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コラム JDF宮城関係者の「声」

東日本大震災時のJDF支援拠点の受け入れ経緯

(社福)共生福祉会
常務理事 市川 義直 (仙台市)

 発生直後、私が園長をしていた仙台ワークキャンパスでは、利用者への対応、生産活動の再開準備、既に津波被災で事業所を失った「まどか荒浜」の受け入れ、救援物資の搬送等で精神的にも余裕がない状況が続いていた。そんな折の3月18日、「はらから福祉会」の株木さんから、関係団体が救援活動に入るための拠点にできる場所を探しているが、市川さんの所で場所を提供できないか、スペースさえあれば「きどころ寝」でいいからとの電話があった。幸い当施設の建物に被害はなく、すぐに幹部職員と協議を行い、休止している作業室を短期間であれば貸せると返事をした。最終的にJDFとしての支援拠点とすることになり、3月20日藤井さんからよろしくお願いする旨と、3月22日に現地を下見したいとの電話をいただいた。
 3月22日にJDF一行が来仙され、拠点としてお貸しできる共生福祉会の施設2か所を下見し、仙台ワークキャンパスを3月28日から使用したいとの依頼を受けた。 早速、利用者・職員全員に対して、「こういう非常事態なので、自分たちは大きな被害もなく生活できる場所があるのだから、出来ることは支援しましょう」と説明し、全員が同じ思いで受け入れることにしたのである。ただ、利用者の日中活動(作業)もなるべく早く再開したいこともあり、貸与期間は1か月とし、継続が必要であれば次の場所として共生福祉会の萩の郷施設を予定した。
 3月30日にJDFみやぎ支援センターの開設式が行われ、その後は多くの支援員が交代で現地に入って活動されている様子を拝見し、感謝の気持ちで一杯だったことが思い起こされる。

震災5年目にあたって

NPO法人輝くなかまチャレンジド
地域活動支援センター こころ・さをり 施設長 熊井 睦子 (石巻市)

 あの日からもうすぐ5年が経過する。今も仮設の一画を拝借しての活動だが、うれしいことに(平成27年)秋から新施設の建設に着手。平成28年2月中旬に竣工の予定で、やっと自分たちの活動の場を得ることができ、「こころ」の仲間たちも新しい施設の誕生を心待ちにしている。今も仮設住宅に住んでいる仲間も、自分の家が出来るかのように楽しみにしてくれている。しかし、建設には大変な困難が待ち構えていた。宮城県の補助金と全国からの温かい支援金、自己資金を合わせて充分と計画した事業だったが、テレビ等で報道されているように、オリンピックの建設工事や復興の本格化による「資材費や人件費の高騰」で資金不足の窮地へと追い込まれてしまった。震災直後からずっと施設の活動の場を求め、模索してきてやっと得られたチャンスをここで断念することはどうしてもできないと、母体であるNPO法人の理事会とともに不足分の資金作りのご協力を多くの方々にお願いしている。新しい施設は福祉避難所の指定も受けた。「こころ」の仲間に安心して活動できる場を提供すること、それを目標に、厳しい現状の中、施設建設に関わっている私たちは、一丸となって目標に向かっている。

東日本大震災から5年・今も仮設で

(社福)洗心会
のぞみ福祉作業所 施設長 畠山 光浩 (南三陸町)

 東日本大震災から5年が経過した。
 壊滅的な被害を被った南三陸町は、いまだ仮設での復旧に留まっている。住宅の再建は3割程度が完了、 平成28年度、29年度に本格的な再建が行われる。のぞみ福祉作業所も仮設から仮設へ3度の移転をしながら活動を続けてきた。
 震災直後より国内はもとより国外からもご支援をいただき再開、復旧することができた。改めて厚く御礼を申しあげる。
 ご支援いただいた方々とは、 現在もお付き合いいただいている。その輪はどんどん広がり、再開、復旧に留まらず、新たな仕事作りにデザインやアートといった支援も加わり、「のぞみオリジナル商品」の開発と販売につながった。これによって作業収入を大幅に伸ばすことができ、工賃は震災前の約2倍になった。
 仮設住宅での生活、仮設作業所での活動と被災地で生活する不便や不自由な環境の中で、自分たちのアート作品やオリジナル商品が認められ、それが収入となり工賃として還元される。このことは大きな励みになっている。
 ただ、残念なことは、国の施策として、再開、復旧に事業所個々が直接使えるメニューが少なく、平成23年度に500万円を限度に災害復旧費用が認められただけである。(送迎車両2台と複写機等を購入)
 多くは、団体やNPO等へ委託事業として補助金が支出される形態になっている。
 事業所個々は、個人や企業、団体からの支援に支えられた。善意だけでは残念ながら支援を受ける側に「バラツキ」ができてしまう。
 福祉事業は、社会のセーフティネットとしても重要なものであり、災害時に被害が大きければ直接「命の危機」にさらされる。福祉避難所、福祉仮設住宅等の整備は当然として、被災事業所の再開、復旧に、また活動の中身を充実する(取り戻す)ことまで含めたメニューを選択できるように、国の施策として整備していただきたいと思う。
 のぞみ福祉作業所の再建は、震災から7年後の平成30年4月を目標にしている。あと2年で、まだ2年も。努力だけでは何ともならない現実である。
 ねばり強く踏ん張っていきたい。今後とも応援よろしくお願い申しあげる。

障害者福祉と地域福祉

宮城県サポートセンター支援事務所 所長 鈴木 守幸

 被災から5年近くを経て、被災地は災害公営住宅への移行期にある。 しかし、長い仮設、みなし仮設住宅等での避難生活に被災者の方々の疲弊感は深刻と言わざるを得ない。
 経済的な不安のみならず、公営住宅での生活に展望を持てない人たちへの丁寧な支援が今こそ重要に感じている。
 障害を抱える人たちの地域生活、これまでもノーマライゼーションの理念に基づいた支援のあり方が問われてきた。しかし、現実の地域社会では、多くの障害者とその家族は「孤立」しやすい状況から抜け出せてはいないのが現状である。自己決定、生活の継続性、エンパワメントの理念は、絵に描いた餅なのだろうか ?
 被災者支援にあって、被災地にできたサポートセンターの果たした役割に、私たちは注目している。宮城では、13市町に最大で60を超えるサポートセンターができ、多いときで800人を超える地元住民を登用してきた。日々の生活に寄り添いながら、当事者目線で被災者支援にあたる、仮設等の住民の方々に一番近い存在として、「お節介」という自助・互助の対人援助を行ってきた。住民の方々に常時寄り添えるのは専門職ではなく、住民であったということは間違いのない事実である。
 平時の地域社会も同様に、住民の抱える生活課題を捕捉して、地域社会で課題解決ができるのか、制度やサービスにつなぐ、あるいは専門職と協働していくという、サポートセンターの従事者の基本的な姿勢は欠かせない存在なのである。
障害者の方々の地域社会での生活、「生活のしづらさ」は、身近で日常的に必要な関わりを有する存在の欠如が大きく、その存在が専門職である必要性はないように思う。専門職の役割は、地域社会の持つ住民力(福祉力)を活かす黒子であるべきではないだろうか。
地域生活で生きがいをもって、社会的存在として自覚できる生活を支えることこそ、意味のある支援だろう。制度を超えて、障害者福祉のワーカーは、コミュニティーソーシャルワークを極めていただきたい。

NPO会議に、できるだけ顔を出して

JDF宮城
(社福)宮城県身体障害者福祉協会
会長 森 正義

 JDFはNPOとして、防災・復興のネットワークに積極的に参画していく必要性を痛感している。障害者支援においては、今後も、政府機関、国際機関、地方自治体、大学・研究機関、NGO、NPO、公益法人、企業、地域団体、ボランティア等が大きな役割を果たしていく。
 NPOの役割については、2015年3月、仙台で国連防災世界会議があり、産官学民の連携を改めて知らされた。JANNET(障害分野NGO連絡会)や設立予定のJVOAD(全国災害ボランティア支援団体ネットワーク)等とのネットワーク強化が大切である。NPO会議に、できるだけ顔を出して、障害者支援の必要性と状況を内外に情報発信し、理解と協力を得ることである。
 NPO等の活躍一例を紹介する。発災の翌日、外国から最初に成田に着いたドイツの医療人道NGO「フメディカ(humedica)」先遣隊は、2日後には帰国した。その理由は「政府は(原発事故被害の)事実を隠蔽し、過小評価している」ことだった。しかし、フメディカはその後、気仙沼の障害者施設復旧のために、多額の援助金を母国で調達した。ドイツ在住の町井聡氏というコーディネーターがボランティアで関わっており、在日宣教師団を通して、当時、気仙沼にいた私とつながったのである。その翌々日には、ドイツの救助チーム41名が到着した。ドイツで災害救助は、連邦技術支援庁(THW)の救助チーム、そのほとんどがボランティア救助員と聞く。
 米英では、ディズニーやグーグル、国連と同様、NPOのTFA(Teach For America)などが、人気の就職希望先と聞く。
 復興のためには、土木主導(高台移転、職住分離、多重防御)ではなく、被災者の生活再建のために、福祉、住宅、雇用、教育など、多様なNPO等と連携することである。
 JDFは、NPOであるゆえに、現場に寄り添いつつ、同時に、長期的・大局的な視点から、障害者支援の政策提言を発信していくことを期待したい。

(編集注:ここでは、NPOを非営利の活動を行う市民団体、という意味で使用している。特定非営利活動促進法に基づく法人の意ではない。)