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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年5月号

海外の魅力

小林道代

私が初めて行った海外は、フィジーでした。自立生活をする前は、リハビリや生活を安定させることに忙しく、車いすで海外旅行へ行くことを想像できる余裕は全くありませんでした。

自立生活をして1か月が経った頃、車いすの人もたくさん参加するツアーに誘ってもらい、興味と心配が交錯する中で、準備に励んだのを今も覚えています。初めての海外で、現地の人たちとふれあい交流するうちに、海外にとても興味をもつようになり、それからいろいろな国に行ってみたいと思うようになりました。

これまでに、10か国以上の国へ行き、いろいろなハプニング、個性豊かな現地の人との出会い、そして、たくさんの素晴らしい体験をすることができました。

初めてのフィジーでは、電動車いすの充電ケーブルを、そのままコンセントへさしてしまい、電圧異常でバッテリーが故障してしまいました。今思えば笑える失敗ですが、当時は知らない土地ということもあり、また、修理の人を呼ぶこともできないので、焦るに焦りましたが、翌日には気持ちを切り替えて、初の海外旅行を楽しみました。

セブ島に行った時には、リフトタクシーがないので、送迎の車をアレンジしてもらい、後部座席をすべて撤去して、車いすごと現地の人の手を借りて乗せてもらいました。このようなフレンドリーな対応(安全性は保障できませんが…)は東南アジアに多くみられます。

このセブ島では、受傷後に初めて水着で海に入りました。海の美しさと非日常的な解放感から、そのような貴重な体験ができたものと思います。

宿泊の際は、ホテルの部屋をなるべくコネクティングルームにしてもらい、介助者が夜間に体位交換をするための移動が容易にできるように、ホテルの方へ予約の段階でリクエストします。

旅行に行きだした頃の空港までの移動は、一般のタクシーを利用していたので、とても大変でした。今はリフトタクシーが普及し、快適に空港まで行けるようになりました。

最近は、アジア方面の旅行へ行くことが多いのですが、どちらの国でも、昔に比べてリフトタクシーが増えたように感じます。中には、地下鉄がバリアフリーな国もあり、旅行しやすい印象です。

マレーシアに行った時もリフトタクシーを使い、ナショナルモスクに行き、現地の人に交じってお祈りの体験をし、初めてヒジャブという顔を覆うものをつけました。モスクには、とてもたくさんの人がお祈りに来ていたので、混雑して車いすでは危ないかと思いましたが、みんな親切でした。モスクではとても新鮮な体験をすることができました。

マレーシアに行ったのは2回目で、初めて行ったのは今から10年以上前なのであまりにも街並みが変わっていて驚きました。特に、以前に比べると車いすで行動できる範囲が増えたように思いました。

たくさんの旅行をしてきて、重度の障害者を専門としたツアーデスク(バリアフリーを謳(うた)う大手の旅行デスクはあるのですが…)がないことに気付きました。旅行は、自分たちでアレンジする楽しさもありますが、現地とのやり取りにはとても時間がかかり大変です。情報が適切に伝わらず、現地で困ったことは数えきれないぐらいありました。もし、重度障害者専門のツアーを企画できる代理店があれば、自分たちが体験したような苦労を減らすことができると思います。

次回の旅行は、自然豊かなマレーシアのコタキナバルに行ってみようと思います。事前にリフトタクシーの情報を掴(つか)んでいるので、後は現地でなんとかなると思います。そんな勢いでこれからもいろいろな国に行って、友達を作り、現地の生活を体験し、自分の世界を広げてきたいと思います。

(こばやしみちよ 指定訪問介護事業所トパーズ代表取締役)