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はじめに

 2011年3月11日に発生した東日本大震災から5年が経過する。
 日本障害フォーラム(以下、JDF)は、この未曾有の震災を受けて、同3月18日に東日本大震災被災障害者総合支援本部を設置するとともに、宮城県、福島県、岩手県に被災地支援センターを順次開設し、各方面からの多大なご支援を得ながら、支援活動を続けてきた。
 この間、被災地の復興に向けた懸命な取り組みが行われ、都市機能や産業の面では一定の回復を遂げたと言えるが、震災で大きく損なわれることとなった人々の暮らしや、地域社会の機能にはなお深刻な影響が残されている。とりわけ津波による壊滅的な被害を受けた沿岸部や、原発を取り巻く地域においては、地域の再生に向けてなお長い道のりが予想される。
 住民全体の割合に比べて2倍もの死亡率があったと報じられる障害者については、震災発生時や直後はもとより、復興の過程においても、障害ゆえのさまざまな困難が続いている。そしてこれらの困難は、被災地における関係者の継続的な支援の取り組みを通じて初めて明らかとなる側面も多く、ともすれば都市の外面的な復興の陰に隠れ、報じられる機会も少ない。障害者が困難に直面したとき、地域の資源からどのような支援を得ることができるのか、また障害者を含む地域社会が、どのように住民を支援する力を再構築していけるのかが問われている。
 そのような中、障害分野においてもいくつかの特筆すべき出来事があった。一つは、2014年1月に、障害者の権利に関する条約が、日本で批准されたことである。同条約には、その基本的な考え方として、障害者の地域生活へのインクルージョンや、政策の作成・実施過程への障害者の参画が明記されるとともに、第11条では、自然災害等において障害者の保護と安全を確保することが規定されている。このことは防災に関わるあらゆる政策や実践においても基礎となるべきである。今一つは、2015年3月に、第3回国連防災世界会議が宮城県仙台市で開かれ、「仙台防災枠組2015-2030」が採択されたことである。この枠組には、従来に比べ障害者に関わる課題が明確に位置づけられたうえ、障害者を含む多様なステークホルダー(非政府組織を含む利害関係者)が主体的に政策策定・実施に参加し責任を共有することが述べられている。こうしたことを背景として、先般、国においても、広く各界各層の参加を得た「防災推進国民会議」が開催され、JDF代表も議員として参加したところであるが、今後とも新たな防災枠組が確実に実施されていくことを期待したい。
 JDFでは、支援活動に関する最初の報告書を2013年に公表した。このたび発行する本報告書は、それに続くものとして、主として2013年以降のJDFの取り組みに、関係団体から寄稿いただいた内容を併せて活動の記録とするとともに、将来に向けた課題提起を行うことを目的としている。
 JDFでは今後とも引き続き、障害者権利条約を基礎とした復興と防災について課題提起を続けるとともに、障害の有無に関わらず誰もが住みやすい社会の構築に向けて、取り組みを行っていく所存である。
 最後に、これまでJDFの被災障害者支援の活動に寄せられた、皆様からの多大なご理解とご支援に、改めて深く感謝を申しあげて、巻頭の言葉とする。

2016年3月
  日本障害フォーラム
    代表 松井 逸朗

日本身体障害者団体連合会
日本盲人会連合
全日本ろうあ連盟
日本障害者協議会
DPI日本会議
全国手をつなぐ育成会連合会
全国脊髄損傷者連合会
全国精神保健福祉会連合会
全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
全国社会福祉協議会
日本障害者リハビリテーション協会
全国「精神病」者集団
全国盲ろう者協会