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障害のある人の教育の権利―障害者権利委員会が一般的討議の日を開催

障害者権利委員会

2015年4月15日

障害者権利委員会は、今日、障害のある人の教育の権利に関する一般的討議の日を開催した。国際連合の専門家と障害のある当事者、国および非政府機関の代表者と学者が、声明を発表し、インクルーシブな教育制度の実施における課題に関する対話に参加し、教育の権利に関する一般的意見の草案を提案した。

障害とアクセシビリティ担当国連事務総長特使のレニン・モレノ(Lenin Moreno)が開会の辞を述べ、障害者権利条約第24条を読み上げた。これは教育に関する条文である。インクルージョンを社会に不可欠な部分とし、障害のある子どもを障害のない子どもと同じ教室に通わせることから、インクルーシブな教育を始めなければならない。モレノ特使は、教育の権利に関する一般的意見が、社会全体にとって、今後大いに重要となると語った。

法律と政策におけるインクルーシブで質の高い教育制度に関するパネルディスカッションでは、障害のある生徒が障害を理由に学校から排除される対象となることはありえないとパネリストらが強調し、統合的な制度からインクルーシブな制度へと漸進的に移行するための転換計画の要素に関する指針を、一般的意見に含めるべきか否かを検討した。あるパネリストは、法律を通じて、学校側が入学する生徒を選考できないようにし、生徒が普通学校に通学する権利を行使できるようにする必要があると述べた。親のエンパワメントと、障害のある子どもは重荷だと考える、広く浸透している連鎖思考から親を解放するという重要なニーズが強調された。

障害を理由とした排除の禁止、合理的配慮およびインクルーシブな教育制度へのアクセスに関するパネルディスカッションでは、教育のライフサイクル全体に焦点を合わせる必要があるという点で、パネリストらの合意が得られた。教師は重要なロールモデルであり、生徒集団に求められる多様性は、教師集団にも反映されるべきであると、あるパネリストは語った。別のパネリストは、分離教育が分離雇用と労働市場における差別につながったのだとコメントした。国は2つの教育制度(分離教育および普通教育)を運営する余裕がないので、単一の優れたインクルーシブな制度を選ぶべきであり、インクルーシブな教育には政治的側面と文化的側面があることを認めなければならないという発言があった。

普通教育制度におけるインクルージョンの支援と、個別支援の方法に関するパネルディスカッションでは、パネリストらは、「私たちのことを私たち抜きに決めないで」という障害コミュニティのモットーを想起し、「インクルーシブな教育」を一般的意見の中で明確に定義しなければならないと述べた。そして、インクルーシブな教育が、すべての生徒にとって最善であるという点で合意した。ともに学ぶことを通じて、生徒は多様性を尊重し、社会資本を構築し、インクルーシブなコミュニティの基礎を築くことを教わるからである。第一線に立つ者のエンパワメント(教師の指導)の必要性と、日々、自分の障害に関連した困難な課題を乗り越えている、障害のある子どもの専門知識を活用する必要性が論じられた。

閉会の辞の中で、女性差別撤廃委員会の委員であるバーバラ・ベイリー(Barbara Bailey)は、一般的意見において、障害のある女性と少女が直面する暴力の危険を明確に取り上げ、障害のある人による有給の仕事への有意義な関与に向けた準備に注目し、固定概念を取り除く明快な方略を記載することを提案した。

子どもの権利委員会の委員であるジョージ・カルドナ(Jorge Cardona)は、閉会の辞の中で、国は、すべての子どもを同じにする制度から、すべての子どもが異なっていることを認める制度へと、教育制度を改革する義務を負うと語った。障害のある子どもが差別されており、仲間に入れてほしいと求めていることを、十分に承知している子どもたちの意見に、注意を向けることが重要なのである。また、カルドナは、障害のある人が代表として参加している委員会が1つしかないことは受け入れられないと述べた。国際連合は、システム全体を通じて、ジェンダーの視点だけでなく、障害のある人の視点も持たなければならない。

障害者権利委員会の委員長であるマリア・ソリダド・システルナス(Maria Soledad Cisternas)は、同委員会が、インクルーシブな教育が求められる根本的な原因とその必要性、法的および実務的側面、意識向上の必要性を検討した、障害のある人の教育の権利に関する一般的意見の草案作成を待ち望んできたと語った。そして、障害者権利条約は人権制度における1つの島ではなく、むしろ人権の枠組に統合された重要な一部分であると強調した。

パネリストとして、障害とアクセシビリティ担当国連事務総長特使、障害のある人の権利に関する特別報告者、教育の権利に関する特別報告者に加えて、国連人権高等弁務官事務所、障害者権利委員会、女性差別撤廃委員会、子どもの権利委員会、国連児童基金、国連教育科学文化機関、国際労働機関、インクルージョン・インターナショナル(国際育成会連盟)、国際障害同盟、教育・科学および文化のためのイベロアメリカ諸国機構、世界ろう連盟、アイルランド国立大学、ワールド・オブ・インクルージョン/障害者インターナショナル、南アフリカ盲人協会、アルゼンチン・アズール協会、イン・ワン・スクール、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、デンマーク障害者団体の代表が参加した。

以下の各国が、今日の対話で発言した。タイ、ノルウェー、エクアドル、メキシコ、アルゼンチン、パラグアイおよびタジキスタン。欧州評議会、世界精神医療ユーザー・サバイバー・ネットワーク、ダウン症インターナショナル、自閉症アライアンス、ダウン症オーストラリアの代表と、障害のある当事者も発言した。

今日の公開会合は、インターネットでライブ配信されたが、http://www.treatybodywebcast.orgで録画を視聴することができる。また、今日発表された声明の多くは、関連文書とともに、障害者権利委員会のウェブサイトから入手することができる。

障害者権利委員会の次の公開会合は、4月17日金曜日に開催を予定しており、この日に第13会期が終了する。障害者権利委員会の公開会合の要約は、国別報告の検討も含めて、こちらから入手できる。

(中略)

閉会の辞

女性差別撤廃委員会の委員であるバーバラ・ベイリーは、一般的意見において、教育機関で障害のある女性と少女が直面する暴力の危険を明確に取り上げ、加害者を起訴・処罰し、被害者を救済するための具体的な規定を設けることを提案した。一般的意見では、訓練を実際の雇用の機会に結び付ける方略を提案することにより、教育を通じて実現できる権利の領域と、障害のある人による有給の仕事への有意義な関与に向けた準備に、特に注意を払わなければならない。また、ベイリーは、社会的態度が、障害のある子どもを教育の場で疎外する強力な要因であることから、そのような固定概念を取り除くための明快な方略も、一般的意見に盛り込まなければならないと述べた。

子どもの権利委員会の委員であるジョージ・カルドナは、国がすべての子どもを同じにする制度から、すべての子どもが異なっていることを認める制度へと、教育制度のパラダイムシフトを推進する義務を負うと述べた。これは容易ではない。障害のある子どもが差別されており、仲間に入れてほしいと求めていることを、十分に承知している子どもたちの意見に、特に注意を向けることが重要だとカルドナは語った。最後にカルドナは、障害のある人が代表として参加している委員会が1つしかないことは受け入れられない、他の人権委員会の委員は誰も障害を持っていない、と述べた。国際連合は、インクルージョンの問題を分野横断的なものとすることを学ばなければならない。システム全体を通じて、ジェンダーの視点だけでなく、障害のある人の視点も存在しなければならないのだ。

障害者権利委員会の委員長であるマリア・ソリダド・システルナスは、第24条が同委員会の主要な優先課題の1つであると述べた。同委員会は、インクルーシブな教育が求められる根本的な原因とその必要性、法的および実務的側面、意識向上の必要性を検討した、障害のある人の教育の権利に関する一般的意見の草案作成を強く待ち望んできた。同委員会は、これらの問題について率直に意見を述べる権限は持っていたが、それらが分析を必要とする繊細な問題であることを十分に承知していたのである。同委員会は、今日得られたすべての意見および情報に加えて、82件の意見書を受領しており、前途に待ち受ける課題を痛感している。システルナスは、障害者権利条約は人権制度における1つの島ではなく、むしろ人権の枠組に統合された重要な一部分であると強調した。


原文

Committee on the Rights of Persons with Disabilities. "The Right to Education of Persons with Disabilities : Committee on Rights of Persons with Disabilities holds Day of General Discussion". United Nations Human Rights. 2015.4.15. http://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=15847&LangI%0AD=E (cited 2015-04-24)

「Opening Statements」の前までと「Concluding Remarks」よりあとの部分を訳出した。