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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年7月号

支援者から介護サービスの利用を勧めよう

川口有美子

痰吸引等の医療的ケアを受けながら、家族にさほど頼らずに、ヘルパーを利用して暮らしている重度障害者が増えています。2013年の医療的ケアの法制化により、ALS等の神経筋疾患の人にも、介護サービスが使えるようになってきたのです。

しかし、依然として家族介護に依存している人も少なくありません。制度を使わない/使えない理由はさまざまですが、市町村の窓口やケアマネが、障害者施策の介護サービス(重度訪問介護)を知らなかったり、当事者に知らせなかったり、介護給付を出し渋ったりしている、という面は否定できません。そのうえ、医療的ケアを提供できる事業者がいない、重度訪問介護の事業者がいない、ということも言われます。実際に、介護事業所に「ヘルパーがいません」とか、単価の高い「深夜帯のみ派遣するけど」(日中は単価が安いから無理)とか、市町村からは「事業者がいないから支給決定をしない」などとも言われて、制度利用を諦(あきら)めてしまう人は少なくありません。

でも、諦めることはないのです。なぜなら、事業所やヘルパーが見つからなくても、ヘルパーは利用者本人が自分で育てることができるからです。簡単に言えば、利用者自身がヘルパーを募集し、面接し、自ら指導して、自分だけのヘルパーとして、近くの事業所に登録して、派遣してもらえばいいのです。無資格者には雇用を約束してから、ヘルパー資格を取得してもらうのです。このような方法を「自薦」と言います。これなら、僻地(へきち)や離島でも人さえいれば、介護サービスの利用は可能です。過疎地でヘルパーを増やす手立てはこれしかないので、私はこの方法を制度利用の実態のない地域で、普及する活動を行なってきました。

たまに「地方は東京とは違うから…」などとたしなめられることもありますが、障害当事者は「家族の負担にならずに療養したい」と望んでいます。つまるところ、地域間格差の解消には、支援者こそがアンテナを張り巡らし、キャッチした情報を前向きに捉えて「できないはずがない」と覚悟して実践に向かうことが第一歩ではないかと思うのです。永井さんはその好事例で、自薦ヘルパーのHさんが制度をよく学び、自治体の担当者やケアマネさんのご尽力を引き出した成果とも言えます。

当事者に我慢させるのか、それとも「東京でできることは島でもできる」のか。壱岐の医師の言葉が思い出されます。

(かわぐちゆみこ 日本ALS協会理事)