音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年7月号

当事者からの声

高齢障害当事者の電話相談にみる現状と課題

下堂薗保

私が対応している電話相談では、就労から生活相談までさまざまだが、異口同音に介護保険サービスに関する切実な苦情や怒りが多い。以下、その現状だ。

1.電話先では、市からサービス打ち切り通知が、65歳の誕生日前に突然送り届けられた。それまで受けていた自立支援給付が止められた。時間数が減らされ「死の危険に陥った」「入浴介助サービスが受けられなくなった」「家事援助が減らされた」「逆に負担額がグンと増えた」等と、個人の生活環境の急変への不安感、深刻な日常生活の悪化が内容だ。

ある男性は重度の膀胱炎者、手慣れた人から注意深く黴菌(ばいきん)侵入防止の処置をしてもらう必要があるが、時間を減らされてしまい、十分な処置をしてもらえなくなった。また、重度の肺病疾病者は、「病院が遠い上、2週に1回の受診を求められているが、通院時間が確保できない」「なぜ、高齢病弱障害者を苦しめる仕組みを作ったのか?信じられない」等々、生活苦から発する苦言ばかりだ。

2.市町村が「介護保険優先原則(障害者総合支援法第7条)」を機械的に適用しているため、65歳になった途端、サービスの枠組が「介護保険制度」に切り替えられる仕組みが根源にある。

3.厚生労働省は、介護保険による「介護サービス」を優先する原則について、あくまで原則であって自治体には、利用者の状況に合わせて配慮するよう通知しているとしているが、自治体側は財源がない中、制度だけがどんどん新しくなり一自治体で解決できないとしている。

4.障害者総合支援法と介護保険法という二つの法律の谷間で起きている問題であることから、立法府において、こじれ現象をきちんと是正すべきであること。

65歳になっても障害福祉か介護保険か、いずれか、もしくは両方を選べるようにし、必要なサービスを受けられるようにすべきであること。

政府機関が「介護保険対象年齢になった後でも、従来から受けていた支援を原則として継続して受けることができる」とした『骨格提言』を厳守すべきである。なお、国会では「サービスを利用していた一定の高齢者を「高額障害福祉サービス費」の支給対象者とし、負担を軽減できると認めた」(平成30年4月1日適用)。

(しもどうぞのたもつ 日本盲人会連合監事・電話相談担当)