用語の解説 特別支援教育コーディネーター 特別支援教育と生涯学習

用語の解説

特別支援教育コーディネーター

 特別支援教育コーディネーター(以下,コーディネーター)は,特別支援教育のコーディネーター的役割を担う教員のことで,学校における特別支援教育の推進のために,主に,校内委員会・校内研修の企画・運営,関係機関・学校との連絡・調整,保護者の相談窓口を担う役割がある。コーディネーターは,特別支援教育が学校教育法に位置づけられた平成19年4月に文部科学省から発出された「特別支援教育の推進について(通知)」に基づくもので,幼稚園,小学校,中学校,高等学校,中等教育学校及び特別支援学校の校長が指名している。平成25年度現在のコーディネーターの指名率は,幼稚園62%,小学校99%,中学校93%,高等学校83%であり,幼稚園・高等学校の体制整備が課題となっている。
 特別支援学校のコーディネーターは,校内の学級担任と医療・福祉関係機関との連絡調整をする役割,学校の教員の専門性や施設・設備を活かした地域における特別支援教育に関する教育相談をする役割,近隣の幼稚園,小・中学校,高等学校に対して,特別支援教育に関する助言を行うなどのセンター的機能を推進する役割がある。そのため,特別支援学校では,校内に地域支援部等の校務分掌を設け,コーディネーターを中心に複数の教員でこれらの業務を行なっている。
 幼稚園,小・中学校,高等学校のコーディネーターは,学校内での特別支援教育を組織的に取り組むために設置された校内委員会を推進する役割,保護者や関係機関に対する学校の窓口としての役割,学級担任と医療・福祉関係機関と連絡調整する役割,特別支援学校のセンター的機能を活用するための特別支援学校と連絡調整する役割などがある。
 コーディネーターの役割は多岐にわたるが,児童生徒の教育活動の各プロセスで,関わり合う人をつなぎ,それぞれが持っている知恵と力を引き出し,児童生徒への支援に結び付けている。

尾崎 祐三((独)国立特別支援教育総合研究所)

特別支援教育と生涯学習

 障害者権利条約第24条は,教育への権利保障について,あらゆる段階におけるインクルーシブな教育と生涯学習の保障を掲げている。文部科学省は権利条約の順守を具体化するために,2012年の中央教育審議会初等中等教育分科会の「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」に基づき施策を展開している。しかし,生涯学習(lifelong learning)については,施策を欠いているのが現状である。この最大の原因は,権利条約の締結に向けて改正された障害者基本法の教育条項である第16条において生涯学習の規定が欠けていること,また障害者基本計画においても施策化が図られていないことにある。生涯学習の保障は,スポーツ・文化・余暇活用等の生活支援条項やそれらに関係する施策で代替えされるものではない。生涯学習の理念と施策は1965年のユネスコにおけるポール・ラングランの生涯教育(lifelong education)の提唱に始まるが,現在では「生涯教育・生涯学習」と併記して使用され,またヨーロッパ諸国では「成人教育・継続教育」の用語を用い施策を展開している。
 例えば知的障害のある人の場合,特別支援学校の卒業で学びの過程と課程は終わるはずもなく,主体的で意欲的な学習活動は社会人になってますます確かなものになる。給料や工賃,あるいは満20歳からの年金を加えた所得で暮らす生活は,学校教育の継続では得られないかけがえのない経験であり,ライフキャリアを積むことを意味する。社会人としてのマナーの習得,金銭管理,男女交際と結婚,自然保護や環境問題等への必要な教養,キャリアアップ等の職業的課題への挑戦,こうした一つひとつの課題が生涯学習の必須なテーマである。したがって高等部教育の単なる時間的な延長では実現できない,独自に開発されたカリキュラムに基づく生涯学習が公的に保障される必要がある。青年学級,成年教室,卒業生対象の特別支援学校公開講座,大学公開講座等の拡充策が必要である。

松矢 勝宏(東京学芸大学名誉教授)


主題・副題:リハビリテーション研究 第162号

掲載雑誌名:ノーマライゼーション・障害者の福祉増刊「リハビリテーション研究 第162号」

発行者・出版社:公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数・頁数:第44巻第4号(通巻162号) 48頁

発行月日:2015年3月1日

文献に関する問い合わせ:
公益財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
電話:03-5273-0601 FAX:03-5273-1523

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