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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年6月号

霞が関BOX

第2期スポーツ基本計画における障害者スポーツ振興の取組

スポーツ庁健康スポーツ課障害者スポーツ振興室

1 はじめに

スポーツ基本計画は、スポーツ基本法に基づき、スポーツに関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための重要な指針です。

第1期のスポーツ基本計画は、スポーツ基本法施行翌年の平成24年に策定され、これに沿ってスポーツ振興が進められてきましたが、これは5年間の計画であり、平成29年度から33年度までを対象とする第2期のスポーツ基本計画(以下、「第2期計画」といいます)が、平成29年3月に新たに策定されました。ここでは、この第2期計画における障害者スポーツについての目標や取組等に関する概要を紹介します。

2 第2期計画の概要

第2期計画では、『スポーツが変える。未来を創る。Enjoy Sports, Enjoy Life』をキャッチフレーズとして、多面にわたるスポーツの価値を高め、広く国民に伝えていくため、スポーツの価値について

  • スポーツで「人生」が変わる!
  • スポーツで「社会」を変える!
  • スポーツで「世界」とつながる!
  • スポーツで「未来」を創る!

という4つの観点から「一億総スポーツ社会」の実現に取り組むことを、中長期的な基本方針として提示するとともに、今後5年間に取り組む施策として、4つの政策目標、19の施策目標、139の具体的施策(うち再掲11)をとりまとめました(図1)。この中には、平成27年10月のスポーツ庁創設後の重点施策として、スポーツの成長産業化などとあわせ、障害者スポーツの振興についても多くの施策が盛り込まれています。

図1
図1拡大図・テキスト

また、数値を含む成果指標を、第1期計画の8から20に大幅に増加させたこともポイントの一つです。特に、第1期計画の5年間の間に「障害者スポーツ」の所管が厚生労働省から文部科学省に移管され、スポーツ庁が設立されたことで、第1期計画ではぜロだった障害者スポーツ振興に関する数値を含む成果指標を、今回の計画では5つ設定しています。

3 障害者スポーツに関する具体的施策の概要

第2期計画の基本方針として、次のような記載があります。

  • 年齢、性別、障害の有無等に関わらず、スポーツは誰もが参画できるものであり、全ての人々が関心や適性等に応じて、安全で公正な環境の下で日常的・自発的にスポーツに参画する機会を確保することが重要である。
  • 障害者スポーツを通じて障害者への理解・共感・敬意が生まれる。
  • 子供、高齢者、障害者、女性、外国人などを含め全ての人々が分け隔てなくスポーツに親しむことで、心のバリアフリーや共生社会が実現する。

主にここに記載されたスポーツの価値を踏まえ、障害者スポーツの振興に関する施策については、4つの政策目標のうち「2 スポーツを通じた活力があり絆の強い社会の実現」において、「スポーツを通じた共生社会等の実現」のための施策として記載されています。

(1)施策目標

障害者をはじめ配慮が必要な多様な人々が、スポーツを通じて社会参画することができるよう、社会全体で積極的に環境を整備することにより、人々の意識が変わり(心のバリアフリー)、共生社会が実現されることを目指すこととしています。

このため、障害者が健常者と同様にスポーツに親しめる環境を整備することにより、障害者の週1回以上のスポーツ実施率を40%程度(7~19歳の若年層は50%程度)とすることを目指すこととしています。

(2)現状と課題

この目標に対して、障害者のスポーツ環境に関する現状と課題には次のようなものがあります。

  • 障害者(成人)の週1回以上のスポーツ実施率は19.2%である(成人全般のそれは42.5%)。
  • 地方公共団体において、障害者スポーツの推進体制は十分でない。
  • 障害者が専用又は優先的に使用できるスポーツ施設は114か所にとどまり(平成24年度現在)、中には車椅子での施設利用等を拒否されるケースもある。
  • 障害者スポーツ指導者やボランティアの数は十分ではない。
  • 特別支援学校では運動部活動への参加の機会が限られているなど、学校における障害児のスポーツ環境は十分でない。

(3)具体的施策

前記(1)(2)を踏まえ、障害者スポーツの振興等については17の具体的施策を定めました。主な施策は次のとおりです(末尾のカッコ内は成果指標)。

  • 地方公共団体等において障害者スポーツを総合的に振興する体制の整備
  • 障害のある人とない人が一緒に親しめるスポーツ・レクリエーションの推進
  • スポーツ施設のバリアフリー化、不当な差別的取扱いの防止による利用促進
  • 全ての特別支援学校が地域の障害スポーツの拠点となることの支援
  • 総合型地域スポーツクラブへの障害者の参加促進(40%→50%)
  • 障害者スポーツ指導者の養成の拡充(2.2万人→3万人)
  • 活動する場がない障害者スポーツ指導者を半減(13.7%→7%)
  • 障害者スポーツの理解促進により、直接観戦経験者を増加(4.7%→20%)
  • 全ての学校種の教員に対する理解促進、学校における障害児のスポーツ環境の充実

4 おわりに

第2期計画を着実に実施していくためには、計画の進捗状況の定期的な検証が不可欠です。スポーツ庁では、各施策の進捗状況について、スポーツ審議会等において、適切なデータを基に定期的に検証を行うことにより、PDCAサイクルを確立します。

その際、必要な場合には計画期間内であっても成果指標や具体的施策等を見直すとともに、検証のプロセスを広く公開することにより、スポーツ行政に対する国民の理解と信頼を確保していきます。

あわせて、スポーツ庁では、SNSをはじめ多様なメディアを活用して国民に直接発信し、スポーツを通じて全ての人々が結びつき、実践につながるような広報活動を行なっていきます。


※第2期スポーツ基本計画の詳細は、スポーツ庁ホームページでご覧いただけます。
http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/sports/mcatetop01/list/detail/1383656.htm