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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年4月号

1000字提言

日本型インクルーシブ教育の構築を

長位鈴子

これまでの障害の捉え方は、障害は個人の体のハンディにあるとし、機能的能力を治すこと(医学モデル)であった。しかし昨今、障害者政策の変革の中で、社会の中に多くのバリアがあることで、障害をもつ人たちが地域に参加できないことが障害である(社会モデル)という考え方が示されるようになったことは大きな変化である。

障害の有無にかかわらずお互いを認め合い、思いやりの心を持ち、互いに切磋琢磨しながら勉学をする権利がある。

日本でもすでにインクルーシブ教育に取り組んでいる学校がある。障害のある子ども一人ひとりの能力を発達させ参加できるような教材を用意している。市販のものでは不十分で手作りをしなければならない児童もいるだろう。しかし、学校現場だけでは限界がある。そのような時、地域にはいろいろな知識をもっている人たちがいることに注目したい。教育の現場から一歩社会に出て、地域の人たちからいろいろなアイデアをもらう。たとえば、教員を退職した人の知識や経験は非常に力になると思う。そのためには学校と地域の人たちをコーディネートする人が必要だ。

特別支援学校決定通知は「本人・保護者の意見を最大限尊重し、教育的ニーズと必要な支援について合意形成を行うこと」を原則とし、市町村教育委員会が最終決定し、県教育委員会は決定通知を保護者へ通知している。

本来は、個別支援計画を作成し、活用しつつ、本人や保護者のニーズを聞き取って反映させることになっているが、市町村は予算がないことや受け入れる学校にバリアがあることなどを理由に、保護者に「県教育委員会に意見を求める」と言いつつ、保護者の意向とは大きく異なる特別支援学校決定通知が届くというようなことが、今年も沖縄県で起こっている。私たちが関わったケースでは、県と交渉した結果、地域の小学校に通えることになった。

私たちは、障害の有無にかかわらず地域でいきいきと生き抜くことを望んでいる。決して贅沢(ぜいたく)な望みではないと、長年にわたって障害者の地域生活運動をしてきたからこそ、現在、自分らしく生きることができている。

今、私たちが忘れてはならないことは、障害の有無によって学校を本人や保護者の意向が反映されずに決定されることに対して、障害者運動の中でも大きな問題として行動していかなければならないと強く感じ実践している。


【プロフィール】

ながいれいこ。1963年2月11日生まれ。NPO法人沖縄県自立生活センター・イルカ理事長。障害者が地域生活を満喫するには、幼少期からの関わりが必要と考える。その中から本音で話し合える場所があること、お互いの違いを認め合うことを願い障害者運動を続けてきた。