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「権利を実現する」:障害者権利条約(CRPD)の実施を強化するための締約国への勧告

我々、韓国障害フォーラム(KDF)、韓国障害者の親ネットワーク(KPNPD)および国際障害同盟(IDA)によって2015年11月23日・24日に韓国ソウルにて開催されたCRPDの実施に関する国際ワークショップの参加者は、インチョン戦略目標9を支持し、2030アジェンダならびに持続可能な開発目標(SDGs)が最近採択されたことに留意し、各国における障害のある人の権利の実現に関する課題と機会について、その経験と学びを共有するために集まった。

CRPDの審査プロセスを終えた7カ国を含む14カ国から参加した障害者団体(DPOs)の代表である我々は、かつて障害者権利委員会ならびにその他の条約体および普遍的・定期的レビュー(UPR)に直接参加し、これらのプロセスの結果出された勧告の国内レベルでの実施に向け、権利擁護活動に積極的に関与してきた。

我々は、CRPDの採択以降、DPOs、締約国、国連機関等が、障害のある人の権利を多くの異なるレベルで検討課題とすることに、ともに成功してきたことを認める。最近、さらにインクルーシブな2030アジェンダが採択されたことは、障害のある人がもはや目に見えない存在ではないこと、ならびに、インクルージョンの機運が生まれつつあることの証である。

しかし、この機運は、大多数の障害のある人、特により深刻な疎外に直面している人の、生活を改善する効果的な政策や予算配分には、まだ結びついていない。

障害者権利委員会による各国に対する審査と、同委員会が各国政府に対して行ったさまざまな勧告にかかわる我々の経験は、低・中・高所得国において、障害のある人に対する無差別と彼らのインクルージョンに向けたパラダイムシフトを、さらに積極的に進める必要があることを示唆している。この実施は、財源面だけでなく、デザイン面やソーシャルイノベーション、主流のシステムを変更する準備にも、大いにかかわってくる。優れた取り組みと教訓はどこからでも得られる。この点において、国連ESCAP内でのアジア太平洋地域における各国の交流と比較可能なデータの収集は、興味深い協力の例として、他の地域に希望を与えるはずである。

権利を実現するには、障害のある人のインクルージョンに捧げられる開発援助と資源を著しく増加させるとともに、各国政府、DPOsおよび重要なステークホルダーに対して、優れた取り組みをまとめ、政策を比較分析し、資料や研修のガイドラインを提供し、CRPDに対するコンプライアンスと障害インクルーシブな開発への理解を促進するために多くの分野における指導者と専門家を養成することにより、さらなる技術援助を提供する必要がある。

このような状況に基づき、我々は以下を勧告する。

1. 全政府の動員

  • 人権に基づくアプローチを採用する(福祉/医療モデルからの移行)。
  • CRPDの基準と(障害者に特化した施策と障害者に配慮した一般施策の)2本立てのアプローチを、国際協力と2030アジェンダ関連の計画を含む、政府のすべての省庁、計画等で主流化することを確保する。
  • 政府のすべての省庁内にさまざまなレベルのフォーカル・ポイント(中央連絡先)を設けるとともに、政府のすべての機関を網羅する調整のための仕組みも設ける。
  • CRPDの実施に関する行動計画の策定の際に、政府のすべての部門およびレベルと協議し、またそれらの参加を得、あらゆるレベル(国/連邦政府、地方、地域)における責任と義務を明らかにする。
  • 留保、解釈宣言を撤回する。
  • CRPD選択議定書を批准する。

2. DPOのリーダーシップと参加

  • DPOによる有意義な参加のためのインクルージョンと多様性(障害のある有権者、女性、子ども、高齢者、先住民、都市在住者、農村在住者、移民、難民、亡命希求者、国内避難民、LGBTI、貧困生活者、施設入所者など、あらゆる集団を含める)ならびに以下による積極的な参加と密接な協議を確保する。
    • 中央連絡先/調整のための仕組みを含む、政府のすべての機関 -第33条(1)
    • 独立した監視のための枠組み(独立した枠組みへの十分な資金提供を確保し、その任務を果たすための能力を備えさせる。)-第33条(2)
  • DPOのリーダーシップを尊重すること。親の会やアドボカシー団体など、その他のステークホルダーにも協議に参加してもらうべきである。
  • これはすべての勧告に適用される。

3. 法的調和

  • 一般および障害関連の法律と規則の改正を目的とし、CRPDの基準からの逸脱を明らかにするために、法律の公式な見直しを行う。
    • 差別的な規定と軽蔑的な用語を廃止する。
    • 障害のある人の完全なインクルージョンを可能にするために、CRPDの原則と基準を、条例や規則を含むすべての国内法に盛り込む。
    • 新たに採択された法律の定期的な監視と見直しを行う。

4. 実施のメカニズムと救済策

  • 個人がその権利を実際に行使し、発動して、苦情申し立ての仕組みを通じて効果的な救済策や是正策を利用できるよう、CRPDの義務の効果的な実施と監視の仕組みを確立するべく、実施にかかわる制度的な弱点を明らかにし、強化する。

5. 研修と意識向上

  • CRPDおよび人権に基づくアプローチに関する研修を、現在および将来の行政機関、公務員、裁判官等に対するすべての研修プログラムに盛り込む。
  • CRPDの審査プロセスの前に、CRPDに関する研修を実施する。
  • 公共/民間セクターおよびあらゆる教育段階にある子どもを含む一般大衆に向けて、研修を実施し意識向上を図る。
  • 研修および意識向上の計画と実施への、障害のある人の参加を確保する。
  • 障害のある人とその家族に対し、彼らの人権と、利用可能な資源、支援サービスおよび(差別など、人権侵害にかかる)紛争・解決の手続きに関する情報についての研修を実施し、意識向上を図る。
  • 障害者権利委員会の勧告を、政府のすべての部門に普及させる。

6. データ収集

  • 全国調査/国勢調査および行政によるデータ収集において、すべての部門にわたる系統的な障害種別データ収集を確実に実施する。
  • 政策決定のための情報提供と監視を目的とし、それらのデータを編集し、分析し、普及させる。
  • 進捗状況を監視するために、CRPDの実施に関する里程標と関連指標を設定する。
  • SDGsの監視において、全人口およびその他関連のあるターゲットと指標に(分類内訳として)障害を含めること。

7. 資源配分

  • 資源配分―CRPDに準拠した動員と、公的資源および国際開発金融などのその他の利用可能な資源の使用を確保する。
    • 障害のある人の参加とインクルージョンを可能にする政策および計画に充てる資源を、戦略的な方法で有意に増加させる。
    • CRPDに準拠しない政策や計画に充てられていた資金を再配分する。
    • すべての公的調達および公共投資においてアクセシビリティ基準を遵守するなど、公共支出にかかわる違反や障壁の創造がないことを確保する。
    • DPOsをCRPDの実施における有効なパートナーとするべく、資金調達と能力構築を支援する。
    • 開発協力基金および計画において、障害のある人を対象に含めることを確保する。
    • 開発協力基金の一部を、障害のある人の地位向上を直接支援すること充当する。

8. 障害のある人の権利をすべてのグローバルなプロセスにおいて主流化すること

  • 他のグローバルなプロセスおよび地域のプロセス―他の人権条約、UPR、さらにはSDGsの審査プロセスの開発に参加する際に、障害のある人の権利について必ず報告する。
  • これらのプロセスへのDPOの関与と参加を積極的に支援する。

9. 国際協力

  • 国際協力に貢献するとともに、CRPDの実施に関する能力の強化に向けた技術援助の要請を検討し、そのために他の加盟国、国連機関、DPOsおよびその他の関連ステークホルダーと協力する。
  • すべての国際協力事業を、障害のある人にとってインクルーシブかつアクセシブルなものとすることを確保する。
  • 2030アジェンダおよびSDGsの実施が、真にインクルーシブであることを確保する。
  • 国連合同エイズ計画(UNAIDS)ならびに国連障害者の権利実現へのパートナーシップの経験を教訓とし、以下を目的として、(CRPD第32条、37条および38条に従い)加盟国およびDPOsを支援するために、国連および国連各機関ならびに国際金融機関に対し、資源動員と技術援助力を大幅に増加させるよう求める。
    • 技術援助に向けて、さらに多くの資源を動員すること。
    • 各機関による技術支援の取り組みの調整を図ること。
    • インクルージョンの前提条件と、どの国連機関にも明確な権限が与えられていない、これまで軽視されてきた問題と集団に取り組むこと。
    • 技術援助のための資源を開発し、加盟国に全体的・分野横断的な技術援助を提供できるように、CRPDの専門家や障害インクルーシブな開発の専門家を活用すること。
    • SDGsおよび2030アジェンダを真にインクルーシブなものとすることに貢献すること。
    • CRPDに準拠した社会保障、経済的地位の向上、司法手続の利用、アクセシビリティなど、共通の課題への取り組みに関心のある国連機関、締約国、DPOs、NGOs、ドナー国および開発機関による、地域および地球規模のマルチステークホルダークラスターを結成すること。

国際開発に向けた投資を含む、経済面、制度面および人材面での投資をさらに大幅に増やさなければ、CRPDは実行されず、持続可能な開発目標への障害のある人のインクルージョンが促進されることもまずない。活動の範囲は非常に広い。我々は、障害のあるすべての人による、あらゆる人権の享受を確保するために、それぞれの国が利用可能なすべての資源を活用できるように、ともに創造性を発揮し、お互いから学び続け、支え合わなければならない。


原文はこちらから(英語)

掲載者注

本文書は、2015年12月23日および24日に韓国で行われた、「権利を実現する CRPD実施の強化に関する国際ワークショップ:インチョン戦略 目標9」で作成されたものである。