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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年8月号

新潟市における誰もが移動しやすい公共交通の実現に向けて

新潟市都市政策部 都市交通政策課・新交通推進課

1 はじめに

新潟市は、マイカー依存度が非常に高く、平成22年までの10年間でバス利用者数が約40%も減少し、これに伴って郊外のバス便数が約20%減少するなど利用サービス低下となる悪循環になっていました。

この悪循環に歯止めをかけるため、新潟駅に向かって運行する多くの郊外バス路線が重複し、需要に対して過剰な運行となっているまちなかの区間に、新たにBRT(次世代型バスシステム)を導入し、路線の集約を図るとともに、郊外バス路線はBRT沿線の交通結節点までの運行とし、生じた余力(車両・運転手)を郊外路線の増便に振り替える効率的な運行とすることで、サービス向上を図りながら利用者数の増加を目指すこととしました。

この取り組みを「新バスシステム」として、本市がBRTに必要な施設を整備し、バス事業者である新潟交通株式会社がその施設を活用して運行する「公設民営方式」を取り入れ、平成27年9月5日に開始しました。

2 BRTと連節バス

BRTの運行にあたり導入した連節バスは、バリアフリーに配慮し、車内はフラットな面が広いノンステップ車両となっています。また、乗車可能な定員や座席が共に一般バスの約1.5倍あるため、ピーク時間を中心に運行することで、運転手1人あたりの輸送力が強化されより効率的な運行が可能となりました。一方で、車両の全長が一般バスの約12mに対して約18mあり、また外国製であるため、導入前には運行や使いやすさなどについてさまざまなご意見をいただきました。

そこで車両購入前に、他都市で運行する連節バスを借用した市民試乗会を2回実施し、障がい者の方々にも試乗いただきました。

体験者からは「つり革が少ない」「車内後部にある段差が高い」「後ろ向きの座席は乗りにくい」などの意見をいただいたことから、車両の製造にあたっては、つり革の数を通常の連節バスの約2倍としたほか、車内後部のステップ数を増やす代わりに1段あたりの段差を低く抑え、また座席は、前または横向きのみとするなどの工夫を施しました。

またBRTのバス停では、バスの位置情報を情報案内板にアイコンで表示させるほか、次発バスの接近をチャイムや音声で知らせる仕組みも取り入れています。

3 バス路線再編に伴う障がい者への対応

BRTと郊外路線が接続する交通結節点では、乗り換えによる利用者の移動距離が極力短くなるように各路線の発着場を配置するとともに、快適にバスを待てる上屋や防風壁を設置するなど、利用者の負担軽減に努めました。

しかしながら、バス路線が再編されることで、これまで慣れ親しんだバス停位置の変更や新たに乗り換えが生じるため、高齢者や障がい者を中心に、より負担感が大きくなるといったご意見を運行開始前にいただいたことから、個別に相談ができる説明会を開催し、不安や懸念の解消に努めました。特に視覚障がい者には、事前に聞きとりした各々の日常の移動パターンにあわせ、バス停の変更位置や乗り換えの仕方を市職員が手作りした触地図を用いて個別に説明を行うなど、運行開始後も安心してバスを利用していただけるよう取り組みました。

4 バリアレス縁石の導入

新バスシステムとともに、路線バスがない地域の足を支えるコミュニティバスも強化しており、その施策の一つとして、平成27年度から乗降の負担を少なくするバリアレス縁石の導入を進めています。

バリアレス縁石は、バス停がある歩道と車道の間に設置する縁石を、バス車両やタイヤの形に合わせた特殊な形状の縁石にして設置することで、停車するバスと歩道の間の隙間を小さくし、子どもや高齢者、ベビーカーも乗降しやすくするものです。

平成28年度には区役所前のバス停で実証実験を行い、計画段階から新潟県視覚障害者福祉協会、高齢者や子育て世代などに参画していただき、運用面での検証を進めました。設置後はバスの正着性が格段に向上し、バス利用者が安心してバスに乗降できるようになりました。

現在は本格運用しており、今後は主要な交通結節点などへ導入できるよう設置を検討していきます。

5 おわりに

新バスシステムの運行開始から1年間のバス利用者数は、運行開始前に比べ0.8%とわずかですが増加に転じ、長く続いていた利用者数の減少に歯止めがかかるとともに、持続可能な公共交通の土台ができてきました。今年度もバス運行の改善を重ねていくほか、郊外におけるコミュニティバスに、新たに小型ノンステップバス車両を導入するなど、誰もが利用しやすい移動環境の実現を目指していきます。