しかも通常使われている言葉だから、最初は驚いた「何と大げさな…」と。しかし、3度目の夏ともなれば、この言葉が「誇張」ではないと納得させられます。ジリジリと肌を「こがす」熱さなのです。そこで、これまで南国の「焦げ対策」として、私たち二人が手掛けてきた「生活づくり」を紹介します。

1 環境に人にやさしく…

1.冬は南国の強い太陽を利用して「ソーラーハウス」

わが家には最初からエアコンを設置する計画はなく、むしろエアコンを使わない「生活」がテーマのようになっています。

冬の暖房(給湯を含む)は、太陽熱ソーラーで対応、そのための集熱パネルを東側の屋根の3分の1に乗せました。

このソーラーハウスは、外部と接しているガラス部分はすべて二重ガラスを使用。カーテンも遮光性の基準を満たさねば「補助金対象外」。

木製の玄関ドアも「日本製は断熱性」で基準外とかで、北欧の物を使用等、思ってもなかった出費でした。しかし、大いに効果あり。昨年の、太陽熱+灯油代は月平均で3000円代で済んだ…と妻・恵子の微笑みしきり。

今年は、東・南・西側のガラス戸に防災を兼ねたシール(飛散・UV・防虫・遮熱)を貼りました。

※夏の熱気、冬の寒気を屋内に入れない構造のソーラーハウス(屋内の温度を一定に制御するシステム)を採用しています。

2.南国の厳しい暑さの夏対策

特に強い土佐の西日には、緑の電動式オーニング・洋風日差し(4メートル×2メートル)を西側のベランダに設置、先端にガーデンミスト(庭園用噴霧器)を付けて、特に暑い日の対策としています。

南側の掃き出し口には、庭の一部にタイルを使用。冬の暖かさは快適、しかし夏の焼けタイルは熱い…そこには、遮光率75%という農業用の遮光シート(4メートル×2メートル)を屋根の軒先から吊るして対応しています(タイルには水撒きが特に効果的です)。

3.緑につつまれて…

南国は果物が豊富…実は、この果物の味を思い出して、故郷の安芸に帰って住みたいと…妻・恵子にせがまれての土佐帰り…。

現在の庭には、柿・レモン・グミ・ヤマモモ・ウメ・キンカン・極大ブルーベリー等の果樹や、それ以外にも、ヤブツバキ・クチナシ・カラタネオガタマ・ウグイスカグラ・サルスベリ・ヤマコウバシ・ナツハゼ・トサミズキ・アカシデ・モクレン・キンモクセイ等15種類を超える樹木が…実は、花は手入れが大変だが、樹木だと「楽」的思考から…。しかも、庭師(甥の友)任せ…で楽しんでいます。

その中でも、玄関に至るスロープの途中の「ノーゼンカズラ」のアーチは、ホットさせてくれる「緑の門柱」となっています。

4.頼もしい太陽光発電

家づくりの最初から「ソーラー」式を組み込んだ設計とあって、東側の屋根は特に大きく設計しました。その3分の1をソーラーパネルに使用したが、残りの3分の2に第二弾として、今年、太陽光発電のパネルを敷き詰めました。これが、わが家最後の「エコ投資」です。

現在の太陽光発電は、昼の電力の使用分は発電中の電気から使うシステムで、それ以上の余剰分の発電部分を電力会社が買い上げるシステムとなっています。遅ればせながら、安芸市でも今年の6月から太陽光発電の助成制度が始まり(わが家は、すでに施工中で…残念)、この団地の近所にも最近2軒、3軒と「太陽光発電」を設置する光景が見られます。

※「気の持ち方」とは不思議な物で、晴天の日は「太陽光発電」を頼もしく感じ、雨の日は庭の「緑たち」の「恵みの雨」を感じる生活です。

2 生活に「安全」「快適」を

1.洗濯用洗剤も「エコ」

わが家の「洗濯用洗剤」は、水と重曹のみで作る「特製」です。水道水1.4リットルに計量スプーン2杯の重曹を入れて、完全に重曹が溶けて無くなるまでかき回わした水を、「AQUA PLANET」という機器「高さ約30センチ×12センチ角」の「電解洗浄水生成器」に入れて約2時間半位かけて「電解」された水を洗剤として使用しています。

つまり「電解・重炭酸水」です。無臭・無泡・無害の洗剤として、7~8年前から使用しています。

2.家で「転落」その時に…

私は車いすの使用歴59年(脊髄損傷・頸椎症もあり)…当年75歳。

妻と二人の生活歴39年、他に猫がいる…。妻も幼少時からの障害(カリエス)が…つまり、私の車いすからの「転落時」対策は不可欠なものなのです。

私は、福祉制度「日常生活用具」支給の「電動ベッド」を使用し、1日を「簡易電動車いす」を駆使して生活をしています。しかも今では、右手の握力も弱くなり、移乗時の「転落危険大」です。

そこで妻・恵子の妙案「電動ベッド」の背板に和式の「座いす」を取り付けてもらいました。

ベッドを最低の位置で、座いすが床に付いた状態に設置します。転落した床から、座いすに乗り移り、電動ベッドを「最上位」まで上げると約35センチ身体が浮きます。これで車いすの座布の高さ(私の場合42センチ)には楽に移れます。

※要注意!ベッドの背板と座いすの背の取り付け方法・座いすから車いすへの移乗には、高齢者や障害者の場合【かなりの熟練を要します】。

3.便利な「間取り」

寝室の私のベッド横には引き戸1枚を隔てて「脱衣室」があり、その先が「浴室」。脱衣室の左にはトイレと続きます。この間取りはベッドから浴室へ、またはトイレへの移動を車いすに乗り換えることなく、直線で結ぶことです。

床からの「高さ」は「車いすの座高」を基準にし、便器の便座・脱衣室の床・浴室の洗い場は高さを同じにすると「横移動」がスムーズになりました。

1階間取り図
1階間取り図拡大図・テキスト

4.宙に浮かんだ家…

ここ数年、わが家に恒例となっている「ホームステイ」。

ミスタードーナツが1981年の国際障害者年を契機に始めた「広げよう愛の輪運動基金」は、障害者リーダー育成海外研修派遣事業に加え、アジア太平洋障害者リーダー育成事業があります。アジアには海のない国もあり、そんな国からの障害者のホームステイを引き受けています。変化に富んだ高知の太平洋沿岸巡りに日々を費やしますが、皆さん「この広大な「海」の感動を土産にしたい」と口々に言われます。

彼らの宿となるわが家は、1・2階も含め家全体がワンルームといった感じです。外観は、緑の中の家です。入り口脇には「空海坊や」が微笑み…幼少時の「空海」地蔵・高さ30センチで合掌スタイル…。緩やかなスロープは玄関へとつながり、玄関を入った居間の西の開口部分からは、NHKの龍馬伝でも有名になった岩崎弥太郎ゆかりの妙見山が連なります。1・2階をつなぐリフトは、ギャラリーとして昇降時間も忘れさせる「異空間」と人は言います。

2階には2つのベッドルームと洗面所があり、1つのベッドルームからは1階に声も届き、顔を出せば1階と対話できる吹き抜けの空間です。

先日、東京から来られた方の「お礼のハガキ」に“初めて体験した宙に浮いたような家”とありました。西のベランダから見るこの家は、すこし高台になり、緑の中に浮かんだ家と感じられたようです。

(こんどうひでお)