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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年3月号

当事者からの提案

オストメイトの立場から

川村正司

オストメイトをご存知ですか。病気や事故などにより、腹部に排泄のための開口部(ストーマ)を造設した人工肛門、人工膀胱の保有者のことで、日本には20万人を超えるオストメイトがおります。常にパウチという便や尿を溜める袋をストーマに装着し排便・排尿を行なっています。オストメイトにとっては、パウチで代表されるストーマ装具が、日常生活を営む上で不可欠のものであります。

5年前の東日本大震災(津波)による甚大な災害時では、ストーマ装具の持ち出しが困難であったこと、避難所での排泄場所がなかったこと。また、ストーマ装具の交換(脱衣して行う)が可能なプライベート空間がなく苦労を余儀なくされました。被災の三陸海岸筋は、明治以降も度重なる津波被害の経験から、オストミー協会岩手県支部は、県の障害福祉課と災害対策に取り組んできましたが、津波を想定した訓練を行なっていませんでした。

命の綱とも云えるストーマ装具は、日常生活用品の扱いで緊急支援物資に認定されず、被災地への搬入は困難を極めました。救急医療、食糧補給が優先され、オストメイトに対する措置は遅れ気味でしたが、ストーマ用品協会と地元の販売店の強力な支援を得て、ストーマ装具を必要箇所に届けることができました。

一方、派遣看護師が、好意的に若干のストーマ用品を準備してくれた所もありました。そして、地元の新聞、テレビ等を通して、毎日、ストーマ用品の補給場所を知らせてもらいました。

今後、日本オストミー協会は、大災害を想定して、ストーマ装具の緊急支援物資扱い(医療薬品・機器同等の扱い)を要求し、公的機関によるストーマ装具の備蓄、避難所へのオストメイト用トイレの準備等についての配慮を要望実現するべく尽力をしなければならないと考えております。言うまでもなく、オストメイトへの自助の啓発は大切です。

終わりに、岩手県在住、オストメイト被災者の声をお伝えします。

「直腸の手術を受け、人工肛門からの排せつ物をためるパウチを左下腹部に付けるようになった。津波で自宅が流されたため、パウチの替えがないまま避難所生活。4日目に県立病院から2袋もらった。長持ちさせるため、食事は配給の半分としたら体力が低下。10日目ストーマ周辺がただれ手持ちの最後の1枚交換、その日の夕刻、仲間から装具提供があり、有難さに号泣」

(かわむらしょうじ 公益社団法人日本オストミー協会副会長(岩手県支部長))