特集/地域リハ 地方における地域リハビリテーション

地方における地域リハビリテーション

―富山県の例―

長尾竜郎・山本敏泰 *

 

1.はじめに

 「地方と地域リハビリテーション(以下、リハ)」というテーマは、日本リハ医学会(第7、9、13、23、29、31回)やリハ関連雑誌で繰り返し取り上げられている。辺地・離島の高齢者・障害者に対する地域リハ関係者の努力が述べられているが、高齢者・障害者が住み慣れた地域から引き離され、遠隔地の施設に収容されるといった問題点も指摘されている。

 本論では、前半で地方における地域リハについて総論的に、後半は富山県における具体的な地域リハ活動や福祉用具の地域への普及活動を紙幅の許す範囲で紹介したい。

2.用語の問題

 最初に、地方における地域リハを構成する、地方、地域、リハなどの言葉を吟味したい。

2―1.地方とは:

 地方とは都市や中央に対する言葉であろう。社会学者ウェーバーは、都市とはまとまった定住だとしている。ならば地方とは相対的な過疎地ということになる。

 また1990年代から地方分権が強く叫ばれているが、この時の地方は中央政府に対する(より身近な)自治体という意味である。岡本は、福祉の北欧モデルを念頭に置いて、地方自治体こそ唯一のコミュニティである、と述べている。確かに、1993年の地域保健福祉計画策定、福祉八法改正、1997年の公的介護保険制度など、市区町村の責任は大きくなり、一部は福祉サービスを持て余しているようである。

2―2.地域(コミュニティ、community)とは:

 コミュニティ論は、急速な経済成長を遂げ、伝統的社会がほぼ解体し、自然的・社会的環境の悪化が目立ってきた20年程前から盛んになった。1973年に社会学者松原は、経済社会の発展と国民の生活福祉の向上とを媒介する中間項として「コミュニティ」を形成するという論理がどうしても必要だとし、コミュニティ意識の形成にはいったん脱地域社会化した「個我」に新たな地域社会性が与えられ社会化される必要がある、と述べている。自律性、「自立生活」、などはこの文脈で理解されよう。

 しかし、20年も前の地域住民にとっては障害や介護問題への意識は低く、施設建設といえばむしろ公害並の反対運動の対象でしかなかった。1980年代には家族の介護負担は社会問題化し、介護問題を近隣同士の助け合いで解決しようといったコミュニティ活動期待論も提唱された。岡本は、これらの論議を日本流の村落共同体や町内会にアメリカ流のボランティア活動を「ご都合主義的」に重ねようとした(経済的基盤がないという意味で)幻想のコミュニティ論である、と述べている。

 1996年7月に決定した高齢社会対策大綱でも、「高齢者が社会を構成する重要な一員として尊重され、地域社会が自立と連携の精神に立脚して形成される社会の実現」を相変わらず謳っている。

2―3.リハとは:

 英語辞書には先ず「リハ=権利回復」、後に「病後等に行われる訓練」が出て来(ないこともあ)るが、日本語辞書には後者の語義しか書かれていない。富山県障害者団体役員や超重度の在宅神経難病患者に聞いてみたが、やはり「リハ=機能訓練」と答える。これには20年前でもリハ関係者がぼやいているので驚いた。

 ついでに60年前までさかのぼる。リハ理念を最初に熱心に我が国に伝えようとしたのは、1937年に来日したヘレン・ケラーである。このときは31の地方都市を含む39都市で97回もの講演をして回った。彼女は世界各国を訪問する度に「障害者を隔離してはなりません」と今でいうノーマライゼーション思想を力説した。戦前日本でリハは「更生」と訳され、福祉用語として今に生き残っているが、語義の方は変質してしまった。しかしアメリカではヘレンの思想の延長線上に1973年のリハ法ができ、1990年ADA法に結実した。

 1982年総理府調査によると「障害者を公的福祉施設に入れる」との質問に東京都民の43%が肯定しているのに対し、ストックホルム市民の99%が否定している。現在のわが国の地域社会には障害児者・高齢者を支援しようという理念は形成されず、障害児者・高齢者のケアを担ってきた家族の弱体化と共に、リハの名の下に高齢障害者の(病院、老人福祉施設、老人保健施設など多様な形での)施設収容が進行している。

 むろん施設収容が全て悪というのではない。櫻田は、「自助努力支援型政策」と「真正の福祉政策」とを車の両輪として峻別して整備するべきだと提言している。前者は障害者が健常者に伍して労働市場に挑戦できるようなリハと高齢者が地域で生活できるようにするための生活技術を身につけさせることである。後者は、最重度障害児者・末期癌患者・難病患者・最晩年の人々などに対する施設ケアが主で、これを「地域リハ」の名の下に整備を遅らせてはならない。例えば痴呆老人について和田は「絶対に在宅が正しいとはいえない、利己的な理由でさっさと施設や老人病院に送り込んでしまうのは問題であるが、病気が進行してしまうと施設にいる患者の方が幸せそうに見える」と述べている。

 さて富山県の地域リハを取り上げる前に本県の概要を紹介する。

3.富山県のプロフィール

 富山県は、立山信仰や浄土真宗などの古代・中世精神文化の影響を残しつつ、持ち前の勤勉さで時代の産業に取り組み、農・林・漁業、富山売薬・高岡銅器に代表される近世伝統工業、明治末期以来豊富な電力資源を背景にした官営=政商主導型工業、近年の情報産業等を発展させてきた。

 全国順位等のデータから富山県社会の特性を挙げれば、農・漁・工業県、勤勉性、人口高齢化・少子化、活発な団体活動、恵まれた自然、濃密な地縁性、文化的二重構造、立身出世志向、堅実性、健康志向性、福祉非依存性、などが考えられる。

 NHK全国県民調査によると、地方性を一義的には決められないとしながらも、富山県は山口県などと共に、古さや親密な人間関係というような、良い意味でも悪い意味でも伝統的な価値観を強く残す県の中に入っている。例えば「自分が主張すべきことがあっても不利なときは黙っている」「年上の人には自分を押さえても従った方がよい」「公共の利益のためには個人の利益が多少制限されてもやむを得ない」の各問への同意率は富山県が全国1位、「国や役所のやることには従っておいた方がよい」は2位、という結果は、強い「タテ社会」意識を示すものであろう。弱い立場になると引っ込むことになり、地域リハの障害になりそうな意識である。

 では、地域リハに関連の深い公的福祉政策への富山県(市)民の態度はどうなのか。

4.富山県および富山市の福祉ニーズ調査について

 1995年富山県在宅身障者ニーズ調査によると、所得保障の充実47%、医療費助成32%、公共施設のバリアフリー化28%、在宅障害者の訪問指導24%、障害者理解への啓発22%、職業訓練と職場の確保19%、障害に適した住宅確保15%であった。1987年の全国統計でも所得保障の充実47%、医療費助成28%と上位2位は富山県と同じで、身障者も全体としては「チャンスの福祉」ともいうべき自助努力支援型政策よりも「結果の福祉」志向のようである。

 1991年富山市民意識調査によると、1)市政への希望は、除排雪対策推進50.0%、高齢者在宅福祉充実23%、施設福祉整備13.9%と、雪国の特長が出ている。2)高齢者・障害者へのボランティア活動には、未経験だが参加希望あり62%、参加意志なし20%で、新しい地域社会作りに積極性を示している。3)家族介護負担軽減施策としては、長期収容施設整備44%、医療・介護費用助成42%、相談窓口充実42%、等が、入浴サービス21%、短期預かり事業13%、等の在宅施策より高かった。

5.富山県の施設収容の現状

 本県の障害児者施設定員は多くはない(身障者更生援護施設定員数全国32位、障害児施設31位、特養ホーム34位)が、いったん入所すると長期間、社会と隔離された生活を送る。本県重度身障者更生援護施設退所者84人の平均入所期間は2.9年であった。

 1972年から制度化された最重度障害者のための療護施設の入所者は必ずしも在宅障害者より要介護度が高いわけでもない。本県療護施設の自立度は食事、排泄、更衣、入浴の自立者が現時点でそれぞれ60、33、33、0%であった。

 施設不足による希少価値からか、意図的に作られた症状や機能障害によって入所した例や、要介護度が減っても既得入所権を失うことを恐れて退所しない例も見受けられる。このため実際の施設定員不足(全県で140床)が倍加され、重度の在宅障害者を困惑させている。徳川は、療護施設はノーマライゼーションへ向け新たな挑戦を求められている、と述べているが、本県は入所権の保証が未達成のまま、新たな課題にも対応を迫られることになる。

 高齢者施設については1989年(1994年、新)ゴールドプラン(1999年達成数値目標設定)のため計画的に増床が進められている。富山県の特別養護老人ホーム(特養)のベッド数は、1982年頃の約500床から増加し始め、1995年には2,245床(目標の77%達成)となった。また準収容施設と見なされる老健施設が1988年頃から都市部で増え始め、1995年には2,277床(目標の73%達成、定員率で全国6位)になった。さらに1992年制度化されたこれも準施設収容と見なされる療養型病床は1997年1月現在1,086床(全国6位)であり、更に増える見込みである。

 今後、一般病床から療養型病床への転換で(後者1床当たりの面積が前者より広くしなければならないことから)定員が減る上に、国は一般病院の入院期間をますます短縮する政策で、社会的入院の解消と在宅化への圧力を高めるであろう。

6.地域リハの視点から見た地方のリハ

 今まで述べてきたことを整理しつつ、地方で行われているリハを地域リハの視点から列挙すると次の7つになろう。

 1)遠隔地の施設「リハ」/都市部や辺地のリハ施設不足の代償: 

 従来から地方の温泉地にリハ病院が作られ、近年は地価高騰のための経済的理由で地方に「リハ」施設が作られ、遠隔都市住民に利用されてきた。これは地域リハの立場からは逆方向であろう。

 2)地方の都市型リハ:

 JR高知駅徒歩3分の近森リハ病院などが好例である。

 3)地方の総合的地域リハ:

 例えば新潟県大和町は医療・保健・福祉が一体化して地域リハに取り組み、住み慣れた家に帰し、町医療費節減にも成功している。

 4)縦割り(医療・保健・福祉)的「地域リハ」:

 医療機関、訪問看護、保健センター、福祉などを基盤とした、単独の地域活動。

 5)暗黙の地域リハ:

 和田によれば「田舎独特のおおらかな感覚の近所づきあい」により「たとえフラフラ外に徘徊して家に戻れなくなったときでも近所の人が連れて帰ってきてくれる」。

 6)「自立生活」型:

 脱家庭・脱施設をした重度障害者がボランティア等の支援を見つけながら地域で生活する型で、地方都市で萌芽的に見られる。

 7)辺地型生活リハ: 

 厳しい自然環境の離島・山村等の高齢者がよい地域連帯の中で、同年齢の都市部高齢者より逞しく生活している報告は多い。

 「生活=リハ」であるから、リハとはいえないかもしれない。前述の自助努力支援型施策として、急病時や冬季などの季節的対策、真の人生最終段階の施設ケア等を確実・迅速に保証する必要はあるが、型どおりの「リハ=機能訓練」は無意味といえよう。ただし、現代技術の活用は十分図られるべきであって、必ずしも古風に囚われる必要はない。富山県下の山田村は、小中学生から高齢者までコンピュータやインターネットに親しむなど、新しい山村生活を構築しつつある。

7.富山県の地域リハの現状

7―1.医療からの地域リハ:

 1984年、富山県における公的リハ中核機関として高志リハ病院が開設された。当院の主な機能は回復期(専門的)リハ医療である。主に公的な急性期病院から発症後平均171日で引き継ぎ、平均83日在院し、在院中から患者宅を訪問して家屋改造指導等を行い、退院後は、29%は当院外来通院するが、積極的に関係機関に紹介(サマリーを送付)して維持期リハへつなげている。

 開院以来、地域リハ部を設け、地域リハモデル事業、リハの研修(患者、家族、保健婦、看護婦、療法士学生、卒後医師、医学生)、1992年から訪問リハ、1995年から訪問看護などを行ってきた。当院研究開発部については後述する。

 その他の特記すべき富山県の地域リハ活動として、1987年から診療所ベースで地域リハに精を出している新湊市の矢野神経内科医院、谷野呉山病院等(精神科)の地域活動、1992年からの富山市訪問看護事業(1995年から利用者の年齢制限解除となり、ボランティア、ヘルパーと協力しながら全介助の一人暮らし脳性麻痺「自立生活」者の支援も行っている)、1993年富山日赤病院訪問看護の経験豊かな有志で私財を投げうって設立した「このゆびとーまれ」民営デイサービスセンター開設などがある。

7―2.保健からの地域リハ:

 1966年から小矢部保健所脳卒中機能訓練事業(後のリハ友の会の母体)開始、1984年に老人保健法機能訓練事業(県内24市町村で)開始、1979年から厚生省特定疾患研究班活動として県下全保健所で難病対策を開始(1991年には人工呼吸器装着中の在宅ALS患者を支援)、1993年より黒部保健所で脳卒中情報システムを軸にした地域ケア体制による「ねたきり」予防や住宅リフォーム事業等に成果を上げている。

 なお、富山県脳卒中情報システムは、脳卒中患者退院後の保健・福祉・医療サービスに役立てようとするもので、富山県では、1995年度で全県的に1,533人がコンピュータ登録され、全国的にも熱心な県に属するであろう。

7―3.福祉からの地域リハ:

 特記すべき事項として、1958年から全国的な制度化に先駆けて身体障害者相談員制度化、1985年から更生相談所主催で富山県地域リハ推進事業(以後、毎年全国地域リハ権威者の講演、リハ関係職員研修)開始、1990年魚津市特養「新川ヴィラ」に在宅介護支援センター併設(1995年までに県下36カ所に設置)、1995年に富山県介護実習・普及センター設置、1996年度ミドルステイ予算化される、などを挙げておく。

 富山県老人福祉費で在宅福祉の4年間の伸び(1996/1993)を見ると、ホームヘルパー1.0倍、デイサービス1.3倍、ショートステイ3.7倍となっている。全国レベルで見ると、1996年度100人当ホームヘルパー利用日数全国34位、同デイサービス26位、同ショートステイ22位と中程度であるが、県内地域差は大きく、ショートステイ利用日数全国2位の新湊市と県下最下位の八尾町では、45倍の開きがある。

 富山市予算で在宅福祉の4年間の伸び(1995/1992)を見ると、ホームヘルパー2.1倍、デイサービス2.3倍、ショートステイ1.2倍となっている。富山市は1996年10月より午前5時から午後10時までの巡回型ホームヘルパー派遣モデル事業を開始した。

7―4.障害者・高齢者住宅について:

 障害者住宅は現在、県営が4戸(月32,000円で満室)、市営が25戸、うち車椅子用は6戸で、月18,000~24,000円である。家賃は安いが、年収約270万円以上でないと入所資格が与えられないというバリアがある。高齢者向け住宅は富山市営が20戸(月24,000~30,000円、冬季6,000円増し)あり、近くのデイサービスセンターの生活援助員の支援を得られることになっている。

 個室化で知られる庄川ケアポートは、ボランティア本人・家族の入所優先権が与えられる。障害者・高齢者住宅は地域リハの基本であるが、何といっても戸数が少ないことが最大のバリアである。

7―5.福祉用具と地域リハ:

 福祉用具を活用した障害者・高齢者の日常生活活動の支援と、介護の負担軽減は地域リハ活動を支える一つの有効な手段として全国的にも期待されている。こうした機器の普及とその研究開発を促進するためには、①機器の適応と選択に関わる専門のコーディネーターの育成、②市販機器の公的、及び民間の供給システムの整備、③個別仕様の機器の開発/改良の実施機関の整備、及び④多様な機器の集約化と、その商品化プロセスのシステム化など、多くの課題が存在する。

 富山県においては、障害者・高齢者に直接対応する福祉用具の相談業務など、実際のサービスを担っているのは、市町村の福祉の窓口(例えば富山市では長寿福祉課)、保健所、一部の在宅介護支援センター、(県)介護実習普及センター、及び高岡市ふれあい福祉センター(デイケア・センター)、当院地域リハ部及び研究開発部等である。ごく少数のスタッフなどが経験に基づいて機器の相談に応じているのが実情である。国のレベルにおいても機器に関する専門家の育成はごく最近始まったものである。県においても、当院や、(県)介護実習普及センターの機能を拡充し、こうした専門家を育てていく必要があろう。県内に新たに設置されたバリアフリー住宅(1995年度、県土木部、2カ所)、ウエルフェアテクノハウス高岡(1995年度)、あるいは民間のモデル住宅などの展示機能を活用拡充し、住環境全体について実体験を踏まえた相談サービスへのシステム作りが求められる。

 福祉用具の供給システムについては、従前の日常生活用具の給付事業(1969年から開始)以外に、高齢者の介護機器などを含む多様な機器が必要となってきている。一例として、富山市において民間の寄付などによる無料貸出制度(富山市社会福祉協議会が運用)については1984年度から行っており、同上の機器でそれぞれ127台、32台の貸出が行われている。これらは、規模は小さいがリサイクルの問題と共に今後更に内容を検討し充実していく必要があろう。ごく近い将来導入されるであろう介護保険の問題もあるが、機器情報の提供や、安全性や使い易さについての評価などの公的に支援する必要性のある課題も多い。

 富山県においては、1996年度に富山県福祉機器研究開発・普及検討委員会が設置され、現状の把握と今後の課題について討議されている。個々の公的施設や民間の事業者が取り組んできたものを支援し、育てていく横断的な取り組みの方向性が出されることを切望する。

 次に個別機器の開発とその集約化のための事業については、県内において富山県高志リハ病院研究開発部が事業の一つとして取り組んでいる。さらに上記のウエルフェアテクノハウス高岡の設立を契機として、(県)工業技術センターや民間企業を含めた研究会が設立されて幾つかの福祉用具の研究・開発がスタートした。

 さて当院においては、福祉用具に関して脳卒中などの疾患が多いこともあり高齢障害者の運動機能回復訓練用具の研究開発を実施すると共に、数年前から在宅の日常生活活動を支援する用具の開発に取り組んできた。前者については電気刺激を利用した上肢の訓練機器、及び立位・歩行リハ訓練用具などがある。また後者については、個別機器の開発が主であるが、最近のものとして、例えばコンピュータ・電子機器の制御インターフェースの分野に属する機器について、肢体不自由者のための屋内電子機器操作システムの統合化を目指して、平成7年度にウエルフェアテクノハウス高岡に導入されたもの(ウエルフェアテクノハウスは厚生省・通産省共管、医療機器福祉機器研究所の事業)を紹介する(図参照)。当該分野の機器は、入力機器やその操作方法について、比較的多くのものがある。またEUなどでも電動車椅子のジョイスティックを利用して屋内の電子機器などを制御するシステムが利用され始めた。

 

図 屋内環境制御システムの構築
図 屋内環境制御システムの構築

 福祉用具の活用に関しては、利用者、その目的とする活動、機器による利用者の機能を拡大あるいは代替する支援技術、及びその状況・社会環境などを検討する必要がある(Cookら)。本システムは、日本リハ工学協会の期限付き専門委員会において3年ほど前から検討されてきた内容を当院研究開発部の山本らが中心になり導入させて頂いた。現在は上記の多入力スイッチコントローラを中心としたシステムが動作している。上肢障害者において、操作スイッチをどの程度速く正確に押せるか、さらに適切なスイッチの数、操作画面の階層構造などについて訓練の履歴管理が可能になっている。今後は操作インターフェース設計ツールやGUIの検討などを予定している。

 本システムは、在宅就労支援のための屋内環境制御システムの集約化をはかり、福祉機器の相談・サービス等に必要な情報について検討するのが主な目的である。

 福祉用具の研究・開発及び商品化のプロセスなどに関して、富山県においては、現在は幾つかの機能が点として存在しているのみで、それらがつなぎ合わされて、面を構成して行くにはかなりの時間が必要と考える。

8.おわりに

 以上、富山県のデータを用いながら「地方における地域リハ」について考察し、また福祉用具への取り組みについてやや詳細を述べた。

 富山県は1996年9月、福祉条例を制定した。全国的に見て地域リハ先進県とはいえないが、本格的地域リハへ向け確実に船出したといえよう。

文献 略

*富山県高志リハビリテーション病院


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1997年5月(第91号)8頁~14頁

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