音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

日本DAISYコンソーシアム2014年度総会:講演と意見交換の会

日時:2014年10月18日(土)13時~14時30分

場所:調布市教育会館

テーマ:デジタル教科書の固定レイアウトについて

講演者:JEPA 村田 真

スライド掲載:http://www.slideshare.net/JEPAslide/murata-fxl

slide1

(スライド1 テキスト)

村田
 まず、私はどんな人かというのを最初にお話ししておきます。私は皆さんと違って、アクセシビリティの専門家ではありません。聞きかじり程度です。偉そうな顔をして教育に関わっていますけど、教育の専門家でもありません。実は家内は英語の先生をしていまして、今日もデジタル教育なんかいかに役に立たないか、1時間ぐらい説教されました。私はXMLに基づく、文書フォーマットの標準化の専門家です。今、特に皆さんが興味をお持ちのところでいうと、EPUBおよびEDUPUBの制定に関与しています。特にIDPFでAdvanced Hybrid Layouts WGの共同議長をしています。この話は後で触れます。

slide2

(スライド2 テキスト)

 それから、やはり皆さん、非常にご興味をお持ちだろうと思う、文部科学省の生涯学習政策局情報教育課の事業である、「デジタル教材等の標準化」、それの親委員会の委員を務めています。

 

slide3

(スライド3 テキスト)

私も標準化に関わってから30年ぐらいたつんですけれど、最初にやってた80年代ぐらい、Open Document Architectureというものがありました。当時、この頃はアクセシビリティなんていう話は全く聞きませんでした。90年ぐらいになって、XMLが90年代末、それから21世紀になってODFやOOXML、こういうものができました。XMLは基本的に、一番ローレベルなフォーマットですけど、OOXMLというのは要するに、マイクロソフトがオフィス文書で使っているものです。ODFがそれに対抗するフォーマットです。この頃になるとアクセシビリティという話を、必ず聞くようになりました。しかし、話は聞くようにはなりましたけど、はっきり言ってアリバイ程度です。アクセシビリティが無視されてるわけじゃないけど、一番重要な話題かというとそうじゃないです。
 それで、EPUBですね。ここで二つの一体化があります。EPUBがWebと出版の一体化で、EDUPUBがWebと教育の一体化です。Web技術を出版に使おうというのが、簡単に言うとEPUBで、さらに、教育用に使おうというのがEDUPUBです。この辺になってくるとアクセシビリティが極めて重要ということになります。今までのOOXMLの頃までと比べると、大体アクセシビリティという言葉を聞くのが10倍ぐらい増えました。OOXMLぐらいまでは、アクセシビリティはやっていますというのがテーブルマナーみたいな感じで、EPUBやEDUPUBぐらいは、アクセシビリティはやってませんというと犯罪者扱い、大体そういうふうになってきます。

slide4

(スライド4 テキスト)

 EPUB3のアクセシビリティですけど、皆さんもうご存じだと思いますが、IDPFとDAISYが共同してつくりました。というか、アクセシビリティ関係者が作ったと言っていいと思います。DAISYのプレジデントであったジョージ・カーシャーがIDPFに来ていますし、DAISYのCTOであるマーカス・ギリングがIDPFに行ってCTOを務めて、それで電話会議の議長もして、スペックも大幅に書いているわけですね。
 その他にマット・ガリッシュとか、EPUBを構成する主要のうち、ほとんどはアクセシビリティの関係者が書いていると言っていいかもしれません。

河村
 村田さん、ジョージ・カーシャーはDAISYの事務総長で、プレジデントは私でした。

村田
  すみません。今は?

河村
 今はスティーブン・キングがプレジデントで、ジョージ・カーシャーは相変わらずセクレタリー・ジェネラルです。IDPFでは、ジョージはプレジデントです。

村田
 はい、すみません。そういう意味で、うがった見方をすると、普通の人のための電子書籍をボランティアが、アクセシビリティたちが汗を流しながらつくっていて、企業の金もうけのためにアクセシビリティの人が頑張ってるみたいな、うがった見方をするとそういうことも言えます。でも、逆の言い方をすると、これはDAISYの人たちの悲願でして、つまり普通のものがアクセシブルにならないといけない、箱庭でアクセシブルな世界ができてもしてもしようがないと。最初から全部アクセシブルなものができないと、本当にはアクセシビリティは達成できない。そういう覚悟の元に、普通のものをアクセシブルにするための工数を、大幅に投入したわけですね。今でも、例えばepubcheckの実装なんかも、DAISYの人がやってますよね。マーカス・ギリングはもちろん関わってますけど、その他にもまだ関わってるのはやっぱり、DAISYのプログラマーです。恐らく相当のDAISY関係の予算がEPUBに投入されてますよね。今でも。
 それで、EPUBさんが皆さんに現時点ですごく役に立ってるかというと、残念ながらまだそうは言えないんだと理解しております。つまり、EPUB3のアクセシブルな仕様は一応できたけれど、まだ実装は残念ながら追い付いていない。それは、アクセシビリティだけじゃなくて、残念ながら、普通の出版においてもまだEPUB3の実装という意味では、思った以上に時間がかかっているというのが現状だと思います。そういう意味で、まだ1年か2年ぐらいかかるんじゃないかなと、残念ながら思います。そうは言いつつ、EPUB3のフルセットを実装しなさいというふうに、アメリカの出版社たちのAssociation of American Publishersですか。それもベンダーに圧力をかけていますし、そのためのテストとか、いろいろやってますから、徐々にEPUB3の完全な実装が徐々に波及していって、その中でアクセシビリティも入ってくると思います。もうしばらくお待ちください。
 では、ここから教育の話に移ります。EPUB3が一通り終わって、文芸書なんかに関しては、あれで恐らく世界中のニーズが相当カバーできているはずです。足りない部分もないとは言いませんけれど、相当できてるんですね。雑誌のところはまだ足りませんし、マンガのところも足りないという意見もあるんですけれど、文芸書なんかに関しては、まあ足りてます。
 じゃあ、その後でIDPFとしては何をするんだろうと。そこで出てきたのが教育なんですね。恐らく、DAISYの関係者は当然、教育と言ったと思います。IDPFとしてもやっぱり、教育というのは魅力的なマーケットではあるんですね。教育関係のいろんな会社がIDPFに入ってくれるんじゃないかと。

slide5

(スライド5 テキスト)

 これからは電子教科書とか、教材とか、テストとか、そういうものをいろいろ、EPUBを拡張してやっていこうじゃないかと、そういう動きがIDPFにあります。IDPFだけじゃなくて日本にもありますし、ヨーロッパにもありますし、アメリカにもありますし、韓国にもありますし、いろんなところにあります。

slide6

(スライド6 テキスト)

 きょうの話の本題はこの辺です。まずEDUPUBというのがIDPFおよびIMS Global Learning ConsortiumおよびW3C、その三つの団体が進めているアライアンスです。この三つの団体が緩やかに結合してお互いに調整を取りながら、それぞれ標準化を進めましょうと。実装も進めましょう、そういう動きです。全体のリーダーはマーカス・ギリングです。やはりDAISYの人ですね。その他にマット・ガリッシュはいろんなスペックでリーダーを務めてます。今まで何回もこのEDUPUBに関しては会議が開かれてます。確か4回、アメリカで2回、オスロで1回、先日は東京で1回、全部で4回です。
 私が出たのは、最初の1回目、2回目と4回目なんですけど、1回目、2回目は非常にアクセシビリティが重要視されましたね。ワイリーなどの商業出版社が、アクセシビリティと必ず言います。どこへ行ってもアクセシビリティという言葉を口にしない人が居ない、そういう状況です。ただ、このEDUPUB、アメリカの会議に2回出て思ったのは、高等教育寄りであると。現時点ではは主に参加してるのが、ピアソンとかオライリーですから、主に大学とか高校が中心であって、小中等教育はそれほどメインじゃないんですね。残念ながら。やってないかといったら、もちろん対象にするとは言いますけれど、実際にそこで活動してるキープレーヤーが小中等教育に重きを置いている人かというと、そうではないです。なので、ついつい高等教育優先の傾向はあります。

slide7

(スライド7 テキスト)

 これはEDUPUB Tokyo、つい先日日本で開かれたときのビューマップ、IDPFのディレクターですけど、エグゼグティブ・ディレクターかな、彼の資料から持ってきたものです。EDUPUBを構成する部品の中で、Structured Profile of HTML5、Package-level metadata、EDU structural semantics vocabulary、Discrete Entitles、Widgets、Annotations、Multiple Renditions、Assessments、Outcomes services、Analytics services、Open Source PoC based Readium JS。こういう幾つかのものがあって、それぞれみんな、ある程度進行してます。それは必ずしも教科書だけじゃなくて、例えば、テストであったり、テスト結果の分析であったり、対話的に動くプログラムであったり、いろんなものが入ってます、この中には。アノテーションも入ってます。今日はただ、これを全部説明するつもりはないです。今日はこの中でおよび教科書に関係することだけお話しします。

slide8

(スライド8 テキスト)

 

EDUPUBの話をもう少し詳しくする前に、日本での動きですね。日本では文科省の事業として、[デジタル教材等の標準化]というのがあります。標準化といってますけど、実際問題として国際規格をつくろうとか、もしくはJISをつくろうとか、そういう頭は一切、文科省にはないです。
 標準化という言葉を使ってるから、標準化かなと私は思ったんですけど、全然標準化という頭はないです。これは調達仕様であり、検定基準、その辺が恐らく最終的な落としどころなんでしょう。標準じゃないです。その中に幾つかの活動があるんですけど、つくられている仕様の一つにデジタル教科書、コンテンツ標準仕様というものがあります。これ、生涯学習局ですので、実際に学校の教科書を担当している局じゃないので、最終的にはどうなるか分かりませんけれど、もしうまくいけばこれがそのままデジタル教科書の検定基準なり、調達仕様になるのかな。それは恐らく、そういう予定でいると思います。
 そういう意味では、これは決してどうなってもいい、放っといていいというものではないという気がします。つまり、ある人にとっては強制力を持つんじゃないかと思います。

河村
 ちょっとジャンプインしていいですか。

村田
 はい、どうぞ。

河村
 この生涯学習局というのは、社会教育と図書館とかですね、公民館とか、それから大学図書館も管轄してますね、生涯学習政策局。だから、大学関係の教材というふうに言えば、そこが当たるのかもしれません。すみません、ジャンプインして。

村田
 今のところここで対象としてるのは、どう見ても小、中ぐらいで、高校ぐらいまでがやっとです。参加してる会社ですが、教科書会社は皆さん、入ってますよね。光村さんなんかも、小学校のものですね。

 それで、アクセシビリティはどうかというと、アクセシビリティ関係の委員は居ません。ここにアクセシビリティの専門家の方がいっぱいいらっしゃいますけど、この事業にはアクセシビリティの関係者は居ないと、私は考えています。
 アクセシビリティという話が仕様書とかに出てくるかというと、ほとんど出てきません。そういう意味では、先ほど私、EPUBやEDUPUBではアクセシビリティをやらなかったら犯罪だと言いましたけど、日本だけはまだ、20世紀かなという感じです。
 日本では先ほど言いましたように、小中等教育の教科書というのは重要視されます。EDUPUBは高等教育のほうがむしろ重視されてるんですね。
 日本では、小中等教育の教科書に固定レイアウトを押す声が非常に強いです。つまりリフローじゃなくてあらかじめページがもう切られている。1ページ目にはこれが表示されて、2ページ目にはこれが表示される。内容が決まっている。文字を大きく変えたりして、1ページに入る字数を変えたりなんかはできないと。そういう固定レイアウトです。
 初中等教育のための固定レイアウトのことについて、1回ちゃんと話し合いをしておこうと思いまして、EDUPUB Tokyoでパネルディスカッションをやったんですね。ここで参加した方が2人ほどいらっしゃいますけど、その節はありがとうございました。

slide10

(スライド10 テキスト)

  そのときに、教科書会社の方がおっしゃった理由は幾つかあります。固定レイアウトの理由は。一つは、学習効果を最大にするために工夫を凝らしてきたレイアウトだと。それは時系列の変化も併せて1枚の見開きの中に納める工夫であったり、木の形をした詩であったり、いろんなものがありました。それをそのまま再現したいという要求は強いです。
 もうひとつは、紙との教科書の共存ですね。つまり、明後日ぐらいからぱっとスイッチを切り替えるように、全部がデジタルになるわけではない。一つの教室の中に紙とデジタルが混在する。これは恐らくそうでしょう。そうなったときに、先生が3ページと言って、生徒が4ページを見たら困ると。だったらみんな同じようにするしかないだろう。だったら、固定レイアウトだろう。
 それから、もうひとつは、現在の教科書を作成するためのフローがInDesignなどのツールが中心になっていて、当然ページレイアウトを最初から重要視しています。作成されるものは固定レイアウトになります。リフローのレイアウトだと、ルビをはじめとする日本語組版への不満、あと、フォントへの不満が上げられました。
 こういうふうに、固定レイアウトが非常に重要だとおっしゃる方が、教科書会社の方に多いです。そこにいらっしゃるお二人もそうです。
 全く別の意見もいろいろありまして、教育関係者の中でも固定レイアウトはむしろ捨てるべき恥部であるみたいなことを言う人も居ます。
 その他、もちろん技術者の中には固定レイアウトは時代遅れであって、日本だけがおかしいと、そういうふうに言う人も居ます。フィリピンの人もパネルディスカッションのときには抑えてましたけど、リフローのほうがいいんだというふうに別の時には力説してました。
 しかし、私の感覚からすると、この固定レイアウトというのはほとんど押しとどめようがないことだと思ってます。これに書いたのは、砂の城があって、それを大波から守ろうとしているという図です。固定レイアウトが最初、主流になるのは当然のことだと思ってます。
 例え、ここに居る人が皆さん全員がリフローにしようと決心しても、まあ変わらないと思います。そして、ただリフローにするだけで、学習効果は最大になるのかというと、そんなに簡単には絶対言えないと思います。それで、固定レイアウトはせざるを得ない。そうなったときにどうなるかが問題なんですね。
 つい先日、先ほどのデジタル教材の標準化、2年目の第2回の、親委員会の会合が開かれました。その中で、仕様案が出てきたんですね。

slide11

(スライド11 テキスト)

 固定レイアウトに関しては三つやり方があります。まず一つ目は、画像による固定レイアウトです。1ページ完全にビットマップです。それを単にくるむためだけにFVGとかSVが入りますけど、文字は全てビットマップの中です。
 あとはせいぜい動画が入るんですね。健常者からだと見た目はいいかもしれないけど、アクセシビリティ的には最悪です。あと、正確に言うと、そういうビットマップの固定レイアウトからリンクされる断片的なリフローというのがあります。そういう場合はいっぱい断片的なリフローができます。
 ただ、それは、濱田さんのせりふによると、本をくださいという人に、1ページ、1ページ破いて渡してるようなものだと思います。全体像が見えない。3章に次行こうと思っても、どこか分からない。当然そういうものです。

slide12

(スライド12 テキスト)

 もうひとつの案は、SVGによる固定レイアウトです。SVGは当然テキストも扱えるわけですし、グラフィックスも扱えます。画像も入ります。1ページが一つのSVGグラフィックスです。ただ、普通にやると、SVGのテキストだと段落がなくなっていって、1行ごとにそれぞれ別に分割されてしまいます。読み上げなんかしようと思ったときは最悪で、ルビなんかただのテキストになっています。テキストエリアを使って自動改行できるようにするって話もありますけど、残念ながら実装はまだまだです。そして、恐らくいろんな実装が同じように改行するようには、なかなかならないです。その他に、フォント埋め込みなんかの問題もあるります。結局、アクセシビリティという意味では、ビットマップの固定レイアウトとあんまり変わらないんですね。テキストがあるとはいえども、1行ごとに別の文字列になってるので、読み上げなんかには最悪です。
 あと、SVGグラフィックスからリンクされる断片的なリフローというのがあります。要するに、SVGの中ではテキストが各行ごとに分かれているけれど、それを1個まとめたhtmlファイルを別に作るということはできます。ただし、そうなっていても、先ほどの濱田さんの指摘はやっぱり当たっていて、本がほしいと言ってる人に、紙全部破ってあげてる、そういうものです。

slide13

(スライド13 テキスト)

 もうひとつは、HTMLとCSSによる固定レイアウトです。これは、段落はちゃんとHTMLのPタグになっていて、読み上げにも使いますと。アクセシビリティはありますと。CSSで固定レイアウトのコントロールをします。
 これは確かにできれば、固定レイアウトする方法の中では一番きれいといえばきれいです。ただし、この方法では、ちょっと実装が変わるとレイアウトが乱れるとか、フォントが変わるとやっぱりレイアウトが乱れるとか、別のプラットフォームを持ってくると表示が変わるとか、いろいろ問題があります。私は、どのレンダリングエンジンで表示するかに応じて別のHTMLとCSSを出力をするというツールを見たことがあります。つまり、汎用のものできれいなレイアウトがいろんな環境で再現できるかというと、再現できない。それが現実です。
 そういう意味で、現時点のデジタル教科書の、文科省で出ている仕様案。それは、アクセシビリティは極めてお寒いものだと私は思ってます。大体、あそこの親委員会で、行って何か文句を言う人は私だけなんですね。皆さん、やっぱり、会社を代表して来ている方なんていうのは、いろいろ意見があっても簡単に発言はできない。私は今、JEPAという団体の名前で出ているわけですけど、JEPAは別に文科省で嫌われたって、それでお金がなくなることはないだろうなと。
 誰かがめちゃくちゃ言ったほうがいいかなと思って、私がめちゃくちゃ言ってるんですけど。前々回のとき私がめちゃくちゃ言ったのは、この事業は報告書が公開されてないんですね、去年1年間やって。何をやっているかというのは外部の方には全然どうしたのか分からないですし、他の教科書会社、教材会社でも分かりません。さらに言うと、私は委員なんですけど報告書をもらえないんですね。それは、私だけ嫌われててもらえないんじゃなくて、他のどの委員ももらえないんですね。
 委員会の席で見て、見終わったらそのまま、そこに置いてお帰りください。何かのとき、私は食い下がったんですけど。それに対する返答としては、一人歩きしちゃうから。一人歩きして何が困るのか、もう1回聞いてみたんですけど、方向が変わってしまったから。
 去年、実はリフローだけやってたんですね、その文科省事業は。私は去年の時点では、固定レイアウトはやらないと困るでしょうと言ってたんですけど、リフローしかやってなかったんです。そうすると、リフローだけやって、それで、今私の理解では日本の教科書会社や、いろんな会社がされてるのは、みんな固定レイアウトです。
 そういう意味で、リフローを続けると教科書会社がつくってるものと文科省事業でやってるものが全く違ったままになってしまうので、今年方向転換したんだと思います。今年からは固定レイアウトになりました。去年のやつはなかったことにしたいから、報告書を出さないんだと思ってます。固定レイアウトは今も言ったように、現在のアクセシビリティがほぼ全くない。それじゃ駄目だろうと前回めちゃくちゃかみつきまして、怒ったんですけど。
 この事業を担当してる事務局は電通さんなんですけど、今年の後半ぐらいからだんだん公開はされるんじゃないかと思います。今の時点では教科書会社でさえもほとんどの教科書会社は見てないですから。皆さんの、恐らく目に届くところに来ると思います。そしたら、場合によってはコメントとかをお送りください。私もいろいろ言ってますけれど、私だけが言ってもあれですので。親委員会に1人だけうるさい委員が居るというふうに思われてるんだと思います。

slide14

(スライド14 テキスト)

 そう愚痴っててもしようがないので何とかしないといけない。そう思って、今年の3月に、ここに10名ぐらいの連名でIDPFに、EDUPUBで固定レイアウトに関して、こういうふうにしましょうという提案書を出したんですね。ここに今、会場にいらっしゃる方たちに、私以外に、濱田さんと河村さんと桑野さんと、三瓶さんと下川さんの名前が入ってますね。
 これ、簡単に言っちゃいますと、アクセシビリティがない固定レイアウトをやるときには、アクセシブルなリフローも一緒に入れましょう。簡単に言うとそういうものです。こういう提案を出しておこうと思って、3月の時点で提案書をつくって出しておきました。URLはここに書いてありますけど、それ以外にも探せば、すぐGoogleで見つかると思います。

slide15

(スライド15 テキスト)

 先ほど、一緒に入れなさいと言いましたけど、EPUBというのは、一つのZIPファイルの中に幾つか入れられるんですね。つまり、リフローで順々に見ていく、それは複数のHTMLファイルなら見れますけど、それ以外に固定レイアウトでこういう順に見ていく。
 二つの等価な表現を両方とも入れられるんですね。それで、どちらを選ぶかというのは切り替えられると。もしくは、自動選択のロジックが組み込めると。そうなってます。そういう意味で、普通は固定レイアウトが出てくるので構わないから、アクセシブルなリフローのやつも入れてくれと、そういう提案なんですね。

slide16

(スライド16 テキスト)

 EDUPUBでどうなったかといいますと、詳しいところはEDUPUBのプロファイルを見てください。かいつまんで言いますと、固定レイアウトに関してはまだ検討が足りてないんで、禁止もしないし推奨もしない。固定レイアウトをやるならば、アクセシブルになるようにHTMLとCSSでできるだけやりなさいと。これは先ほど申し上げましたように、残念ながらいろんなプラットフォームで再現性がない。十分じゃないです。どうしてもアクセシブルじゃない固定レイアウトを使うんだったら、アクセシブルな表現も入れなさい。そういう意味で提案した趣旨に従ったものになってると理解してます。

slide17

(スライド17 テキスト)

 リフローと連動する固定レイアウト。これは、今のEPUBの仕様にはレンディションマッピングという機能があって、完成したEPUB3.0.1じゃなくて、マルティプルレンディションズという仕様書の中に含まれてる機能なんですけど、例えば、この固定レイアウトのここの部分の領域は、このリフローのこの文書のこの辺だと、対応関係をつくれるんですね。対応関係がつくっていれば、固定レイアウトとリフローの間で行ったり来たりできます。
 実際にAmazonのハイブリッドのレイアウトはこうなってますよね。固定レイアウトもできるし、リフローにも切り替えられると。そして、現在読んでる位置は失われない。これと同じことができるようにしようとして作ってます。
 ちょっと皆さんにお聞きしたいんですけど、これってアクセシビリティ的にはあったほうがすごくいいか、もしくはあったら多少はいいかもしれないけど、別になくてもいいや程度でしょうか。この固定レイアウトとリフローの対応関係。

* 
あったほうがいいですね。

村田
 あったほうが絶対いいですか。


  絶対いいと思います。いらないという理屈があったら、教えていただいた上で、説得されるかもしれないですけど。

村田
 じゃあ、簡単に言うと工数が倍になると思ってください。


  じゃあ、絶対あったほうがいいです、工数だけの問題だったら。

村田
  工数だけの問題です。


 はい。と思います。


 ちょっとそれ、固定レイアウトの表現からアクセシブルの表現と書いてありますけども、この日本の教科書というのは構造が複雑になっていて、入れ込みになったりしてますよね。そのときに、そのページをアクセシブルなかたちで見ると、字面がずっと入っていて、それが読めるだけだと、理解できないように思うんですけど。


 今DAISYでつくっている教科書は全部、そういう表現でつくっていて、障害のある生徒たちも、字面がずっと並んでいて、もちろん画像はあるんですけれども、必要な説明を加えながら、製作する人が内容を読み込んで、どの順番で出すかというのを考えて製作をしています。機械的に作るのは難しいと思います。

村田
 じゃあ、それは、どの領域とどのテキストが対合するという対合表は、誰かが一生懸命頑張れば、作れるという。


 今はDAISYを製作している人が、内容を理解した上で並べ方を考えるという方法でやっていると思います。


  紙が前提になると思うので、そういう話になってくると思うんですけど、もしこれが当たり前の世界観になってくると、この一対一対応がちゃんと取れるようにということで、教科書を作る側も最初からそれを考慮して、レイアウトとかそういうものを組んでると思います。

村田
  この辺は、後のディスカッションのときに。


  インデザインに代わる、そういうことがちゃんとできるソフトを作ればいいんですよ。

村田
 今は本当に、教科書をどういう順番で読んだらいいかという。


 なかなかですね。


 難しいですね。今製作してるボランティアの間でも、とても難しいものとして、人によってやっぱり、どう並べたらいいかって違うので、とても難しく、困っていることの一つです。

村田
 一つお伺いしたいのは、対応表って、作ったとすると、結局実際に表示するときに、今固定レイアウトで表示してるところからリフローに行って、リフローからまた固定レイアウトに戻る。でも、アクセシビリティという意味では、両方切り替えられる必要が実行時にあります? それとも、読み上げのときにはこのリフローのほうだけ使って、固定レイアウトは一切触らずに動きますか。そうだとするならば、別に対合関係はすごく重要ではないかなとも思うんですけど。


 現状では紙の教科書を持っていて、DAISYを使っているという、目が見えるけど読みにくいような生徒さんが多いので、紙で見ればどういう配置になっているかというのを確認できるという状態ではあると思うんですけど。


 ページの中の細かいエリアごとに対応できるというのは、確かに今の製作のツールでは難しいと思うんですけど、単純にページ番号だけ対応が分かるというのならば、今でも。

村田
 簡単ですね。


 比較的簡単ですぐにできるんですけども。

村田
  それだったら、こんな難しいのを入れなくて。


 まだ、それでも、ページだけでもリフローの中にページカウントが、EPUBでもページ番号がございますけども、そのレベルであれば、まず我慢できるというのがあるのかな。それは妥協的なものとしていいんじゃないかと思うんですけど。

河村
 ユーザーによると思うんですね。視覚的にレイアウトも見えるし、見たい。その中のある部分を読み上げたいとかいうユーザーと、ずっとアクセシブルな表現の中だけでずっと読んでいきたいというユーザーと、やっぱり2通り少なくともありますから、これを製作者が、例えばInDesignを使って作るというときには、その対応関係というのはもう、製作者が自分でシークエンスのような順番を当然考えてつくれるので、比較的自由につくれると思うんですけれど、楽につくれると思うんですが。
 それが編集者の意図を推し量って第三者が作るというのは、極めて難しいと思うんですね。だから、そこら辺、誰がどういうターゲットユーザーを対象にするかによって難しさも変わるし、それから、必要性もターゲットユーザーによって変わってくるだろうと思いますね。

村田
 ちなみに、今のEDUPUBの仕様書は、この複数のやつを同梱するのと、対応表付きのやつと、どちらもできればやりたいと書いてあるんですよ。どちらも主となる、仕様では。

河村
 教科書については、必須だと私も思いますけどね。

村田
 これとこれがですか。

河村
 はい。両方とも、はい。


 それをマストにするのは大変ですか。

村田
 ツールの問題といえばツールの問題だし。


 最低ページ番号の対応を。

村田
 それが最低ですね。


 それで、shouldでちゃんとエリアごとの。

村田
 本当はあればいいけどね。恐らく、これは一番、*さんにお伺いするのがいいんでしょうけど、今まとめてお伺いしちゃおうと思えば。


   実は、簡単につくれない理由の一つが、現在の教科書というのが見開きを単位として構成されているという点なんです。全て単ページの中で完結した2ページならば、比較的こういったものに持っていけるんですけども、左右のページに渡って一つのものを載せてるというところがありますので、その構成がある限りは、今のような簡単なわけにはいかなくてですね。

村田
 一応、見開きになった場合のリージョンに関しても、Advanced Hybrid Layout Working Groupは検討して、一応考えています。それで十分かというのはありますけど。


  特にテーブルになっているというか、表のようにまとめられてる、上下左右にいろんな要素があるものについては、仮にリフローにしたところでも、全体構成は非常に見づらくなってしまうんですよね。せめて、単文で書けるようなものであればできるんですけども、そういう2次元的な、また3次元的なものについては非常に難しいです。

村田
 そこでやっぱり、*さん、紹介していいですか。


 はい。見開きになるか否かというのは、極端な話、B5縦2枚で見てるのか、B4横1枚で見てるのかというだけの違いだと、私は思うんですね。
 そういう意味で、見開きなのかというところについては、何ら関係はないだろうと思ってまして、私は何ものかと申しますと、さっき社名は申し上げたんですけれども、弊社の教材のコンテンツをXMLにして、それでいろんな体裁のものに出し分けていると。マルチアウトとしていくということをやってるんですけれども、もっぱらリフローレイアウトだけですね。
 固定レイアウトというものは全く使ってません。それと、弊社教材にもかなりレイアウトの凝ったものはあるんですけれども、そういったものには適用しておりませんで、もっぱら問題集のようなものをつくっているという立場なんですけれども。
 そうしたときに、この間メールでお話ししたようなことを言っちゃっていいですか。

村田
 どうぞ。


 まず思うのが、本当に晴眼者用の凝ったレイアウトというのが学習効果を非常に上げることができているのかというところの検証からしないといけないと思うんですよ。
 要するに普通に目が見えるお子さんたちが学校で使えと言われて使っている教科書ですね。先生がたが採択なさっている、あるいは教育委員会がしてるんだと思うんですけれども、私が見るにですね、かなりレイアウト的に配置がごちゃごちゃしたものを使って、これが本当に分かりやすいんだろうかというのが、正直、私は親でもあるんですけれども、感じるところではあります。
 それで本当に学習効果が上がっているのかということについては、まずは晴眼者に対して検証をしないといけないだろうというふうに思いますし、あと、そもそも晴眼者用の教科書のレイアウトがごちゃごちゃしてるから、DAISYにするとか、あるいは、拡大教科書のことも考えないといけないと思うんですけれども、拡大教科書は何年か前から単純拡大、取りあえずは単純拡大ということで、90何パーセントですかね、ほぼ100パーセント供給されているようにはなってるんですけれども。
 じゃあ、単純で本当に終わらせていいのかというと、単純拡大でも駄目でしょうというような話があるわけですよね。そういうふうに、DAISYであるとか、拡大教科書のことを考えたときにやっぱり、大本の、そもそも晴眼者用としてつくられている教科書のレイアウトというか、構造ですよね。構造をちゃんと考えて検証しないといけないでしょうというところなんですね。
 なので、晴眼者用にはこれがいいんだ。なんだけれども、DAISYとか、拡大教科書のときには、ばらして単純化しないといけないという話ではなくて、そもそも大本からその必然性があるかという検証をきちんとやらないといけないんじゃないでしょうかということですね。
 私、今、これ申し上げたんですけれども、筑波大附属視覚特別支援学校の*先生をご存じの方も多いと思うんですが、*先生と一緒に私が帯同させていただいて、文科省にXMLの有効性というのをお話に行ったりしたようなこともあるんですけれども、そのときも、生涯学習局だったかどうか分からないんですけれども、文科省の中にも、そもそもこの教科書は、本当にこんな複雑なレイアウトじゃないといけないのかということをおっしゃる方もいらっしゃるんです。
 なので、私個人は、教科書そのものが固定レイアウトというか、ある程度はもちろんデザイン性というのは必要なんじゃないかとは思うんですけれども、過度な、構造化がしにくいようなレイアウトを取ってるということについては、はなはだ疑問を持っているという立場です。すみません、長くなりましたけども。

村田
 パネルディスカッションに参加された立場として、お願いします。


 私はきょう、午前中娘が小学校1年生で学校に行ってきたんですけども、1時間算数の授業で、教科書を全く開かなくて、そんな授業が実は結構小学校でも行われていて、教科書を使われてる先生って、実は案外少ないのかもしれないなというふうに、教科書会社の人間がこんなことを言っていいのかというのはありますけど、私は前職は某印刷会社でして、デジタル化に関しては、紙のデジタル化にずっと携わってきたんですけど、レイアウトの問題はずっとやっぱり、残ってるんですね。
 別に教科書だけじゃなくて、出版社さん、特に雑誌なんかに関してはもう、崩れることを、組版のレイアウト自体に著作権があるので、あれを崩すことはできないというようなことが印刷会社に対してはオーダーされるんですね、出版社から。これは一般的な話ですけれども、似たようなことがやっぱり、教科書にもありまして。
   レイアウトの問題はやはり、それはそれで、私は日が浅いのであまり偉そうなことは言えないんですけど、編集の方はそれなりにやはり、学習効果をちゃんと考えてつくられていると。それが本当に効果があるのか、効果検証しているのかとか、いろいろな意見がありますけど。
 とはいうものの、1ページのレイアウトの中で1、2時間の授業を進めやすく構成しているというのは、実は先生がたに対しても非常に、実は効果的な部分があって、言い方は悪いですけど、あまり能力の高くない先生がたでも、1時間、この授業はこの読み開き1ページをこういうふうに教えればいいんですよと言われると、取りあえず教えられるところがあります。
 健常者にとってはやはり、最低限教えるという部分は、まずそれでクリアできたりとか、そういった部分はあるので、レイアウトの問題は非常に難しいです。特に社会科の教科書は、昨日もちょっといろいろ、実は今、デジタル教科書を必死につくっているので、やってたんですけど、本文を読んで、そのあと、その下に書いてあるコラムを読んで、その次はまた本文を読んでとしないと、意味が通らない。流れがちゃんとつくってあるものというのが結構あるんですね。
 そうすると、じゃあ、本文だけのリフローをやって、それでDAISY読み上げやったら学習効果が得られるのかというと、得られないという場合も実はあったりするんですね。それが、編集者が意図的に、例えば、社会科の、農家の話とかを書いてるとすると、本文では農業の説明をしてるんですけど、コラムで実際の農家の方の話を、インタビュー記事を入れている。それが前段でまず農家の話が出て、インタビューを読んで、また本文を読むと、非常によく分かるというような構成になってたりとか、実は意図的にしてたりするんですよね。
 そういったものもあったりするので、単純にリフローにすれば全部解決するというものでは、実はないとも言える。レイアウトに関してはそういうことがあります。


 誌面を構成する要素ですよね。それを考えるときに、もちろん最初から最後まで本文だけというかたちだと、子どもは飽きると思うんですよね。なので、傍注があったりとか、コラムがあったりとかというのは、当然しかるべき話だと思うんですけれども、その程度のものであれば、むしろこれはレイアウトがぐちゃぐちゃとかという表現はされないと思うんですね。
 何を持ってレイアウトがしっちゃかめっちゃかになっているとかというふうな言葉を使うかというと、要は、構造化しようとしたときに全く構造化できないんですよね。そういうケースがあるんです。私は、仕事で大学の入試問題、高校の入試問題、あるいは弊社でつくっている問題集とかの文書構造をきちんと定義をしたり、入試問題とかというのは定義するというよりは、弊社で運用している文書構造にどうやってきちんと落とし込んでいくかみたいなことを考えるんですけれども、そういう観点で、全部の教科書とはもちろん申し上げませんが、編集者的には多分工夫したんだろうなという誌面を見れば見るに付け、これはどう構造化すればいいんだろうというのを、非常に悩むんです。
 同じようなことをやっぱり、DAISYの、さっきお話がありました、どうやってアーティクルを通していくのかとかいうことを考えるときに非常に苦労なさってるんじゃないかというふうに、思ったりもするんですけれども。

河村
  もうちょっと根本的な問題でいくと、教科書出版社にとっては、採択されるかされないかというのが勝負だと思うんですよね。採択するほうが何を基準にしているのかというところが、もうひとつの問題で、作り手とは別に、それを採択するほうの教育委員会なり現場の先生たちが何を求めているのか。
 実は、その求める中に、教室に居る読みの障害のある子どもたちも使える教材をとかっていう発想がそもそも、現場にないんじゃないかというのが、私が一番危惧していることなんですね。そこが読めたら、その子たちは授業に入っていけるのに、読めないがために苦労しているという子どもたちについて、現場の先生たちや教育委員会がそこに対応できる教科書、教材というニーズを持って採択しなければ、いくら出版社側がそこを考慮して、工夫しましたといっても、全然違う基準で採択されるわけですよね。
 そういう意味で、障害者権利条約を批准して、教育の権利も合理的配慮とか、環境配備とかをして、障害のある子もない子も同じように参加できるようにしていくと。それが、2016年の4月には待ったなしで、公的機関は合理的配慮が義務になるという、その切迫感があんまり現場にない。
 そこのところが、教科書のつくり手にも、どういう基準で採択されるのかというところの勝負所が、アクセシビリティというのが一切入ってこないというところに問題があるんじゃないかというふうに感じるんですけれどもね。そこは*さんが専門家で。*さんの、障害者政策委員会なんかでは、随分議論しているところなんじゃないですか。


 政策委員会も情報アクセシビリティの分野というのは、率直に言って弱い分野で、障害者運動のメインというのは、これまでもそうだったし、今もそうですけど、人的サポートなんですよね。
 それから、移動とか介助とかに関わる部分が圧倒的に強いです。教育に関しても理念としてのインクルーシブ教育を進めていくということについては、非常に強い主張を持ってる人たちは居るんですけれども、その場合想定している、インクルーシブ教育の受ける対象の子どもたちは、基本的には知的障害の子どもたち中心なんです。
 だから、誤解を恐れずに言えば、教科書のアクセシビリティがどうこうとかということより、共に学ぶという理念を実現したいという話になっていて、一人一人の学習を保証していくようなインクルーシブ教育という話で、教科書のアクセシビリティというのを論じる立場の人たちは極めて少ないという、発達障害の親の会も含めて少ないという印象を持ちます。
 高等教育に関してはただし、発達障害のある学生も随分大学に入ってきているので、高等教育における合理的配慮に関しては、随分、以前に比べると議論されるようになってきているかなというふうに感じているところなんです。
 それと、ついでに申しますと、差別解消法という法律ができて、合理的配慮の不提供は障害者に対する差別というふうになったわけなんですけど、言い換えれば、そのことを問答無用として差別と言うからには、限定的なもの、あまり拡大解釈するわけにいかないし、逆に縮小解釈されては困る。だけど、何でもかんでも合理的配慮だというふうに言ってしまうと、かえって差別解消法の趣旨からして、それは違うということになるので、アクセシビリティという話であるとすると、差別解消法で押していくのは難しいですね。
 個別の合理的配慮なんですけど、それを提供しないことが差別であるというふうに言い得るのは、あくまでも個別の合理的配慮なんです。ADAにおける合理的配慮と、権利条約における合理的配慮および差別解消法における合理的配慮というのは、厳密に言うと同じなのか、どこが違うのか、もうちょっときちんとした分析をしないといけないと思ってるんですけれども、多くの人たちが漠然と感じている合理的配慮というのは、アクセシビリティも全て合理的配慮でしょというのは、実は差別解消法的には違うんですね。
 それはむしろ、環境整備と呼ばれているものです。そこまで、差別だと言ってしまった社会権的なものというのは、資源の限界というものをわれわれは受け入れざるを得ない。そういう側面が多々あるので、あらゆることを合理的配慮の不提供と言うには、言い過ぎになってしまいます。
 だから、アクセシビリティを進めていくには、権利条約を参照しながら押していくというのが、正攻法ではないかと思っています。

河村
 権利条約では、あらゆる人が権利条約の実施に努めるべきであるというふうに書いてますよね。政府はこういうことをやるべきだという書き方と同時に、それぞれの個人から企業に至るまで、こういう方向で進めるべきだということが、かなり具体的に書いてあって、アクセシビリティはその中に、9条でしたか、もう独自の1章を設けて、その中で極めて具体的に書いてますし、あと、教育の権利とか、その文化のアクセスの権利とかというのは、それぞれ個別に書いてるので、非常に参考になると思いますね。


 合理的配慮の分かりやすい例として、書籍、出版に関して言うとですね、紙で印刷して市販されている本を、私は見ません。だからデータをくださいって、個別に出版社に求める。これは合理的配慮要求の割と分かりやすい例だと思うんです。
 だけど、この本を、例えばKindle版にしてくださいというのは、リクエストはAmazonでクリックすればいいですけど、それを合理的配慮要求とするのはなかなか難しいかなと思います。言って言えないことはないんですけど、それは過重な負担というふうに一蹴されてしまうであろうという感じがします。データの提供であれば、過重な負担というのは非常に言いにくいと思ってます。しかも個別の。個別の調整ですから、その人にだけ、本を買ったけど読めませんと。だから、データください。テキストデータをくださいって言ったから、それを拒むのは、もしこれが民間事業者の義務であれば、差別に当たると思います。ただ、努力義務となっているので、今のところは少なくとも。そうではありませんけれども、合理的配慮要求を構成するものとして分かりやすいんじゃないかなというふうに思います。

河村
 じゃあ、村田さん。

slide18

(スライド18 テキスト)

村田
  続きで行きます。EDUPUB Tokyoでは、このパネルディスカッションをやりまして、そのときに一つ出た話題として、リフローを作るのは不可能だと、出版社の方がおっしゃったんですね。要するに固定レイアウトのやつはつくれるけど、リフローで教科書を1冊作ることはできないと。
 IDPF的には、固定レイアウトをやるのはいいけど、アクセシブルじゃない固定レイアウトをやるならば、リフローも一緒に入れてくれと、ビル・マッコイが要請したんですが、教科書会社の方は、そういうことはできないと。
 そのときに話題になったのが、リフローを入れるといった瞬間に夢が大きく広がって、非常に見た目が美しいレイアウトで、しかも字を大きくするというと大きくなって、ページ数が非常にきれいにレイアウトが変わる、そういう過大な期待を持たれるのは困るという。
 だから、リフローといったときに、そういう過大な期待を持たせないような、そういう何か技術的な裏付けがないだろうかという提案がありました。それで今、IDPFのほうでは、それを実現しようとしています。
 つまり、各レンディションをのぞむメタデータとして、まずこれはアクセシビリティのためだけのものであって、普通は表示しちゃいけませんと。というか、デフォルトでは2番目に入っていて、普通は、今のEPUBの実装はみんな1番目しか表示しないので、表示に行かないし、レンディション・セレクションをまともに実装した、つまり複数のものから1個を選び出すということを、まともに実装したのならば、今度こそ本当にアクセシビリティのために必要だと思う人しか表示しないだろう。そういうふうな情報を付ければいいんじゃないかなということで、仕様としては入れてます。入れる方向です。今そういうふうに意思を上げて、それがほぼ通ってます。
 これを、フラグがあると、どうかというのを教科書会社の方にお伺いしたいんですけど、多少は役に立ちますか。それとも、これがあってもやっぱり、リフローは不可能ですか。


  採択の話を先ほどいただきまして、確かに固定レイアウトにこだわっているのは、紙の教科書がベースになっているので、こだわっているというのもあります。とはいうものの、固定レイアウトで現状はつくっているものですから、2番目に、それ以外の使い方をしたい方には選択できますよというのは、やり方としてはいいやり方だとは思います。ただ、コストの面が当然ありますから、つくり方の部分から若干変えていく必要はあるかなというふうには、ちょっと感じています。

村田
 コストは負担であると。


 そうですね。

村田
 実現できるかどうかは分からない。


 はい。今すぐに実現できるかどうかは分からないですけど、文科相さんが教科書の値段を上げてくれれば、非常に簡単にできますけど、なかなか、1冊100円とかの音楽の教科書をやれと言われても、厳しいとところがあったりは、正直します。ただ、技術的には数年かけてやっていけばできるんじゃないかというふうには思います。


 今、実際にこれに近いことを作業を進めているんですけれども、固定レイアウトの中のある部分を感知すると、その部分を拡大すると。必要だったらリフローにするというのは、今実際に進めている作業です。
 絵と適当なところを一緒にしてリフローにしようというふうにやってくると、またちょっと手間が掛かってしまって、絵とテキストの部分については、固定切り出しの段中拡大とか、そういったかたちである程度割り切っていけば、比較的短期間に作ることはできるんですけれども、全てが全てリフローでやろうとすると、もともとリフローにしてしまうと、対合関係は分からなくなってしまうというようなところもあるので、やって効果があるとこと、やることによって逆に分かりにくくなってしまうようなところがあって、その分かりにくくなってしまうようなところを分かるようにするための工夫というのはものすごく大変なんです。
 だから、できるところはできるけど、できないところはある程度ブロックとしてやらざるを得ないところは出てきます。そういうとこをある程度割り切れるとこは今実際やろうとしてますし、そういった範囲内でだったら対合可能。ただ、コストは正直言って、ものすごく掛かってますけども。

河村
 ただ、コスト問題はデジタル教科書に移行するときというのは全部コストを見直しますよね、結局。紙の流通というのは、完全になくなるわけですから、今紙に印刷して流通するというのもコストですよね。
 デジタル教材になったときには、その紙の流通のコストというのは、印刷して流通させるコストというのはなくなる、基本的になくなって別にのコストになるわけですから、コストは全体的に見直しになる中での、今のコスト問題というふうに、少し、コストを考えるときに基盤は変わるというふうに考えていいんじゃないかなと思うんですけど。


 そうですね。そう見れば、おっしゃるとおりなんですが、現状の特約供給所を通じての教科書の販売方式というのは、ダウンロードであったりとか、かたちは変わることによってコストの組み方は大幅に変わるとは思います。
 ただ、現状の延長線でやってるところに最大の問題点が、というか、現状のやり方を数年間はせざるを得ないというところで今やっているので、そういったところでの限界点が全部今課題として出てきている。
 個人的な立場から申し上げると、デジタルファーストでつくらないと、こういう問題は全部解決しないんですよね。村田さんもよくご存じだと思いますけど、XMLデータで全ての分野をもともとやって、紙はこう、電子はこうというふうに出さないとできなくて。
 ただ、これって、私は先ほど申し上げたとおり、某印刷会社で3000ページのカタログとか、そんなのを電子化するのをずっとやってたんですけど、まずは編集も含めた、会社組織も含めたところでの協力が必要とか、合意が必要で、そしてそれがまた、得意先によって使うエンドユーザーも含めたところで、ここの周り込みはちょっとおかしいんじゃないのみたいなところを、例えば許容してもらうとか、いろんな部分に、実は、出版社だけじゃなくてですね、エンドユーザーも含めたところで許容してもらうところというのは、やはり少し出てくることがありまして。
 現在の採択の手法にはそういったリスクもあるので、そういう転換ができてない。当然紙の編集者はやはり紙ベースでしか発想ができないものですから、コンテンツの製作手法も含めて、課題は非常に多いとは思っています。
 ただ、10年ぐらいかけてその辺は、最終的には変えていかないといけないとは思ってるんですけど、大手出版社さんだとなかなかできていないことというのも、事実としてはありますね。


 すみません。*さんの話でちょっと分からなかったんですけど、政府は2020年までと言うか、10年台の間に、1人1台端末を持たせるということを言ってますけど、あれは単なる掛け声であって、そうなるわけじゃないですよね。
 だから、2020年を過ぎても、紙をつくらないといけないし、電子もつくらないといけないというかたちであって、紙から電子に移行するだけじゃないというふうに、私は思ってるんですけど、違うんですか。


 デジタルファーストかというところの話とちょっと違うところがあるんです。教科書って編集して、実際発行するまでに5年ぐらいかかってるわけです。最後の1年のところで検定というのがあって、検定を通って初めて教科書は出せることが決まるんです。
 その後、今のつくり方で言うと、検定を通るであろうという見込みの元につくり始めるんですけれども、デジタル業者は。でも、その後見本本というのは、最終的に供給本という間に細かい変更があります。
 最終版になってから発行までの期間があまりにも短いので、できることが限られてしまっているというのが、だから、他のコストよりもどっちかというと時間的勝負のほうが、今最大の課題になってます。デジタルファーストになれば、その部分が多分、短縮はできるだろうなと思います。


 デジタルファーストにするには、検定の在り方も変えてもらわないと駄目ですね。

河村
 うん、そうですね。


  白本出してどうの何て言ってたら、多分間に合わないと。今まさに印刷してるんですね。半年ぐらいかけて印刷するので、小学校の部数が非常に多いですから、そうなってくると検定をもっと早めるとか、あるいは紙の状態じゃなくて検定してもらうとか、そういったとこまで踏み込んだ議論を、文科も含めて、巻き込んでやっていかないといけないかなと思います。


  あと、デジタルファーストをやった場合でも、4年間、5年間の間に、DTP環境も変わっちゃうんですね。われわれが一番困っているのは、つくり始めのときのDTP環境が、実際発行するときには保たれていないので、コンピューターが壊れないように、だましだまし、編集しています。
 製作最初のバージョンから変わらないように、変わったとしても、文字化けとかしないようにという感じで保つため、しかも採用された後も今度、4年間使われ、8年間ぐらい最初の紙に近い感じに保たなきゃいけないという、それがあるので非常に厳しいのと。
 フォントについても、今はユニバーサルデザインのフォントとかが出ているからいいのですけど、つくり始めの頃はなかったので、始めの頃は外字でつくっていたのです。最初、外字で入った状態で編集を進めていって、今になって実は、この字は外字だったのだと気が付いて置き換えているという、そういう状態なのです。だから、恐らく、今もPDF等のデータが不安定な形で使っている中でも外字というのが含まれていて、拾ったはずなのだけども文字が抜けているという状態になっていると思うのです。
 私たちは今まさにデジタル化を進めている中で、例えば、手塚治虫さんの「塚」という字は点が入っているじゃないですか。そこに外字が入っていて、テキストに流そうと思うと1文字でもないと検索の対象にならない。


 そういうような、時間的な、つくり始めたときのタイムラグというのがすごく大きい課題としてありましたね。

河村
 教育って、国家100年の計ですけどね。だから、総力を挙げていいものにしていかないといけないし、そこから阻害される子どもたちをつくっちゃいけないわけですよね。そういうふうに考えると、今出されてるようなことをどうやって、全部一つ一つ課題を解決して、最終的にはインクルーシブな誰も阻害しない教育を実現するかという、大事業をみんなでやろうというふうにしていかなきゃいけないことなんだと思うんですけれども、また村田さんのほうに戻して、今どういうふうに進んでいこうとしているのか、もう少しお話を完結させていただきたいと思います。

村田
 まず、文科省の事業のほうでは、固定レイアウトの中心になるのは、先ほど申し上げましたように、それはどうしようもない、当然なるもんだと思います。それで、アクセシビリティが全くないのは、それは許せないので、私はIDPFでやってるようなアクセシビリティを入れることを強く主張します。
 私がそう主張して、通るんじゃないかなと思ってるんですけど、アクセシビリティなんかなくていいんだとは、誰も言えないですもんね。言えませんので。じゃあ、それで教科書がどう変わるかというと、それは実は、分からないです。

slide19

(スライド19 テキスト)

 というか、今のところは、このデジタル教材の標準化というのは生涯学習局のほうであって、検定でも何も関わってませんし、正直今の時点で、例えば東京書籍さんも、いろんな会社さんも、まだあれに従って、本当に教科書は絶対つくらんといけないと、まだ思ってないですから。思ってたら、あんなに静かにしてられないです。いろんな動きがあるわけですけど、きょうこの場にいらっしゃいませんけど、CoNETSという教科書会社の連合体があって、そこでは今のところビットマップだけです。東京書籍さんは、先ほどの断片的なリフローが入っています。
 CoNETSさんの、全部ビットマップだけというのはさすがにまずいので、それも何とかしてもらおうと思ってるんですけれど、CoNETSさんには前からハイブリッドレイアウト、固定レイアウト、リフロー両方入れられますよという話はしてあります。
 ただ、もちろん、やるとなると工数も掛かるのでいつになるか分かりません。声掛けはしてます。教材会社さんも、ベネッセさんは正直言うと別格の会社なので、他の会社は恐らくみんな、DTPを使って、がりがり書いていて、リフロー何のこっちゃというとこだと思います。

* 
固定レイアウトで質問というか、かなり気になってるんですけど、なぜPDFでレイアウトに使わないんでしょうか。PDFには一応アクセシビリティを考慮した、タグ付きPDFの、構造化されたPDFの仕様があります。InDesignでも、その構造化されたタグ付きPDFを作るための機能が一応あります。
 それで、アドビなどもCreating accessible PDF documents with Adobe InDesignとかという、ちゃんとそういう文書が公開されてます。それを当面、今紙のページを作るというのが、どうしても中心の作業フローで、InDesignを使うというならば、せめてこのInDesignのアクセシブル機能を使って、ちゃんとしたアクセシブルなPDFを作るということを当面進める、またそれをEPUBの固定レイアウトもそれを使うというのが、現実的な解のような気もするんですけれども、どうなんでしょうか。

村田
 文科省の事業だと、当然PDFが出てこないのは、やっぱりアドビのものなんでしょう。


 でも、PDFは。

村田
 知ってます。


 国際標準規格ISOを。

村田
 もちろん知ってますけど、じゃあ、OSはマイクロソフトのもんじゃないと言いましたけど、先ほどの話は。それと同じで、やっぱりアドビのもんです、PDFは。

河村
 PDFの著作権って誰が持ってるんですか。


 仕様のという意味ですか。

河村
 著作者が居るわけですよね、PDFには。著作者は。

村田
 ISOから出ているテキストに関しては、当然ISOが持ってます。

河村
 ISOから出してる分についてはですね。だけど、PDFが改訂されて、アドビが改訂する権限を持ってるということですか。それとも。

村田
 そんなことないですよ。

河村
 ISOが決めないと。

村田
 もちろんISOで決めるんでしょ。

河村
 決めないと、アドビも変えられないということなんですか。要するに、著作者というふうに考えた場合。

村田
 アドビのやつは、アドビの全ての仕様が全部IFになってます。

河村
 なんかちょっと、アドビは勝手に変えてるような感じがしてるんですけど、違いますか。

村田
 一般的に言うと、マイクロソフトだろうがODFだろうが、実際にその製品のフォーマットを完全に規格に委ねて、一切自分の拡張を禁止するなんて、そんなこと会社はしないんですよ。損だから。拡張するんですよ。

河村
 だから、ISOになってる規格をベースにアドビが独自の拡張をして、それで製品を出して、で、それはアドビのリーダーじゃないと、一番最新の部分は当然対応してないと。
 従って、必ず最新の規格でこういう機能が付きましたよというふうに言っても、それはISO規格のものとは別にの可能性があって、アドビリーダーの中でしかそれは実現されないというのが、私の印象なんですけど、それで間違いないのかどうか。

村田
 私は把握してないです。


 それでもISOCOになって、ISOCOで全て公開されて、その中に当然アクセシビリティに関するCOもISOCOの中にあります。その公開されたCOでPDFはつくられてるから、アドビ以外のいろんなベンターがPDFのリーダーをつくってる。だから、ISO標準の中にはなくて、何かあるのかも、私は把握してないんですけれども、基本的なPDFの機能は全てISO標準の中にあって、その中で使われてる、その標準機能だけで通常は十分なのではないかと思うんですけれども。

村田
 例えば、アドビPDFはアドビの商標ですしね。少なくとも世の中の動きは、PDFを中心に教科書を作るという動きは、私はないと思ってます。標準化としてはですよ。

河村
 *先生のグループはPDFで弱者用の拡大電子教科書をつくろうとしてるんじゃないんですか。

村田
 恐らくそういう、何ていうんでしょう。標準とか、政府方式でないものでいっぱいあると思います。


 ちょっと話はそれてしまうかもしれないんですけど、外務省が権利条約の公約と原文、英文をPDFで出したんですね。読もうと思ったら読めないんですよ。また画像でと思ったら、画像じゃないんですよ。画像じゃなかったんです。これは、中にテキストがあったんだけれども、読めなかった。
 よくよく聞いてみると二つ変なことがあって、まず、一太郎でつくりましたと。霞ヶ関では一太郎しか使っちゃいけないことになってますと言うので、何をばかなことを言ってるんですか。一太郎をコンバートしてPDFにしたら、それはPDFでしょう。もはや一太郎ではないですよということが一つと。
 一太郎をPDFに変換するときに、それはCMS上でやったんだと思いますけど、そのときのコンバーターで入れたフォントが標準的なものじゃなくて、テキスト抽出にかからないようなものだったので、1回ワードで保存、せめてワードでPDFにしてくださいと言ったら、いや、霞ヶ関は一太郎を使うことになってる。だから、PDFはPDFでやって、もはや一太郎じゃないんだから、PDFで出してるんだから、それを一太郎だというふうに強弁したって何の意味もないというふうに、PDFというものを霞ヶ関ではそのようなものとして理解されている形跡が強いという、そういうお話でした。その程度なんです。

河村
 しかも、権利条約の43条ですか。このテキストはアクセシブルな。


 そうそう。アクセシブルなフォーマットで配信することとなってるんです。公開するということになっていて、初っぱなから権利条約違反ですよ、外務省自らと、僕は言ったんですね。


 それで、どう応えたんですか。


 直しました。さすがに直しました。

河村
 ただ、外務省の公定訳というのは、アクセシビリティという言葉を全部排除してしまったので、使いやすさとか。


 インクルーシブもそうですし、カタカナをとにかく使わないように、使わないようにしているので、それはでも、障害者団体の中でもそういうことを言う人はたくさん居るんですよ。たくさんでもないか。
 知的障害系もカタカナは嫌だと。それから難病の、この人は個人的なことだと思うけど、自分が理解できない言葉は使うなみたいなことを、委員会でおっしゃったりする人も居たりして、いろんな人が居るんだなという感じに思ってますけど。

河村
 ただ、アクセシビリティの場合、一番違うのは、アクセスできるかできないか、イエス、ノーという、非常に基準がはっきりしてる概念だと思うんですけど、使いやすさとなっちゃうと、なんか全然そこはあいまいにされちゃうんで、ものすごくそこは残念なんですね。


 ユーザビリティーとの違いが表現できてない感じがしますね。すみません、余談でした。脱線しました。


 あと、さっき検定のことが出たんですが、村田さんの委員会の中では、教科書を扱ってるので当然検定の話も。

村田
 今のところ一切出てないです。


 そうですか。検定の際に、例えばアクセシビリティとか、オルタナティブな教材が提供できるのかとか、そういったことが検定の基準に入ってないというのが、そもそもの、今度の差別解消法の、あるいは権利条約からいくと、当然検定するときには、そこのところが考慮されるべきなんじゃないかなと思うんですけど、そこはほとんど議論になってないんですか。電子版に関して。

村田
 どこが違いますか。今のところは全く。そういう意味では、今やってるのは教科書じゃないはずなんですよ。単に教師用の教材か何かなんです。

河村
 ああ、そうなんですか。

村田
 そうですよね。


 はい。全部、教科書ではない。デジタル教科書と呼んでますが、扱いは全部教材です。


 ちゃんとデジタル教科書です。


  購買もいわゆる自治体のほうの予算で全部買われていますから、別に文科省から予算が出てるわけではないです。
 ただ、デジタル教科書、本当に検定に、文科省がするのであれば、当然アクセシビリティは入ってくると思います。そのときにわれわれは大騒ぎをやらないといけないという。正直、戦々恐々とはしてます。
 ただ、2020年に検定になるかどうかは分からない。微妙だとは思っているんですが、ちょっと分からないですね。

村田
 私の用意してきたスライドはここまでで、これ以上言えることは、私にはないんですけれど、皆さんのほうからいろいろ私に質問はありますか。IDPF、EPUBに関して。答えられることでしたら答えます。

河村
 じゃあ、取りあえず村田さんのプレゼンはこれで一段落して、あとは村田さんのご講演を前提にした意見交換に入りたいと思いますので、その中で質問も出してください。
 それじゃ、ご講演、ありがとうございました。とても分かりやすく、難しい技術的な問題を紹介していただけたと思います。それでは、これから30分間、あっという間にたつと思いますので、これを言いたいという方の、まず挙手をお願いします。


 事務的なことで申し訳ないんですけど、JEPAスライドという場所があって、その中にこのスライドを、今もらえれば今置きますし、どこかで置いときます。

河村
 ありがとうございます。


  意見じゃなくて質問もいいですか。

河村
 はい、どうぞ。質問もオッケーです。


 親委員会、委員会というお話が、私はどういう構成の、どういう枠組みのものかというご説明を聞き漏らしたような気がしたので、例えば、それはどこかの企業が、入札か何かで受注したプロジェクトで、そのプロジェクトをやっていくためには専門家の委員会メンバーとして、委員会がそれに対してアドバイザリーみたいなことを、しなさいよということを受注先に求めている、そういう枠組みなんでしょうか。

村田
 そうです。おっしゃるとおりです。受注したのは電通で、それで親委員会があって、その下に第1分科会と第2分科会があります。第1分科会がコンテンツ関係で、第2分科会関係が、あるいはむしろそれ以外のもっと、アプリケーション連携とか、そういうとこだったと思います。私は親委員会の委員です。


 で、それは助言、専門家からの助言を受けながら、調査研究してその報告書を納品しなさいという、そういう契約ですよね。

村田
 だと思います。


 委員に、その報告書をその場だけで読んで、コメントをくださいというのは、大体その契約条件を満たしてることになるんですか。

村田
 文科省の方はもちろんいらっしゃって、私が文句を言って、文科省の方は何もおっしゃいませんでした。


 ああ、そうなんですね。文科省的にはその程度のアドバイザリーでよいということなんですか。

村田
 そうなんじゃないですか。


 ちょっと考えられないですけれども。

村田
 私もそう思いますけど。


 あと、報告書はまだ納品されていないという。

村田
 去年の事業のやつは当然納品されてます。


 じゃあ、文科はその納品物を公開してないということになりますね。

村田
 そうです。


 そうすると、それは少なくとも情報公開、税金を使って。

河村
 そうね。情報公開法で。うん。請求できる。


 作ったものだから情報公開は、求めればせざるを得ないし、そもそもそんなことをしなくたって公開するのが筋のものなんで、これまたなんか、面妖な話だなという感じがします。

村田
 そう思います。


 すみません、それに関して質問なんですけど、親委員会とか、第1分科会とか、そういった構成について事業内容等は、ホームページに書いてありますか。

村田
 書いてないです。


 総務省とうちは何回か、イーストとして仕事をやったりとかしてるし、今も少し話をしてるんですけど、総務省のいろんなものというのは、ほとんど公開されてると思ってますし、委員会の委員の名簿とかもネットに出てますけど、文科省と総務省で相当、ネット活用ということでは温度差があるなというふうに思います。ですから今回、文科省のものは公開、何もされてないと思います。委員の名簿にしても。

村田
 例えば、フューチャースクールの報告書も多分、最後のまとめしか出てないですよね。


 ですから、例えば、JAPETさんが昨年、総務省から請けられた、JAPETは文科省の外郭ですけれども、請けられたhtml5を使った教材作成については、彼らが納品した後すぐに、200ページの全体のうち、サマリーの30ページぐらいのものが、それがもうネットに載ってるんです。JAPETは文科省系ですけれども、総務省から請けたので載ってるんですね。ところが、そういうところがあまり文科省さんはやられてないように思います。

村田
 載ったのはここだけですけどね。概要があるだけで、ここのページからリンクが三つ貼られていて、この内容は確か、去年から一切変わってないと思います。去年この事業が始まった段階から何も変わってないはずです。


 すごいな。

村田
 概要とか案しかイメージ図、これぐらいしかないです。

河村
 あと、ご質問とご意見、はい、どうぞ。


 教科書の電子化に関して気になっていまして、DRMに関して、暗号化についてですね。教科書会社さんは当然、不正をされると困るということで、出荷するときに暗号化をかけているように思います。こういうDRMに関して、何か議論というものが国内でされているのでしょうか。
 もし、DRMにかけられてしまった場合、アクセシビリティ的には支援技術側としては、DRMを外さないと中身のデータにアクセスできないので、例えば、読み上げようとか、点字で出力しようとか、頑張ろうと思っても、最初の出だしのところで、どんなに規格が頑張ってくれても駄目になってしまうんです。そのDRMの議論はどういう状況なのかというのをお尋ねします。

村田
 まず、文科省のこの事業では話し合いは1回もないです。IDPFでは、LCPというのがあって、それを破れないDRMじゃないんだけど、破ったらすぐ、こいつは破ったんだなということがイメージ的になるように、そういう仕様をつくろうという話はあります。
 ただ、それもなんか、内部の反対が相当あって止まっているはずです。EPUBのLCPって何も出てませんよね。もう2年ぐらい前から。聞きませんよね。EPUBLCP。


  今は動いてないですね。

村田
 全然聞かないですよね。


 一般的な電子出版の世界でも、もちろんAmazonさんとか、みんなDRMにかかってやられてるんですけれども、だんだんソーシャルDRMというかたちで、例えば、ついこの間JTBさんが『たびのたね』というサイトを作ったんですけど、それははなこの旅特集とか、いろんなものを足して1個の本に、EPUBにして見てもらうというかたちなんですけど、それはソーシャルDRMで、最後のページか何かにその購入者のメールアドレスが入るだけです。それで、業界がちょっと、大手がそういうことをやったもんで、ちょっと驚いたということはありました。

河村
 最近、明治図書さんがDRMをかけないで電子出版して、あれで何かものすごい被害に遭ったとかという話は、お聞きになってますか。


 いや、僕はIPメディアであのインタビューを見ただけで、結果は見てません。

河村
 逆に、DRMがかかってなければ自分でテキスト抽出もできて、自分の原稿を書くときにコピーペーストもできるわけですよね。だから、かえって売れる可能性もある。
 音楽のDRMのあるのとないのとの勝負がどう付いたかというのと、パラレルに見ていくと、やっぱりDRMなしの出版というのが増えていけば、それはそれなりに勢力になっていく可能性はあるんじゃないかなと思うんですけど。


  だんだんそういう流れが出てくると思いまして、例えば、書庫も同じ書庫に自分の蔵書が置けないわけですね、いろんなとこから買ってしまうと。それから、ビューアーについても、DRMをかけてるのであれば、それ用のビューアーもショップ側が、オンライン書店が用意していないといけませんけれども、iPadでibooksで読んでくれればいいじゃないというふうなかたちの立場になってくるので、とてもカジュアルに、電子書店もつくれてしまうということがあります。

河村
 教科書の場合は、特に現場の先生がやっぱり、加工したいというニーズがすごくあるので、特に障害のある子に対応した教材なんかを作るのに、現場でカッターペーストしたいし、絵も使いたいしというので、DRMがかかってると全然話にならないんですよね。
 ですから、そういう意味では、教科書は特に、インクルーシブ教育を視野に置くと、DRMはなじまないというのは、かなり強く言えるんじゃないかなと思いますけど、現場のニーズとしては。

村田
 恐らく、教科書会社さんは全て権利をお持ちのコンテンツばっかりが教科書に入ってるわけじゃないので、非常に難しいでしょうね。

河村
 そうですね。


 写真だとか、そういう第三者が引用したら困るというのがかなりたくさん入ってますから。

村田
 いっぱい入ってるもんね。


 ええ。


 弊社もまだ指導者用のものしか出しておりませんけれども、学校に直接納入するものについてはかけていません。ただ、公衆送信するインターネット経由のものにはDRMをかけています。
 それは、関係ない第三者がアクセスして、中のものを使ってしまうと困るからというだけです。使えないようにするためにDRMをかけてるのではなくて、不正使用されることを避けることを講じないと、そもそも素材を貸していただけないのです。著作物の利用許諾を得るためにかけているだけで。

河村
 ウオーターマーキングなんていうのは、お使いになってないんですか。


 いや、かけてると思います。


 *です。学校関係者です。現状でも、著作権35条でやれることは多いと思います。検定教科書の教師用指導書の附属として、CDロムなどでデジタルデータが提供されています。著作権法35条の範囲内であれば、画像なども含めて使えることになっています。
 そういう意味では、現場の先生がある程度努力すれば、いわゆる教科書の一部を自分が教えている児童、生徒にアクセシブルな形で提供することは、ある程度まではできるはずです。ただし、先生方にそのようなスキルがあるかどうかの問題は別にしてですが。
 そうではなくて、児童、生徒自身が、ここが読みたい、見たいと思ったときに、DRMがかけられていて自由に使えないのでは、問題であるということなのです。
 家であろうが、学校であろうが、教科書を、児童、生徒が自分自身で、自由に読めないようでは話になりませんから、そのときに邪魔になるようなものがあったら困るわけです。

河村
 EDUPUBに話を戻して質問があるんですけれども、先ほど、高等教育寄りというお話をいただいたんですが、アメリカの場合は、もう連邦法で幼稚園から高校まではライマスで全部のテキストファイルがNIMASフォーマットでナショナルレポジトリーに全部入ってしまっているので、そこはもう済んでいると。
 そこで数式までは対応できてますから、そこから先の話で、アメリカの議論は常に、マス、数学、それから工学、サイエンス、これが課題なんだという議論に、かなり集中していると思うんですね。
 ですから、義務的な部分は全部教科書がもうNIMASファイルになっているので、片付いたという認識があるんだと思うんです。それはもう、DAISY3で、もうほぼそこで片付いてると。そこから先のものは、DAISY3では足りない部分があるので、そこを集中的にやるんだというのが、その次の段階なんだと思うんですね。
 その中で、先ほどちょっとお話のあったテーブル、何か2次元のこのテーブルがありますよね。それが、すごく大きなテーブルなんかになったらどうしますかというお話があったんですが。
 EPUBもそうですし、DAISY3もそうですが、それぞれのエレメントが、これはテーブルなんだとか、これは数式なんだとか、そういうふうに定義されると、これはプレーヤーの仕様によりますけれども、プレーヤーはそのコンテキストに対応した動作をするというふうにできるはずなので、多分、Readiumの開発なんかでは、テーブルのところはテーブルのところとして、先ほどのアクセシブルなエレメントのところに、ぽんとテーブルが入って、そこは矢印キーでもって、上下左右に自由に動いて読み上げができるというふうなエレメントに、多分なる。要するに、プレーヤーのほうの実装次第ですけれども。それに対応できる仕様になってると思うんですが、その辺り、テーブルについては特にどうなってるでしょうか。

村田
 テーブルももちろんHTMLのテーブルタグがありますが、そういう意味では、最初からタグ付けはされてるわけです。じゃあ、それで、それ以外の、例えばここは著者名であるとか、ここはイントロダクションだとか、そういういろいろ意味を表すタグがもっといっぱいあります。これは練習問題であるとか、ピアソンの提案はその辺もいっぱい入れていて、実際問題、リーディングシステムの動作が変わるかといったら、変わらないものがほとんどだと私は思ってます。
 ただし、彼らは自分でスタイルシートをつくっていて、そういうものを否定するとちゃんとしたレイアウトが出ますと。そういうスタイルシートもつくってるから、そういう情報を付けることに意味があるんですね。
 EDUPUBの仕様の一部としてそのスタイルシートが今提案されていて、確か、それをそのまま入れようという方針で、もう決まったはずです。ただ、それはピアソンのレイアウトであって、日本では全く使えないと思います。当然、ルビもなければ、後書きもないですから。ツールもいっぱい違うでしょうね。

河村
 その部分を、対応するには、そういうワーキンググループに日本語のそういう組版や何かの対応する技術を持った人が参加していって、仕様をもう少しきちんとつくっていかないといけないということですか。どうすれば、日本語対応がそこで可能になるんですか。

村田
 正直言うと、EDUPUBプロファイル、DAISYのときからそうですけど、EPUBタイプ属性の値の説明を見ても、何が何だか私にはさっぱり分からないですよ。ピアソンのスタイルシートが頭の中にあって、ピアソンのワークフローが頭の中にあったら分かるんでしょうけど、そうじゃない人があれを見て分かるかといったら、私は分かんないと思うんですけど、*さん、どう思いますか。


 一時期、私も見てました、そのピアソンのものを。教材として考えたときに足りないものって相当あります。それは日本語である、ないにかかわらず、初等中等を考えたときに、これはいるんじゃないのとか、あるいは、こういうふうな並びでというふうに、もうピアソンは最初から決めてるんですけれども、いや、そうじゃないでしょう。
 例えば、問題演習は章末にしか入らないって、もう定義してるんですよ、ピアソンは。なんだけれども、普通教科書を考えたら、例題とか入ってきますよね。そういうものがないんで、そういうところについてどうするのっていう話についてはですね、途中まではやってたんですけどね。
 弊社からもこれはどうするんだという話をちょっと上げてはいたんだけれども、出したタイミングの問題とかもあって、あんまり真剣に取り上げてもらえなかったんですかね、あれは。

村田
 どうも正直、私もあそこは投げてるんですけど。まず、私が教育がそれほど分かってるわけじゃないので、分からないという点もありますし、私以外で講談社さんがあの議論に参加しても、相当つらいと思うんですね。
 そういう意味ではあれも残念なピアソン案とオライリーのあれか、何だっけ、あれ。


 HTMLBook

村田
 そうそうそう。それが戦って、その後足して、あまり割らずに、それで、ちゃんちゃんというふうな、そういう仕様だと思ってますけど。


 EDUPUBは毎年アップデートするというような話をしてるみたいなので、取りあえず10月ですか。本当はフランクフルトのあれがちょっとずれたみたいなんですけど、取りあえずEDUPUB2014というかたちで、1回リリースはするんだけれども、その後毎年アップデートするというような話はしてるので、そのアップデートのタイミングで、今の初等中等とかに欠けてるような要素をまた入れてよというふうに話をしていくことは、できるんじゃないのかなと思ってはいるんですけど。

村田
 ちなみに、つい2日前か、昨日か、昨日の朝、サンプルをどうするんだという話になって、日本語のサンプルをぜひつくってほしいと言われまして、日本語の教科書で、そのEDUPUBの今のプロファイルを使ってつくれるかどうか、ぜひやってみてほしいとか言われて、はたと困るわけですね。
 教科書および教科書の断片でも、まずそれを入手できるか、私が。恐らく入手できないし、恐らく教科書会社の方も権利関係が難しくて口外できないと思うんですよ。だって、文科省事業のときでリフローでつくられた例も公開されてませんよね。
 実はきょう、お伺いしようと思ってたんですけど、IDPFに教科書の例として、これができるかというふうに、何か提供できるものってあります? 教科書の教材でも。


 レイアウトの複雑な部分、レイアウトというか、およびその他、検定も含めて複雑なところというのは、むしろ教科書会社の中の執筆のところなので、第三者の権利はあまり関係ないのです。第三者の(著作物)について、逆にそんなことはできないのです。
 例として、こういったかたちというかたちで示して、著作権絡みのところは別の何かで書き換えていただければ、例示はできます。

村田
 じゃあ、いただけると大変助かります。


 作品の中の一部が使われてるようなところだと、ちょっと扱いにくいけど。

村田
 ええ。教科書全部やるというのはものすごく大変なので、それはできないというのは分かってるんですけど、ごく一部でも、数ページでもいいので。


 複雑な型はものすごく数があって、1教科の中でもすごいパターンがあって、全部のパターンを挙げたら見当も付かないぐらいあります。

村田
 恐らく命懸けでやらないとできませんよね、EDUPUBにするといっても。


 実は明日から、その作業の指導のために出掛けるんですけど、取り上げられないようなページが出てくると思っていて、都度、都度検討というかたちになりそうなぐらい、非常に複雑です。
 国語の作品であっても、国語は比較的、全体の絵としては簡単に見えるんですけれども、文法事項の説明とおりになってくると、原点とか、引き出し線とか、いろんな記号が付いたりして、実は一番面倒くさい教科ではあるんですが。
 それは少なくとも、今示されているのは今の仕様では記述法では再現できないぐらい複雑なんです。

村田
 恐らく私は、EDUPUBのプロファイルは、日本で例えリフローでも、ほとんど使われないだろうなと、実は思ってます。フロントマターとか、そういう非常に当たり前のチャプターとかそういう絵を作るだけで、あとは何も使われないんじゃないかなと、私は思ってるんですけど、正直言うと。
 というのは、実際に文芸書だって今ほとんどEPUBタイプなんて使われてないんですよね。それからするとやっぱり、そうなっちゃうんじゃないかなと実は思ってるんですけど、*さん、どう思いますか。


ビューアーで表示をするときにどういうふうな表示をしたいのというところがあって、序文と、例えば、この章のあらすじみたいなものと本文のところを、体裁を変えたいというふうになるのであれば、さっきの、ピアソンのスタイルシートみたいなものを使うとともに、あらかじめEPUBタイプみたいな意味的なものを付けといたほうが楽だというのは、道理ではあるんですけれども、実際それをやるかどうかは分かりませんね、ベンダー側が。

河村
 なんか、結構重苦しい空気が。


 違う視点のお話いいですかね。EDUPUBということで、この中で、今DAISYをつくっていらっしゃる方も大勢居て、期待しているのが、きっと製作が楽になるんじゃないかと、これから。どうですか。

村田
 先ほどデジタルファーストという話もありましたけど、でも、一方で5年かかるとか、そういう話を聞くと、当面今の製作スタイルですね。文科省さんが楽してPDFテキストを入手して、ボランティアの方が難解なレイアウトを解読しながら作るというスタイルは、そこには光はないんでしょうか。


 さらに重苦しく。


 ちょっと、その辺を期待して、私はきょう参加しましたので。

河村
 ただ、もう一方で、*さんのほうで頑張ってくれてる差別解消法とか、いろんなかたち、いろんな場面での、障害者権利条約の実施ということが、一方であるわけですよね。だから、権利というのはよりよく確立される流れは決まったんですね。日本政府が批准したので。
 2年に1回、定期的にレポートを、障害者権利条約委員会というところに政府が出さなきゃいけないんですね。評価を受けるんですね。その中に教育なんていうのはものすごく重要な項目として、教育のところでどうなってるという、どういうふうに実施してるというのが評価されますし、カウンターレポートというのもいろんな国では出されてます。
 政府がこういうことをやってないというカウンターレポートを出して、もっと政府はちゃんとやるべきだというようなことを、その委員会の場で主張したり、サイドイベントで気勢を上げたりとかということが、実際に行われてるんですね。政府としては、あれは2年に1回ですよね、公式。


 最初は2年です。後は4年です。

河村
 レポートしなきゃいけないんですよね。


 次からは4年。

河村
 そういう中で、諸外国から見たときに、え、こんなこともまだやってないのとかっていう、格差が目立つようなことというのは絶対指摘を受けるということで、世界中で障害者の人権を守ろうというふうになっていく流れに、日本政府も入ったわけですから、悲観するばかりではないと。
 あとは、それをどう実施するかの問題で、私が今ちょっと思ってるのは政府刊行物、自治体の刊行物、これはみんな公的なもので、先ほどの、自分に読めるバージョンをくださいというふうに言われたら、義務規定で。


 そこを、過重な負担と抗弁することは困難であると思います。だって、持ってるんだから。

河村
 公的出版物もかなりの量になってますよね、今。それらには今ある技術で、できるんだったらやんなきゃいけないというのは、これはかなり義務として言っていけると思うので、教科書が技術的に無理だというふうになると、無理だというふうになっていっちゃうんですけど、ここまではできるということをだんだん詰めていけば、例えば、DAISY製作ボランティアがここまでのことをやってくれたら、もっとやりやすいんだけどという中に、PDFじゃなくてEPUBで渡してくれたら随分楽になるのにとかという部分はあるかと思うんですね。
 そういう、最終解決ではないけど、過渡的な解決方法というのは幾つもあると思いますし、そういう中から、また提案も出せると思うんですね。製作段階でこういうことをやったらどうかと。
 今日、お集まりの皆さんなんかで、きょうは第1回というふうに考えて、このあと、村田さんが孤軍奮闘するのではなくて、いろんな機会にお互いに意見交換、交流しながら、どうやって教科書だけではないと思うんですが、日本の出版文化が、誰も阻害しない、誰もがアクセスできるものになっていくのかというものに向けて、EDUPUBあるいはEPUBというものがベースになっていくという認識は、皆さん共通かなというふうに思うんですね。
 そこを、あと足りないところをどういうふうに力を合わせてつくっていくかということには、お金も必要ですし、協力も必要だと思います。特に、出版文化というような国の基本をなすものを、個々の企業が開発しないと何とかならないというのは、やっぱりちょっと変で、これはオール日本で、肝心なところを共同で開発して、共同で使っていくと。そこは、共通の仕様として標準化していくという流れを、アクセシビリティという観点からつくっていく、そういう機会になればと思って、きょう日本DAISYコンソーシアムでこの機会を設けさせていただいたんですが、大変、次からの課題がたくさんあって、みんなで協力しないとこれはできないことだというのが、ものすごくよく分かったと思うんですね。
 この後、日本DAISYコンソーシアムとJEPA、それからそれぞれの企業の皆さんとで、これから協力し合って、こういう議論をいろんな角度からし合う機会というものを設けていきたいと思いますので、今後、これを第1回というふうに考えて、また私どもから声を掛けることもあると思いますし、JEPAさんから掛けていただくこともあると思いますし、それぞれの方が、きょう集まった人の名簿は用意してありますので、こういう名簿を活用して、これからネットワーキングを活発に進めていただきたいというふうに思います。
 最後に、もう時間になりましたので、何か一言言いたいという方がおられましたら、アナウンスメントでも結構ですので、いかがでしょうか。


  あまり、こうあるべきだという大きなことは言えないんですけれども、例えば今の固定レイアウトに、出来損ないでいいからリフローを入れてくれとか、例えば、文科省の報告書の中にしろ、とにかくリフローが望ましい、そのうちマストになるかもしれない、何か1行を入れておくような方法は考えられないですかね。

村田
 私は委員会でそう言いますけど、通るかどうか知りません。


  いずれにしても、あんまりね、みんなで、完璧なものを出せ、出せというのは、なかなか難しいので、どこかに一言入れておくと、それがだんだんと出てきますからね。今、教科書会社の方に、しっかりしたものを作ってよなんて、それは無理な話だから、いろんな出版社もありますからね、腕のいいところからそうでないところまで。
 ですから、徐々にやっていかないと、それで、2020年か30年か分かりませんけど、その頃になると多分、法律も全部変わるだろうと思いますけどね。それまでの準備段階として一言どこかに、1行入れてもらうという運動でもしようかなと思ってます。

河村
 小さな一歩からやっていこうと。


  すみません、私もいいですか。

河村
 はい。


 すみません。最後になってしまったんですけど、私たち、リハ協が中心に、19団体でDAISY教科書を製作しています。今年は227冊作ったんですが、来年がとっても問題なんですね。というのは、来年、教科書の改訂が小学校はあるからです。
 日本のデジタル教科書の状況を見てみると、EPUBどころか、なかなかその標準化ができていかないし、かといって現在でてきているデジタル教科書がアクセシブルでもなさそうなので、このままDAISY化をしていく必要があると思っています。そのため、少しでも製作が楽になるような提案があれば、是非していただきたいなと思います。
 製作する上でレイアウトがすごく難しくてそれに時間がかかっていることも多いんですね。
 そのため、そういった部分で、もし提案とか、アドバイスをいただけたらいいなというのが最後のお願いです。

河村
 はい、ありがとうございました。