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障害者の権利条約と震災

障害者の権利委員会
第5会期
ジュネーブ、2011年4月11日―15日

長瀬修
国際障害同盟
全日本手をつなぐ育成会・国際育成会連盟

日本障害フォーラム国際委員
ダイアン・リッチラー(左)国際障害同盟会長
長瀬修(右)日本障害フォーラム国際委員


 議長、そして、この重要な障害者の権利委員会の委員の皆様、国際障害同盟(IDA)を代表して発言する機会を頂き、ありがとうございます。私は国際障害同盟に所属する国際育成会連盟の一組織である全日本手をつなぐ育成会の長瀬修と申します。

 3月11日に日本の東北地方を襲った震災について少しお話させて頂きます。今日はまさに、この災害からちょうど1カ月であり、多くの人が黙とうを捧げています。多くは日本人ですが、それ以外の国の方も含め、これまでに27000人以上の人が死亡もしくは行方不明となっています。

 日本の者として、この機会に世界中から私どもに寄せられた、すべてのお見舞いの言葉と支援に対して、心からの感謝の気持ちを表します。また、原子力発電所から漏れている放射性物質による環境破壊について、一個人として謝罪いたします。

 先週、私は福島の隣の宮城におり、日本障害フォーラムが設置した障害者の支援センターで支援員の活動をしておりました。日本障害フォーラムは、国際障害同盟の会員組織を多く含む、日本の障害組織の全国的ネットワークです。今、私たちの組織は全力を尽くしています。

 宮城で津波の被害を受けた沿岸部を目の当たりにした時、自分の目を疑いました。被災の状況は、想像を絶し、筆舌に尽くせません。しかし、そこで私は障害者、家族、支援者、そして、市民全般がこの試練に立ち向かおうとする姿に心打たれました。

 母親がいます。30年前の地震の際に、公立の保育所は閉まってしまいました。そのため、まだ幼かった知的障害の娘さんは家にいるしかありませんでした。今は通所施設を運営しているその母親は、必要としている人のために、自分の施設を開け続けるという決意を持っています。3月12日、まだ電気もガスもない時点で、その施設は開いていたのです。その上、家族や地域の人のための食料の提供までも行いました。

 全盲の男性がいます。元炭鉱夫で80代後半です。自宅にいた時は、家や近所は頭の中に入っていて、自ら動くことができました。しかし、まだ新しかった自宅は津波で失われてしまいました。学校に避難し、今は体育館にいます。頭の中の地図は役に立たなくなってしまい、お孫さんをはじめとする家族からの支援が必要になっています。そのため、トイレにあまり行かなくてすむよう、水分をできる限り摂らないように努めています。合理的配慮、地域での支援、そしてアクセシビリティ、このどれもが欠けてしまっています。

 これらはあくまで例に過ぎません。そして、勇気を示している人がいる反面、疎外されている人がいます。インクルージョンの事例があれば、排除と差別の事例があります。私たちの社会の強さと弱さ、その両面が示されています。この震災はインクルージョンと排除を何倍にもはっきりと露わにしています。

 この震災は、障害者の権利条約を現実のものにすることの大切さと、締約国とこの委員会が持つ重要な責任を改めて、私たちの心に刻みました。例えば、11条の危険のある状況と人道上の緊急事態、9条のアクセシビリティ、19条の自立した生活と地域社会へのインクルージョン、32条の国際協力だけでなく、障害者の権利条約全体を現実のものにしなければなりません。私たちは、その大切さを痛みを伴いながら知ることになりました。私たちが学んでいる教訓が、この委員会の任務に活かされることを願うのみです。

 最後になりますが、もう一度、国際社会からのすべての連帯のメッセージと支援に、日本からの心からの謝意を示します。そして、障害者の権利条約を実施するという大きな課題に、私たちの友人であり仲間である皆様とこれからも一緒に取り組ませていただきたいと思います。

 発言の機会を頂き、ありがとうございました。


英語原文:
CRPD and Earthquake statement
Committee on the Rights of Persons with Disabilities Fifth Session
Geneva, 11-15 April 2011
Nagase Osamu
International Disability Alliance, Inclusion Japan/International
http://www.dinf.ne.jp/doc/english/resource/press_release/CRPD_and_Earthquake_statement.html