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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年6月号

時代を読む92

大学入試センター試験とユニバーサルデザイン

1947年、日本国憲法が施行され、「教育の機会均等、門戸開放」の下、障害を有する学生も大学への入学が正式に認められた。しかし、すべての大学の門戸が開放されたわけではない。むしろ、理解ある大学関係者の恩情によって受験が認められていた時期であった。

1979年度から国公立大学の全国共通テストとして大学入試センター試験の前身である「共通第一次学力試験」が実施された。当時、障害を有する大学生も極めて少なく、定量的な研究は困難であったため、テストは主として経験則に基づいて設計された。また、受験するためには、障害を有する志願者には受験する国公立大学との間で事前協議が義務づけられていた。共通第一次学力試験の志願票には協議書の添付が必要であった。

この協議書の義務づけは障害者に対する差別的取り扱いである。しかし結果として、各大学側は受験協議に応じざるを得なくなり、理由なしに受験を拒否できなくなった。

1990年に共通第一次学力試験の名称が「大学入試センター試験」と変わってから、センター試験の受験には事前協議書の添付が不要となった。しかし、大学を受験するためには、各大学の入試要項に記載された期日、12月頃までに事前協議を行う必要がある。事前協議は、障害を有する志願者の入学を制限する傾向から、各大学が入学試験方法や入学後の学習を支援するための情報を取得するための協議へと変わっていった。

2017年5月16日の新聞報道によれば、2020年度からセンター試験は「大学入学共通テスト」と名称が変わる。新テストでは、従来のマークシート方式に加えて、国語と数学の一部に記述式問題が出題される。また、英語は民間の英語テストが活用され、複数回受験が可能となる。

新テストは、開発当初から障害を有する志願者をはじめ、すべての志願者に公平に配慮して設計するテストのユニバーサルデザインによる設計を切に期待したい。

大学入試センターに在職中、一貫してテストのユニバーサルデザインに関する研究を行なってきた。障害を有する志願者に対する公平な試験時間の延長率も開発されている。現行のセンター試験は、年々の問題文書量の増加に伴い、障害を有する志願者には問題を読み切れなくなっており、試験時間と問題出題量の適正化が必要である。

また、中途失明者、重度の弱視者及び特に重度の読字困難者の受験を可能にするため、2次元ドットコードを活用した2種類の音声問題を開発している。センター試験には、点字問題と拡大文字問題しか用意されていない。

(藤芳衛(ふじよしまもる) 大学入試センター名誉教授)