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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年7月号

ヘルパー=「自分の味方」

永井誠

私はALSと診断されて5年目になります。在宅生活は3年半、独居になって8か月です。気管切開と胃ろう造設をしています。現在51歳です。重度訪問介護制度を使い24時間、ヘルパーと暮らしています。

私を取り巻く介護職の人たちは、ケアマネや訪問看護師、PT、訪問入浴、マッサージ師、そしてヘルパーで、これらの人たちを私は「自分の味方」と思っています。

「自分の味方」だと思うと、自然と笑顔になって場の雰囲気が和みます。お互い素直になって会話が生まれます。それぞれの立場や経験からいろいろな話を聞くことができます。

たとえば、飼い犬を見せに来てくれたり、お土産を持ってきたり、DVDを貸してくれたり、植木についた害虫の駆除をしてくれたこともありました。介護と関係のないところで付き合いができてきます。とても嬉(うれ)しいことです。私の家を「永井カフェ」と呼んで、一息ついて次の訪問先に向かう人もいます。

気管切開をして声が出ない私は、笑顔を心がけています。そして「自分の味方」と積極的に関わっていこうと思っています。

ALSは(他の病気でもそうですが)いかに人と付き合うかでQOLに差が出ると思うのです。なかでも一番の味方はヘルパーです。そのヘルパーにいかに味方になってもらうか。味方になってもらえば、孤独とは無縁でいられます。

そのヘルパーの内訳は、重度訪問介護のヘルパーとして自薦ヘルパー1人、学生ヘルパー1人、事業所ヘルパー10人。それと介護保険のヘルパーが数人です。9時~18時と18時~9時の1日2交代制でまわしています。

重度と介護の重複(重度訪問介護のヘルパーがいる時に、介護保険のヘルパーや訪問入浴が重なっていても良いということ)も認めてもらいました。

私は独居なので、自薦ヘルパーがどうしても必要です。

自薦ヘルパーは、簡単に言うと「自分専任のヘルパー」のことです。他の家には行きません。家族と同等のことをしてもらっています。たとえば、私は人工呼吸器を2台所有していますが、それの切り替えやカフアシスト、食事介助などです。

また、家のマネージメントもお願いしています。郵便物の整理や消耗品の発注、補充などです。これらの行為は事業所ヘルパーにはしてもらえません。自薦ヘルパーがいて初めて、安心、安全に暮らせるのです。

いまでこそ私の周りの介護職の人たちは自薦ヘルパーのことを知るようになりましたが、最初は誰もそのことを知りませんでした。私も知りませんでした。自薦ヘルパーは自分の専任なので、コミュニケーションが取りづらくなっていくALSにはピッタリの制度だと思います。微妙な合図も理解してもらい意思伝達ができ、会話も可能となります。

やはり、ヘルパーは「自分の味方」なのです。自薦ヘルパーのことをもっと多くの人に知ってもらい、認知度を上げたいと思っています。

次に学生ヘルパーについて、触れたいと思います。

学生ヘルパーとは「学生アルバイトのヘルパー」のことです。アルバイトですが研修を受けてもらい、喀痰吸引や経管栄養はもちろんのこと、自薦ヘルパーと同様のことをしてもらっています。私のところに来ている学生ヘルパーは看護大学生です。看護師の卵だけに医療や介護の知識は豊富で、医療機器の操作も正確です。動きもキビキビとして、介護に対する姿勢は素晴らしいです。私のコミュニケーション動作や合図もすぐに覚えました。

訪問看護師も親身になって指導をしてくれています。その光景を見るたびに嬉しくもあり、誇らしくもあります。

ちなみに私は、学生ヘルパーの卒研の研究材料になることが決定しています。

自薦ヘルパーと学生ヘルパーは自分で募集しなければなりません。

私の場合は、自薦ヘルパーは会社を結婚退職した元同僚です。お互いに相手のことをよく知っているし、身元も確かなので安心です。旦那様もたまに顔を見せに来てくれます。

学生ヘルパーは看護大学にアルバイト募集の紙を貼って応募を待ちました。そして、面接をして採用しました。

やはり、命に関わる介護なので身元の確かな人を採用したいです。

私の目標はオール自薦ヘルパーです。自薦ヘルパーを2~3人、そして学生ヘルパーのサークル化です。自薦ヘルパーに学生ヘルパーを指導、監督してもらい、サークル化した学生ヘルパーは毎年、出会いと別れがあり常に活性化していて、その若いエネルギーを私ももらって元気に在宅生活を送ることができれば最高です。

(ながいまこと さくら会会員)