「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年6月号
17の目標のうち障害関連のターゲット
ゴール10:各国内及び各国間の不平等を是正する
臼井久実子
障害者権利条約(以下、権利条約)も「他の者との平等」を柱としている。ゴール10(10項目)から2項目を選び、障害者と関わることと期待を述べる。
【10・2】2030年までに、年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教、あるいは経済的地位その他の状況に関わりなく、すべての人々の能力強化及び社会的、経済的及び政治的な包含を促進する。
前記のとおり、SDGsは目標達成に向けて、特に困難が複合している人々を明確に視野に入れている。またSDGsはゴール5で「ジェンダー平等」を掲げ、これが「死活的に重要な貢献をする」目標と述べている。
日本の障害女性の経済的な貧困、高い割合の虐待・暴力被害、政策決定過程への参画の遅れは、性別を含む調査分析が不十分な中でも明らかになっており、これらの性別格差の是正は、SDGs達成の試金石と言える。
権利条約も固有の解決すべき課題として第6条「障害のある女性」を立てている。障害者基本法など国内法においても「障害のある女性」のように固有の項目と条文を設けて取り組むことが、SDGs及び権利条約からも求められていることである。
【10・3】差別的な法律、政策及び慣行の撤廃、並びに適切な関連法規、政策、行動の促進などを通じて、機会均等を確保し、成果の不平等を是正する。
権利条約第4条1bも「障害者に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し、又は廃止」を締約国の一般的義務としている。障害に基づき法律で権利制限する欠格条項は典型である。総務省の法令データを用いた調査結果からは、障害者に関わる欠格条項のある法令数が2016年時点で506、そのうち成年後見制度と連動するものが大幅増加し211である。これらを含めた欠格条項・権利制限をどう正していくか問われている。
また、【10・4】「税制、賃金、社会保障政策をはじめとする政策を導入し、平等の拡大を漸進的に達成する。」も極めて重要である。
日本のSDGs指針は「誰一人取り残さない」として、基本原則に「包摂性」「参画」を置いている。本当に「誰一人取り残さない」ためには、困難が複合し取り残されがちな当事者の声を聞き、その参画をもって取り組むことを基軸としてほしい。
(うすいくみこ 障害者欠格条項をなくす会事務局長)
(注)全法令調査データ
http://www.dpi-japan.org/friend/restrict/shiryo/data/index.html