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Ⅰ.障害別のニーズと配慮事項

4-2.難病

難病について──災害時の課題

難病はとても種類が多くすべてに共通した対応は困難ですが、災害時に困難が予想される呼吸器を使用しているケース、特に筋ジストロフィー患者や筋萎縮性側索硬化症等の呼吸器を使用している難病患者について述べます。

神経筋難病患者と呼吸器について

現在、国立病院機構146病院で診療を受けている患者が在宅で人工呼吸管理を受けている人は1,000名を超えています。多くの患者は呼吸予備能力が極めて乏しく肺への送気が途絶えると、短時間のうちに脳障害を来たし、そして生命を奪うことになります。そのために呼吸器を使用している在宅患者が災害時で、より的確に呼吸機能の維持が出来るように患者・家族を含む関係者に準備と対策をわかりやすくチェックリストやフローチャートを用いて説明する必要があります。(この内容は厚生労働省・神経疾患研究委託費「筋ジストロフィーの療養と自立支援のシステム構築に関する研究」神経筋難病災害支援ガイドラインを参考にしました。1))

(1)日ごろの備え

本人、家族や在宅支援者も使用中の呼吸器の機能と管理方法について指導をうけ、災害時の異常や故障を早期に判断し対応できるように、正常の駆動状態や使用点検方法を平常時から理解しておくことが必要です。

本人の備え(家庭での対応)

●本人、家族、在宅支援者は在宅での正しい呼吸管理全般について主治医の指導をうけ、定期的に訪問看護師等と一緒に学習しておきましょう。

●停電時の対応のため、手動による人工呼吸について必ず習得し定期的に確認しておきましょう。

●人工呼吸器及び関連機器について正しい管理・点検、特に電源確保について指導をうけておきましょう。
(非常用の外部バッテリーの他にポータブル発電機等、メーカー及び電力会社に連絡をして非常時の対応を準備する必要があります。)

●機器の故障を早期に判断できるように、正常の駆動状態、特に電源確保について指導を受けておきましょう。

●機器物品は地震倒壊・火災・水害等を想定して、安全な定位置に常設し、関係者全員が把握しておきましょう。(呼吸設定条件表、アンビューバッグ(用手人工呼吸)、バッテリー・充電器・インバータ・発電機、酸素関連、回路関係(人工鼻、フィルタ)、吸引機、パルスオキシメータ、聴診器、処置物品、常用薬、救急箱等リストを作成します。)

●災害時支援ネットワーク・緊急連絡網を作り、情報を共有しましょう。(患者・家族の氏名・電話番号、筋疾患拠点専門病院、家庭医、消防署、人工呼吸業者、電力会社、保健所、都道府県災害拠点病院、都道府県災害拠点本部、自主防災組織、ご近所の支援者、訪問介護ステーション、ケアマネージャ、訪問リハステーション、訪問介護事業所)

●緊急搬送先等で適切な医療や支援が確保できるよう、防災カード(非常時医療手帳)を準備しておきましよう。(次頁の図参照)

周囲の備え

 医療機関、および地域において、次のようなマニュアルや対応等の整備をしておくことが求められます。

1)医療機関における準備と対応

・防災管理規定(防災管理マニュアル、停電対応マニュアル)

・防災対策本部の設置

・人工呼吸器管理マニュアル

・医療用ガス配管の管理

・在宅患者情報管理

・緊急避難入院受け入れマニュアル

・地域の緊急支援協力と情報伝達

 

2)地域社会における準備と対応

・都道府県災害対策の確認

・地域災害支援ネットワークの整備

・災害支援ネットワーク連携マニュアル

(2)災害が起きたとき/避難しているとき

本人の対応(家庭での対応)

日ごろから確認しておいた、緊急時の行動手順(行動マニュアル)にそって対応しましょう。人工でも手動でも、一時的に呼吸管理が出来ていれば、あとは落ち着いて判断し行動に移すことができます。

なお、緊急避難入院の場合は人員、医療機器、医療物品が不足するため、可能な限り家族の同伴と、人工呼吸器、医療機器、医療物品を持参しましょう。

 

非常時医療手帳

図:神経筋難病災害支援ガイドライン1)より引用

周囲の対応

1)医療機関における緊急対策

・災害対策本部の設置が望まれます。設置までは当直医師が本部長を代行し指揮を取ります。外来入院患者の安全を優先し、自施設の災害状況、職員の被害状況を把握します。

・自施設に影響が無い場合は緊急入院を受け入れます。自施設に被害がある場合や入院の収容能力を超えた場合は、緊急避難入院受け入れが不可能となりますので、代替処置を検討し、受け入れ可能な他の医療機関、避難公共施設等に収容協力を要請します。

 

2)地域社会における緊急対策

上述のように、医療機関だけでは対応できない場合があり、地域においては、次のような対策が望まれます。

・地域ネットワークの立ち上げと確認

・ボランティア救援組織を立ち上げ

・電話等による連絡・相談支援を行う

 

参考文献

1)神経筋難病災害支援ガイドライン:厚生労働省・神経疾患研究委託費「筋ジストロフィーの療養と自立支援のシステム構築に関する研究」、平成19年3月、在宅療養分科会幹事 国立病院機構 熊本再春荘病院 今村 重洋

 

説明を受ける看護婦のイラスト