用語の解説

地域包括ケア

　障害や加齢，疾病を起因として，生活に支援を要するようになったとしても，住み慣れた地域で，安心して尊厳あるその人らしい生活をできうる限り続けられるということは，誰もが望むことであろう。その実現のためにはその人が必要とする支援に対応し，さまざまなサービスを継続的・包括的に提供していくというのが地域包括ケアの理念である。
　日常生活に支障をきたす人への支援は，その人の状態や状況といった個別性によって大きく異なり，それぞれに多種多様なものである。また高齢者の場合は老化といった経時的な視点から見れば，入退院など生活の拠点が変わることによっても，対象者の心身の状況に変化がなくても必要とされる支援やその提供の方法にも変更が求められる。すなわち対象者の個別性に応じて柔軟に対応しながら，継続的にサービスを提供することが地域包 括ケアの理念には求められる。
　介護保険による介護サービスのみでは，要介護の高齢者の地域における生活全てを支えるのは難しい。従って，介護保険制度を中核に据え保健・福祉・医療における多種にわたる専門職が連携し，ボランティアや地域住民といったインフォーマルな地域のさまざまな資源を統合した支援計画を立案実施することが求められる。
　「地域包括ケア研究会報告書　今後の検討のための論点整理」（地域包括ケア研究会－平成20年度老人保健健康増進等事業－）においては，すでにリハビリテーションが重要視され，地域包括支援センターにリハビリテーションの専門職を配置することや，地域リハビリテーション広域支援センターと地域包括支援センターとが強い連携をとれる体制にすること等がこれからの課題として挙げられている。さらに同22年度の報告書においては，「リハビリテーションによって，高齢者の心身機能や日常生活におけるさまざまな活動の自立度をより高め，他の介護サービスと併せてケアする」とある。
　地域包括ケアの具現化により，医療サービスと介護サービスが適切に連携されて提供されれば，支援を要する人々の在宅での生活をターミナルケアに至るまで，支えることが可能になると考えられる。

地域包括支援センター

　地域包括支援センター（以下，センターと略）とは，2005年の介護保険法の改正に伴い，高齢者に対する介護予防の取り組みなどを中心にさまざまな支援を行うことを目的に創設されたものである。市町村または市町村から委託を受けた法人を設置主体とし，２つの中学校区に１カ所程度，人口で言えば２～３万人に１カ所設置される。
　センターは，地域住民の保健医療の向上および福祉の増進を包括的に支援することを目的とし，介護予防支援事業と包括的支援事業の２事業を担う。介護予防支援事業とは，指定介護予防支援事業所として，要支援者のためのケアマネジメントを実施するものである。
　包括的支援事業は次の４業務からなる。
(1)介護予防ケアマネジメント
　要支援１・２の認定を受けた人や要支援の状態になるおそれのある人に対して，介護予防ケアプランを作成し適切な介護予防サービスの利用をすすめ，高齢者の自立した生活を支援する。
(2)総合相談・支援
　介護に関する問題，保健・医療・福祉に関する問題など日頃の生活に必要なさまざまな相談を総合的に受け止めるとともに，必要な支援を実施する。
(3)権利侵害の予防・発見
　高齢者虐待の早期発見と適切な対応，高齢者の人権や財産を守るための権利擁護に関する支援を行う。
(4)包括的・継続的ケアマネジメント支援
　地域の関係機関，医療機関や介護支援専門員などと連携し，高齢者を支援するさまざまな関係者のネットワークづくりを実施する。
　これらの事業を果たすために，センターには保健師，社会福祉士，主任介護支援専門員といった専門職種が配置され，多職種連携により，住み慣れた地域で高齢者が，安心して尊厳ある生活を営めるように支援する役割，すなわち地域包括ケアの実現を担っている。
　また，センターには，どのようなサービスを利用してよいかわからない住民に対して，センターの１カ所で，相談からサービスの調整に至る機能を発揮する，ワンストップサービスの拠点として期待されている。

（野村和樹／大阪河﨑リハビリテーション大学講師）

主題・副題：リハビリテーション研究　第145号

掲載雑誌名：ノーマライゼーション・障害者の福祉増刊「リハビリテーション研究　第145号」

発行者・出版社：財団法人　日本障害者リハビリテーション協会

巻数・頁数：第40巻第3号（通巻145号）　48頁

発行月日：2010年12月1日

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財団法人　日本障害者リハビリテーション協会
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