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第3回国連防災世界会議
ワーキング・セッション
インクルーシブな災害リスク軽減における障害者の積極的な参加

コンセプトノート

1 なぜこの議題が重要なのか?

世界の人口の15%以上、約10億人が障害者である。健常者と比較すると、アクセスできない避難や応答、復興が原因で、障害者は災害や緊急事態そして紛争時に不釣り合いな被害を受け、また緊急時ではより高いリスクを受ける。入手したデータによると、多くの災害で障害者の人口の死亡率は、健常者と比べて2倍から4倍高い1)。さらに、2010年にハイチで起きた地震のように近年の災害では、地震によって約20万の生存者は、怪我が原因で長期に渡り障害を抱えて生活することが想定されると明らかになった2)。自然災害や人工災害による被害のリスクが高いにも関わらず、障害者の特別な問題やキャパシティはしばしば“可視化されず”、また災害リスク軽減プログラムに適切に含まれていない。これは、近年UNISDRが実施した世界の障害者の調査3)で、ほとんど障害者の避難ニーズについて意見を求められていないことが明らかになった。

2006年に採択された国連の障害者権利条約は、障害者を施しの対象から、権利の対象者へと見方を変換させ、障害者自身の意思決定を可能にする社会をもたらした。条約第11項では、すべての締約国に、緊急時に障害者を保護するための必要な措置を取るように義務付けている 。条約第3、9、21項は、アクセシビリティを促進し、第32項では開発のインクルージョンとレジリエンスの構築プロセスを提案している4)

一方で、過去10年間に渡り、世界の多くの場所において障害インクルーシブな災害リスク軽減(DRR: Disaster Risk Reduction)の進展が顕著になってきている。例えば、アジア太平洋地域の国やそのパートナーは、インチョン戦略を採択した。このインチョン戦略の目標7では、異なるレベルにおけるDRRの取組において障害者の参加は、災害の発生時のリスクと損失を軽減することができると認識している5)。2014年4月には、障害と災害リスク軽減に関するアジア太平洋会議が仙台で開かれ、障害者と障害者組織がDRR政策と戦略における立案、実施に関わることの重要性が仙台宣言でハイライトされた6)

さらには、アジア太平洋、アメリカ、アフリカ、欧州のDRR地域プラットフォームや2013年災害リスク軽減のグローバルプラットフォームでは、これらの成果文書に障害が含まれ、ポスト2015年防災枠組に向けての道が敷かれるようになった7)

2 どんなギャップを埋める必要があるのか?

国連は2015年以降の持続開発に関するグローバルな開発アジェンダを策定していくなか、現在、防災リスク軽減や気候行動協定、全てのインクルーシブなポスト2015年枠開発アジェンダの交渉が進められ、開発における障害インクルージョンを発展するための歴史的な好機をもたらしている。 国連総会は、国際的に同意された開発アジェンダが真の意味で達成することは、ミレニアム開発目標を含み、開発の取り組みにおけるすべての段階で障害者の人権、幸福や観点を盛り込むことなしには不可能であると、繰り返し述べている。

国際社会は、2013年に障害と開発に関するハイレベル会合(HLMDD)で、災害リスク軽減を含めたポスト2015開発枠組みにおいて障害者を巻き込んだコミットメントを再び明言した。HLMDDの成果文書では特に、加盟国に人道対応の全ての側面と段階における必要不可欠な要素として、継続的にインクルージョンを強化し、人道プログラムと対応において障害者のニーズに焦点を当て、アクセシビリティとリハビリテーションを含めた行動をとることを、防災を強化することで、促した8)

更には、国連障害者人権条約は、障害インクルーシブな災害リスク軽減を促進する重要な手段であり、レジリエントな社会の構築に向けた絶好な機会だ。この条約は、一般的なインフラの開発ではなく、リスク評価、防災計画、訓練、装機警報システム、模索救助システム、避難所、仮設住宅といったことも含めた特別な配慮を伴い、すべての人が恩恵を受けられるユニバーサルデザインの原則を盛り込んだインフラの開発の投資を求めている。これらの投資と手段は、コミュニティにいる全ての人々の生存の可能性とレジリエンスを高め、全体的に損害や損失を最小限に抑える。また、災害リスク軽減の全ての段階において障害者に対する合理的配慮9)の準備をも求めている10)

障害に関する国際規範的な枠組みの発展があるにも関わらず、政策と実践のギャップは存在し続けている。障害者は不可視化のままとされ、またミレニアム開発目標や兵庫行動枠組といった開発枠組の主流の参加からしばし取り残されている。 障害者とその家族は、コミュニティで最も貧しく、孤立し、見過ごされている人として立たされ続けている。

地域、国家、国際的な討論の場で、障害者は、DRRの立案に貢献できる権利者としてではなく、支援を求める者としてしばしば言われる。こうしたディベートを通して、アクティブなインクルージョンと災害リスク管理プログラムにおける立案・実施・モニタリングの障害者の参加を保障するための固定観念の変革が後に求められるだろう。

アクセシビリティとユニバーサルデザインの実施と関連して、多くの発展途上国では、建築基準法が依然としてアクセシビリティ規定に含まれていない。さらに、ユニバーサルデザインや合理的配慮の後押しをする国の規制枠組みは、大多数の発展途上国では、存在していない。総括すると、アクセシビリティは、インクルーシブでかつ持続的な開発とDRRに大いに貢献するので、環境に配慮したアクセシビリティの改善における、障害のインクルージョンや投資の重要性について一般の市民の意識をさらに高める必要がある。

3 どんな(新しい)コミットメントの達成が期待されるか?

世界はポスト2015年開発アジェンダに対して準備をしている。2013年9月23日に行われた障害と開発に関するハイレベル会合(HLMDD)では、ポスト2015国際開発枠組におけるインクルーシブな開発アジェンダを前進させるための成果文書を採択した。第3回国連防災世界会議は、兵庫行動枠組の実施を通して得られた進展に基づき、ポスト2015年防災枠組を採択する。交渉プロセスでは、もうすでにすべてにおいてインクルーシブなDRRアプローチに向けて強いコミットメントや意欲を示しており、とりわけ、このプロセスを通して、障害者を重要関係グループとして認識することで、障害者を含めた。

障害インクルーシブな防災枠組と高まるレジリエンスの実施の成功には、障害者団体とのパートナーシップを含めた多くの関係者のパートナーシップの多様な形態が求められるだろう。障害者が才能を持っていること、また、考慮されたとしてもコミュニティのレジリアンスを高められるまだ生かされていないリソースがあるが、コミュニティに障害者が快く貢献したいと思っていることを覚えておくことが重要である。

具体的にいえば、国がDRRを実施する上で、配慮する障害者の観点から重要な最初の予想がある。

a) すべての人の 積極的な貢献と意味のある参加

障害者とその代表組織はポスト2015年防災枠組では重要な関係グループとして見なされている。彼らは、この枠組みの実施に向けての役割を支えることに意欲的である。DRRとポスト2015年開発アジェンダとプロセスの立案や計画、実施、モニタリング、評価に参加することが可能であり、またそのことを切望している。この点に関する1つの側面として、アクセシビリティを改善し、物理的および情報のバリアを乗り越えることである。加えて、インクルーシブなリスク軽減戦略とその取り組みは、全ての個人、コミュニティ、および組織のキャパシティを高めることによって、脆弱性を軽減し、災害の影響と人命の損失を緩和し、リスクを軽減し、レジリエンスを高めるために実施されるであろう。

b) 公平さとインクルージョン

公平とインクルージョンはポスト2015年防災枠組において中心的な事項である。DRRと開発政策、実施、および過程への公平なアクセスは、全てのレジリエンス向上に寄与する。全てにおいてより強靭なレジリエンスは、個およびコミュニティの社会経済の安定の強化に根本的に関わっている。これは回り回って開発の持続性に貢献する。障害者は、総じて、実践的な問題解決スキルやキャパシティによる豊かな体験から恩恵を受けている。そして、障害者はよりインクルージョンで公平なポスト2015の達成に向けたこうしたスキルや経験を全ての人の恩恵に適応していくだろう。

c) 人中心、差別のない、権利に基づいて

ポスト2015年防災枠組や開発枠組において、体系的な枠組や政策は、生きた経験や問題、そして危険に陥ったことに対する解決をもとにして策定することが必要不可欠である。人中心のアプローチは差別がなく、国際人権文書や国連障害者人権条約に記されている指針との調整が求められるだろう。

d) 教育と情報アクセス

障害分野の関係者は、レジリエンスの開発に積極的に寄与するであろう情報や知識のアクセスは、均等でなく、不公平であると主張している。情報のアクセスは、災害時の安全や生存の保障において重要であるが、防災教育、奉仕活動、保障や早期警報システムは未だアクセシブルではない。この点において、情報の内容、フォーマットを重点的に取り組む必要があり、タイムリーに障害者に届けることにより、情報に基づいた参加や貢献ができる。実践的なアクセシブルの解決を情報アクセスに貢献することや、知識の強化を通して、障害者団体は、情報豊富なレジリエンスの構築に貢献することができる。障害者団体は良いリソースであり、彼らの助言は、全ての人にとって情報のアクセスの向上になるだろう。

e) 根拠に基づく情報、データ、障害者に基づいた知識の強化

他の政策課題と同様に、リスク管理は、十分な情報を得て、効果的な行動を取るための適切な情報と知識を有することに依拠する。詳細なデータは多様な障害者に合わせて集計すべきかもしれない。キャパシティ・ビルディングと体系化された調整は、多くの関係者とのパートナーシップを通して、障害と災害リスク軽減の両面において強化される必要がある。

さらに、国の政府は障害者や障害者団体の代表者と協同して、既存のコミットメントと新しいコミットメントを定義し、行うべきである。

  1. 障害インクルーシブなDRRが義務であり、国家レベルやコミュニティレベルでの実施を保障するために省庁間、各部局間、複数の部門間の取り組みに貢献すること。
  2. 災害リスク軽減の計画、プログラム、行動の開発とモニタリングに積極的に参画し、貢献するために障害者や障害者団体の代表者をエンパワーメントする。
  3. 災害リスク軽減における障害者の同等な参加のためのインフラの確立とサービス提供に関連するリスク軽減を保障するために、アクセシブルな、そしてユニバーサルデザインの原則を、支援技術(機器)の開発と合理的配慮との組み合わせの中で、促進、実施する。

コミュニティでの災害リスク軽減のあらゆる段階において、女性、子ども、高齢者を含めた全ての障害者をエンパワーメントするため、また、完全なる参加と貢献を実現するために、コミュニティに根付いたインクルーシブな災害リスク軽減のイニシアティブを強化すること。


1) UNESCAP, Rehabilitation International (RI) and the Nippon Foundation, "Sendai Statement to Promote Disability-inclusive Disaster Risk Reduction for Resilient, Inclusive and equitable Societies in Asia and the Pacific"
http://www.riglobal.org/sendai-statement-to-promote-disability-inclusive-disaster-risk-reduction-for-resilient-inclusive-and-equitable-societies-in-asia-and-the-pacific/
(24 April 2014).

2) United Nations,"Disability, Natural Disasters and Emergency Situations"
http://www.un.org/disabilities/default.asp?id=1546
viewed on 22 Dec. 2014

3) UNISDR:"UN global survey explains why so many people living with disabilities die in disasters" media report published on 13, Oct, 2013:
http://www.unisdr.org/archive/35032 viewed on 23 Nov, 2014

4) United Nations: Convention on Rights of Persons with Disabilities. New York. United Nations (2008).

5) UNESCAP (2012): Incheon Strategy "Make the right real for persons with disabilities in Asia and the Pacific" Bangkok, United Nations

6) UNESCAP, Rehabilitation International (RI) and the Nippon Foundation,"Sendai Statement to Promote Disability-inclusive Disaster Risk Reduction for Resilient, Inclusive and equitable Societies in Asia and the Pacific"
http://www.riglobal.org/sendai-statement-to-promote-disability-inclusive-disaster-risk-reduction-for-resilient-inclusive-and-equitable-societies-in-asia-and-the-pacific/
(24 April 2014).

7) Asia - Pacific 2012:http://www.unisdr.org/we/inform/publications/32111;
Global Platform for Disaster Risk Reduction 2013:http://www.preventionweb.net/globalplatform/2013/?pid:47&pil:1;
Africa Regional Platform 2014: http://www.unisdr.org/we/inform/events/35308;
Asia-Pacific 2014:http://6thamcdrr-thailand.net/6thamcdrr/Outcome-Documents;
Europe 2014: Milan Ministerial Outcome Document: http://www.preventionweb.net/files/38378_europeandrrministerialstatement.pdf
and European Regional Platform 2014: http://www.preventionweb.net/files/39715_madridouctomes.pdf

8) RES/A/68/3

9) CRPD, article 2: reasonable accommodation:
http://www.un.org/disabilities/convention/conventionfull.shtml

10) Asia Pacific meeting on Disaster Risk Reduction: Sendai Statement to Promote DIDRR for resilient, inclusive, and equitable Societies in the Asia Pacific: http://www.dinf.ne.jp/doc/english/resource/sendaioutcome140424en.html (viewed on 24 Dec 2014)

原文(英語)
http://www.wcdrr.org/uploads/WS25-Proactive-Participation-of-Persons-with-Disabilities-in-Inclusive-DRR-for-All-Final.docx