「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年5月号
「電動車いす部門・低床バス乗車継続日数」更新記録5千回を超えて伝えたいメッセージ
今福義明
昨年2016年の元旦は快晴で暖かかった。その日、私(電動車いす使用者)は都営ノンステップバスを6回も乗車しました。そして連日快晴で暖かく、毎日乗り始めました。そういうこともあって、同年2月13日、マレーシア・タイ・日本の障害者問題を語る国際フォーラムの参加者の前で「今年(2016年)は低床バス※乗車600回を目指します!さらに、毎日1回以上乗車する連続日数を更新します!」と宣言しました。この時点で、低床バス乗車連続43日間、通算106回に達していたし、2015年には初の低床バス乗車500回達成していたので、このような宣言をしたのでした。
それで、とにかく低床バスを毎日1回以上乗り続けました。雨降りの日は、濡れるのを極力避けたかったので、自宅から最寄り駅までは、傘がどうしても必要でしたが、最寄り駅までたどり着ければ、時間は掛かりますが、完全に屋根伝いでバス乗降できる2ルートを見出しました。また、他府県によっては、低床バスの運行本数がとても少なかったり、地理的不案内もあったりして、毎日1回以上の乗車に苦労することもありました。
ところで、どうして私は、これほど低床バスに乗ることが、こんなにも日常的に継続したのでしょうか?それはたぶん、低床バスに乗ること自体が“楽しいから” なのでしょう。さらに説明すると、電動車いす使用障害者が低床バスに乗り降りする全過程が、殊の外、味わい深いのでした。なぜなら、低床バスの車両の仕様、運転手の接遇の仕方や人柄、路線ごとの風景や様子、さまざまな乗客との乗り合い感、道路環境とバス停の構造仕様の微妙な違いが楽しいのでした。
そして何より、交通バリアフリー法の下で、低床バスは非常に重要性の高いバリアフリー化対象の公共交通であるにもかかわらず、多くの車いす使用者には、鉄道や地下鉄と比較して、利用のハードルが高いと感じられているからなのでした。
ところで、電動車いす使用障害者の私が日本で初めていわゆる低床バスに乗ったのは、京都市内在住時の1991年末の京都市営リフト付き路線バスでした。日本では、ほぼ同時期に、大阪市、神戸市、東京都、横浜市とわずか数台ずつ路線バスにリフト付きバスが走り出しました。私はこれらの各都市のリフト付きバスにとても乗りたかったので、わざわざ乗りに行っては、それぞれの設備のほんのわずかな違いを見出しては喜んでいました。
1994年秋に、東京都東久留米市に引っ越しました。同市内の障害者団体で、1997年、西武バスに3千人の署名を添えて「ノンステップバス早期導入を求める要望」をしました。翌年1998年、滝山営業所に“西武バス初のノンステップバス6台”が東久留米2路線に導入され運行開始しました。それがとてもうれしくて、西武池袋線の東久留米駅までの往復に、ほぼ毎日乗るようになっていました。
ノンステップバスが走る前までは、電動車いすで約20分掛かっていたのですが、バスに乗れば5分でした。しかし現実には、同路線はJR中央線の武蔵小金井駅から来るので、途中の道のりでの混雑遅延が酷くて、30~45分も待つことがざらにありました。それでもバスを待って乗ったので、3年後の2001年、滝山営業所に「西武バス千回乗車達成感謝状」を作成して手渡したこともありました。
このように私にとっての「低床バスの旅」は、行き先の楽しみはもちろんのこと、さまざまな低床バスにまつわることすべてが楽しみとなっていました。まさに“低床バス乗車マニア”になっていました。
私が、電動車いすのまま公共交通の路線低床バスに初めて乗車したのは、1984年、米国カリフォルニア州バークレーCILに研修留学していた時でした。当時、すでに路線バスの30%にリフトが付いていて、バス停で少し待てば乗れました。そのうれしさが30年続いて、現在に至っているのです。
「低床バス乗車記録」をスタートしたのは、2006年7月14日で、今年4月3日時点で、5155回の記録に達しました。今更ながらに、よく乗り続けたものだと感嘆します。これからは、より多くの車いす使用者に低床バスにドンドン乗ってもらえるようにアピールしたいと思っています。
(いまふくよしあき 電動車いす使用者)
※低床バスとは、リフト付きバス、ワンステップ・スロープ付きバス、ノンステップバスのことです。
底床バス乗車記録
年 | 回数 | 通算 |
---|---|---|
2006 7月14日(金)~ |
147 | 147 |
2007 | 288 | 435 |
2008 | 274 | 709 |
2009 | 292 | 1001 |
2010 | 401 | 1402 |
2011 | 427 | 1829 |
2012 | 408 | 2237 |
2013 | 455 | 2692 |
2014 | 426 | 3118 |
2015 | 533 | 3651 |
2016 | 1217 | 4868 |
2017 | 287 | 5155 |