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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年3月号

当事者からの提案

災害弱者対策を前提とした防災計画や避難所運営マニュアル作り

倉野直紀

私は生まれてすぐに失聴し、補聴器を付けても人の声や物音を聞き取れません。聞こえないということは、災害時に生死を分けることにも直結します。東日本大震災では、障害者の死亡率が健常者の2倍に上り、そして障害種別(視覚・聴覚・肢体・知的・精神)で見ると、聴覚障害者の死亡率が2番目に高かったのです。避難所生活や生活再建の場でコミュニケーションができないために、必要な支援が受けられなかったり、聞こえる人の中で孤立してしまうケースが見られました。

悲劇を繰り返さないためにも、防災計画作りや避難所運営マニュアルは災害弱者対策を前提としなければなりません。たとえば、避難警報は主に防災無線等、音声だけでなく、メールや光等で伝えれば、聞こえる人でも音声が伝わらなかったり聞き取りにくかった時でも、視覚的に受け取ることができます。情報をあらゆる方法で受け取れることが、避難行動へすぐ移ることにつながるのです。また、私たち聴覚障害者は外見は聞こえる人と変わらないため、障害があることが周囲に気づかれにくいのですが、たとえば、自治体として支援が必要、また支援してほしいことを表す「要支援者」のシンボルマークやカラーを制定し、市民に周知を図れば、聴覚障害者だけではなく、他に支援が必要な人にとっても役に立つのではないでしょうか。

避難所でも、避難所受付名簿に、名前や住所だけではなく「障害名」「支援が必要かどうかの意思表示」「必要な支援内容」も記載すれば、支援が必要な人やどんな支援が必要なのかを把握することができます。また、支援してほしいことや支援できることを申し出られるよう「支援受付窓口」を設ける、支援物資や飲食物配布等、音声情報は必ず視覚化し、掲示板を活用する、夜でも光るコミュニケーションボードの常備等を避難所運営マニュアルに定めておいてほしいと思います。

災害弱者対策を前提とすることで、防災計画や避難所運営マニュアルは障害のある人ない人すべてに対応できるものとなります。しかし、一番大切なことは、あらゆる情報を手話や字幕等で発信し、また地域も防災訓練等に聴覚障害者が参加できるよう、手話通訳や要約筆記の配置等、あらゆる情報を視覚的に受け取れる環境を構築していくことです。それが、聴覚障害者が地域や社会とのつながりを持ちそして、そのつながりが災害時に活きるのです。

(くらのなおき 聴覚障害者災害救援中央本部委員、全日本ろうあ連盟理事)