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大槌町 東梅政昭副町長会見記録

日時:2011年4月14日(木)15:00~15:20
場所:大槌町災害対策本部(大槌町中央公民館)

※大槌町役場は津波で全壊し、加藤宏暉町長以下33名の行政職員が犠牲もしくは行方不明になった(課長職7人を含む)。会見当時、高台にある大槌町中央公民館が災害対策本部となっており、本部内でインタビューを行った。同時に「目で聴くテレビ」のクルーの取材許可も得た。おそらく東梅副町長もこの部屋に泊っているのだろう。寝袋やカップラーメンが隅の方に置かれていた。

大槻町での会見の様子

藤井:あらためて今般の被災について、心からお見舞い申し上げます。3月11日のあの瞬間をどう迎えられましたか。

東梅:振動の強い地震でした。災害対策本部の立ち上げの準備中に津波が押し寄せてきました。その時、私は加藤町長と一緒にいました。打ち合わせに入る前に、このままでは危険だ避難しようということになりましたが、その直後に津波が入ってきてしまいました。

藤井:町の職員も32人が犠牲もしくは行方不明になったとうかがいましたが。

東梅:町長を含めると33人ということになります。災害対策本部は町長、副町長、教育長、そして主要課長が集まるものですから、その時いた課長7名が亡くなり、または未だに行方がわからない状況です。

大槻町の被災状況1

藤井:地震と津波から一カ月余ですが、現状はどうなっていますか。

東梅:町の機能は庁舎をはじめ病院、図書館、学校、警察関係等々のほぼ全てが壊滅状態です。当初、避難者は6000人を超えていましたが、現在は約2500人にまで減ってきています。厳しい避難所生活はまだまだ続きそうです。がれきの本格的な撤去はこれからで、町の機能が回復するまでにはまだ時間を要するように思います。地震と津波以降は、商店はすべて姿を消し、今もその状態が続いています。ですから、物を買うにも遠くに行くしかありません。一刻も早く仮設住宅を立てて、劣悪な集団避難生活から開放してあげたいと思っています。

藤井:すでに大槌町を去っていった人もいるのでしょうか。

東梅:正確にはこの町を見捨てて去って行く人がいるとは聞いていません。私の気持ちとしてはそう思いたくなく、仮に去っていった人があるとしても、一時的なことで帰ってきてくれると思います。大槌町は漁業の町です。漁業を省いて町の再生は考えられません。漁業の再建が人口の流出を防ぐ鍵になると思います。高台に安全なまちをつくり、そのうえで引き続き漁業を続けたい、すでにそんな声がたくさんあがっています。そんな声を大切にしたまちづくりをすれば、大槌町の将来はそれほど心配ないと思います。

大槻町の被災状況2

藤井:障害者や高齢者の被災状況はどうなっていますか。現時点でわかっていることがあればと思いますが。

東梅:申し訳ありませんが、まだしっかりとした数字等はつかんでいません。ただし、仮設住宅については、障害のある方々を優先して入ってもらおうと思います。

藤井:先ほどこの対策本部の近くにある、県などの協力で設置されている「障がい者相談支援センター」に顔を出してきました。4月5日に開設して、4月29日までに障害者の状況把握を行いたいとしていました。正確な実態把握を行ってほしいと思います。

東梅:大事なことであり、努力したいと思います。

藤井:これからは安否確認から復旧へと向かい、さらには復興への足場づくりの取り組みに入っていくのかと思いますが、当面考えられているスケジュールはいかがでしょうか。

大槻町の被災状況3

東梅:役場庁舎が壊滅状態ですので、現在、このすぐ下の方に仮庁舎を作っています(4月25日に完成)。まずは行政組織をしっかりと立て直し、行政サービス(諸証明の発行など)から始めたいと思います。将来のまちづくりに関しては、その基本となるコンセプトを住民と一緒に考え、それをベースに復興委員会を設置し、議会とも相談しながら、また一体となりながら復興を推進していきたいと思います。

藤井:岩手県沿岸の他の被災地帯同様に、壊滅状態となった漁業をいかに立て直すか、大槌町の場合もここが最大のポイントになろうかと思います。この経済面の立て直しと合わせて、まち全体の再生をどうしていくか。「障害者が住みやすいまちは、誰もが住みやすいまち」と言われていますが、できれば障害当事者が直に、あるいは障害や高齢者の分野がよくわかる人が参画して新生大槌をつくっていってほしいと思います。

東梅:もちろんそうしなければと思います。大槌町には「ワークフォローおおつち」(障害のある人のための作業所)があり、被災はしなかったはずです。今は避難所になっていますが、住民の障害問題についての理解が少しずつ広がっているところです。復興計画に際しましても、そういった方々のご意見を聞きいれて進めていく必要があると感じています。もちろんそういった事の専門の方にも委員会に参加していただくべきだと考えています。

藤井:この時点での国への要望などはいかがでしょうか。

東梅:国においても、また県においても、復興委員会を立ち上げて、グランドデザインなる基本的な指針を早く示してほしいと思います。菅総理などが、報道機関を通して「住居を高台に移す」などと言っていますが、そう簡単な話ではありません。何と言っても住民の間でのコンセンサスが必要であり、財産権の関係もでてきます。時間をかけなければならず、早く取り組むには国の早急な枠組みの提示が重要になります。そのうえで、緊急の課題として、がれきの撤去を急ぐこと、そして仮設住宅の資材を確保することです。また学校関係も深刻な状況です。小学校は5校中4校が使えません。中学校は2校中1校が使えません。仮校舎の開設も急がれます。なお、これらと並行して、雇用の確保についても具体策が求められます。水産加工業20社は全て流されました。これまでの従業員はみな路頭に迷っている状況です。早く企業が立ち直り、雇用環境が改善していくように政府が支援をして頂きたいですし、そうした上で障害者も健常者も安心してすめる、この町を離れないですむような総合的な支援を国には是非とも講じてほしいと思います。

藤井:加藤町長が亡くなられた後、本当に大変かと思います。たくさんの住民が亡くなり、また町長を含む職員も大勢失ったわけですが、最後に今後に向けてのキーワードを聞かせてもらえませんか。

東梅:町が定めた第8次町勢発展計画という平成27年までの基本構想というものがありますが、その中のキャッチフレーズが「小さくてもキラリと光るまちを作ろう」です。この「小さくてもキラリと光る」をキーワードとして、住民と一緒に頑張っていきたいと思います。

藤井:大槌は風光明美な所と聞いています。すばらしい大槌を取り戻すよう尽力してください。ありがとうございました。

大槻町の被災状況4