特集/教育リハビリテーションの諸問題 特殊教育における博士課程レベルの用意

特集/教育リハビリテーションの諸問題

特殊教育における博士課程レベルの用意

Doctoral Preparation in Special Education 

Harold W.Heller *
Charles Forgnone**

武田 洋訳

 1970年の夏の間に、Mental Retardation Branch、Division of Training Programs Bureau of Education for the Handicapped、US Office of Educationが、大学レベルの教育計画に焦点をあてた6か所の国立特殊教育研究所を設立した。その研究所は50の州全部とプエルトリコに関係者を送ることができるように、地域ごとに設立された。

 精神薄弱の領域のすべての連邦政府の財政による博士課程レベルの教育計画に対して、その応用を呼びかけられた。その反応によって、以下の6か所の施設が地方の施設を管理し、また協力するために選定された。

Georgia State University(Nicholas R.Castricone)

University of Illinois(Laura Jordan)

University of Northern Colorado(Tony Vaughn)

University of Oregon(Herbert J.Prehm)

University of Texas(Jhon K.King)

University of Virginia(Douglas P.Howard)

 またUniversity of VirginiaのWilliam R.CarrikerとDouglas P.Howardが全体課題に対する連邦段階の協力者として選任された(Carriker&Howard 1970)。

 以上の施設の特別の目的というのは次にあげるとおりである。

 1.精神薄弱の領域における博士課程レベルのプログラムの現在の状況を調べること。

 2.未来に向かって博士課程レベルのプログラムを企画するために、哲学的な基盤、目的、実践を調べること。

 3.この領域に必要とされる人材のタイプを探究する(教員教育者、研究者、管理者)。

 4.そういう人材を生みだすのに必要な教育と経験の形を修正する。たとえばコース、実習インターン制、あるいは現場訪問、学生の選択、職員のモデルなど。

 5.その訓練プログラムの中で、最終的に実際に学生が変化するように導くような計画を立てることについて関係者をどう参加させていくか。

 6.博士課程レベルのプログラムの効果を評価するための規準を発達させていく。

 7.未来の博士課程レベルの方式の準備に関する領域から、US Office of Educationに情報を与える。

手続き

 6か所の施設のそれぞれが、異なったプログラムのモデルと参加者を提出したが、だいたいは提出された資料を位置づけして、参加者は討論グループに分けられるというやり方であった。一つ一つのグループが、全体討議にかけるために、勧告と結論を提出するというものであった。各グループで参加者間の意見が自由に出されるように努力が払われた。

 各研究所で未来の方向を考えるという目的で、施設が解散された後のことが検討された。各参加者が、参加者によって勧告された特殊な研究所について、いろいろの評価をし勧告をした。そのおのおのの評価が二人の連邦協力者によって要約され、それぞれの研究所の指導者に利用してもらうよう準備した。さいごの報告には、すべての参加者が最大の可能性をもつことができるようにと述べてあった。

 研究所の参加者にはその訓練者と同じく、訓練された人々を用いる側の人が含められた。公立学校、州立の施設、私立学校、州の部局や課、私立の施設、単科大学、総合大学、他の施設や機関などからの人々が、おのおのの研究所を代表して参加したのである。

判明したことがら

〈一般的なこと〉 博士課程レベルのプログラムは、もっと個別化されるべきで、しかも流動的なものでなければならない。そして、能力というものに基づいていなければならない。これはコースの時間割の修正などということよりもたいせつなことである。教員養成、研究、管理の三つの領域のうち、どれがおもに強調されるべきかということに関して、特殊教育の一般的なプログラムを方向づけていくやり方が勧告された。

 個人の能力を最大限にまで到達させるために、大学の内外を問わず、経験が他の分野に流布されるべきである。もっと実際的な実習やインターンを体験させるように、そういう面を促進させるべきである。

 研究所に参加した人は、教科課程を減少させていくという意見をもち、問題を解決する体験を適切に学生にもたせていくことを強調する傾向がある。

 博士課程レベルのプログラムの卒業生の教育効果を測る、縦断的な研究の必要がまず第一に考えられた。博士課程レベルのプログラムを通して、学生の能力とその発達について実際の行動を評価することが重要だと考えられた。その能力がはっきりわかってこそ、どのようなプログラムが準備されても、その効果を評価するモデルが作られるべきだということである。そのためにも、この領域で1年か2年経過した後に、以前の学生が大学へ戻ってきて、そういう評価に加わるべきである。

 それぞれの研究所が学習障害という動きとその非絶対性を強調した。学習問題と学習者の性質という考え方で、今までの概念のどれにも含まれることを強調する必要のあることが述べられた。障害のひとつの領域よりもいくつかの遅れた領域、つまり精神薄弱とか学習障害などの研究領域での訓練が、プログラムにもりこまれるべきであることも強調された。

〈特殊なこと〉 それぞれの研究所が教員の教育者、研究者、管理者になることを考慮しているものに対し、より適切なプログラムを与えるための基盤を論じあった。CarrikerとHoward(1970)の最終報告から得られた、多くの有能な人々が召換された。これらの人々は要望された分野に従い、分けられた。

結論

 地方の研究所を設立したための成果については、教員教育、研究、管理を特殊教育の領域で重視するすべての大学レベルの訓練プログラムに対して、勧告を与えることができたということである。その勧告のうちには、その領域でのより多くて質的にも向上した計画的な体験を作りだしていくことが強調され、また実際の実践以上に幅の広い基盤に基づいたプログラムを背景にした個人個人の能力の発達も強調された。また、ある勧告は人道的な態度の高揚に向かってすすめられたものであり、その態度というのは行動の目的に基づいた責任というものと背中合わせのものである。目的にあった能力を身につけていくということは、広く行われることであるが、研究所を設立したための結果はそういうことの到達への出発を表しているともいえよう。

 この研究所設立の結果として、次にあげたような勧告が、6か所の長からBureau of Education for the Hnadicappedに対して提出された。

 1.いろいろに分類されたプログラムを代表する者の会議は、一般的な特殊教育の博士課程レベルのプログラムの可能性を考えるためにもたれるべきである。

 2.後続する地方レベルの会議では、CarrikerとHowardの最終レポートによって提出された勧告の実行とそれを拡大していくことについて、評価するために行われるべきである。

 3.人材のニードは、博士課程レベルの人々が決定すべきである。

 4.一般的な能力と教員教育、研究、管理ということについての特殊なことがらに関する、目的のための能力というものは、なおいっそうの輪郭が描かれなければならない。

 5.「生みだされたもの」の効果と、この領域での影響を評価するために、追跡研究をしたり、縦断的に研究したりすることはたいせつである。

参考文献 略

*アラバマ大学特殊教育学部長
**フロリダ大学特殊教育管理プログラム・コオーディネーター


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1972年7月(第7号)16頁~18頁

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