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シンポジウム 図書館におけるディスレクシアの人への支援

アメリカのディスレクシアの人々への支援について

渡部 美香(モンタナ大学障害学生支援センターコーディネーター(Disability Services for Students(DSS))

渡部美香氏 スライド1(スライド1の内容)

皆さん、こんにちは。アメリカのモンタナにありますモンタナ大学から来ました渡辺美香と申します。アメリカでどのような支援がディスレクシアの人々に行われているかということをメインに、お話をさせていただきます。よろしくお願いします。

まず、私のプレゼンテーションをする前に、自己紹介をさせていただきます。モンタナ大学に障害学生の支援センターがあり、そこでコーディネーターとして私は勤務をしています。

具体的には、障害を持っている学生と面会でミーティングをして、アメリカ障害者法(ADA)にのっとり、その学生が合理的配慮を得られる権利また資格があるかということを、まず、私が確認をします。そして、その障害を持っている学生と一緒に、例えば、ディスレクシアの場合は、どんな感じで、その学生にバリアーがあるかということを確認します。

例えば、本の読みが難しい、時間がかかる、読めるけれども、効率的に読めないということも確認をして、合理的配慮はどういうものを使えばいいかということを、私と相談をし、そしてアレンジをするという仕事です。

モンタナはどこですか?と小さい子に聞かれました。モンタナは、シアトルマリナーズをご存知かと思いますが、そのシアトルがあるワシントン州の右隣にアイダホ州があります。そのアイダホ州の右隣にあるのがモンタナ州です。カナダとのボーダーラインがあり、アメリカの北のほうにあります。そして、モンタナ大学というのは、州立の大学で、現在1万5000人の学生数を持っています。そのうちの約1200人が私の勤めている障害学生支援センターに登録をしています。これは、学生数の8パーセントが、モンタナ大学の障害学生支援でサービスを受けているということになります。

そのうち、ディスレクシアがあると名乗り出た学生は、およそ250人います。これは、私たちのセンターが提供するうちの20パーセントは、ディスレクシアを持っている学生ということになります。

皆さんの中にはディスレクシアってなんですかっていう方がいらっしゃると思いますので、少しだけ簡単に説明させていただきます。

ディスレクシアとは、学習障害の一つです。生まれつきの言語処理障害です。その流れで、読み書き、つづりなどに影響があって、アメリカでは、15パーセントの人がディスレクシアを持っているといわれています。私たちのオフィスでサービスの提供しているディスレクシアの学生が20パーセントということは、かなり多い数かと思います。

モンタナ大学の障害学生支援センターでは、デイジーの制作をしたり、教科書を電子版にするというサービスに特に力入れていれています。このようなサービスが受けられるというのを聞いて、全国各地からモンタナ大学に来たという学生の話をよく聞きます。

今回、私のプレゼンテーションでは、米国での支援例として、全国レベルの三つの図書館をご紹介します。そして、地方レベルとして、高等教育機関の図書館。これは、モンタナ大学ですが、そこでの具体例を紹介させていただきます。

今回のシンポジウムは図書館の方がメインと聞いています。図書館から情報提供というのも支援の一つです。そこで、米国にある全国組織支援である情報提供機関を紹介させていただきます。

渡部美香氏 スライド2(スライド2の内容)

渡部美香氏 スライド3(スライド3の内容)

まず一つ目は、日本語でいうと、「全国盲人身体障害者図書館サービス局」というところです。こちらをまず紹介させていただきます。英語でいうと、「National library for the blind and physically handicapped」といい、アメリカでは、「NLS」といわれています。

このNLSは、歴史が長く、1931年に設立されました。このNLSというのは、アメリカの国立図書館のことで、アメリカ議会図書館が運営をしています。統計によりますと、およそ80万人が利用者として登録をしているそうです。その80万人のうち、2012年は7.2パーセントの利用者が読み障害を持っているそうです。その80万人の登録の内訳は、7.2パーセントがディスレクシアを含む読み障害であります。一番多いのは、全盲です。80万人の40パーセントが全盲であります。そして、43.8パーセントが弱視。そして、5.8パーセントが身体、例えば手が不自由でページがめくれないというような障害を持っている人が利用をしているそうです。

渡部美香氏 スライド4(スライド4の内容)

そして、利用手続きは、申し込み登録が必要です。登録用紙に自分の名前を書いて、そして、医者の証明サインが必要となります。それを全部パッケージにして、NLSに自分の申込用紙を提出します。 2、3カ月ぐらいかかりますが、しばらくして、NLSから「あなたの登録は終わりました」という結果が来ます。そして、ようやく利用できるようになります。ただし、資格利用者に限られています。アメリカ在住、障害を持っているNLSの資格に満たしている人。グリーンカードを持っている人たちも資格があります。もしくは、海外に住むアメリカ人も利用できます。

これはつまり、NLSの利用者で、日本に住んでいるアメリカ人でも、この図書館サービスが利用できるのです。例えば、点字とかデイジー図書を借りたいというときに、オンラインでダウンロードして図書を借りられるようになっています。オンラインはちょっと苦手という方は、テープやカートリッジなどを申請することができます。 その場合は、それをアメリカから送ってくれるそうです。

渡部美香氏 スライド5(スライド5の内容)

先ほどもお話しましたが、NLSではオンラインでデイジー図書をダウンロードすることができます。そこで、一つご紹介したいのが、Apple機種対応の再生ソフトウエアで、「Braille and Audio Download(BARD)」という、「バード」と言われているものです。それをiTunesでダウンロードをして、スマホやこういうふうなiPadなどのタブレットを使ってデイジー図書を再生することができます。スピードを早くしたり、遅くしたりすることもできます。

また、テープとかカートリッジを使いたいっていう利用者も多いそうです。やはりコンピューターを使うのがちょっと苦手な方が多く、その利用者に、無料でカートリッジのプレーヤーを提供しているとのことです。

渡部美香氏 スライド6(スライド6の内容)

NLSの図書館のナレーションは肉声です。NLSのいいところは、ボランティアではなく、プロのナレーターがナレーションをやっているのです。だから、聞いていても、すごく上手です。

渡部美香氏 スライド7(スライド7の内容)

次に、二つ目の図書館の例として、「ブックシェア」を紹介します。このブックシェアは、先ほど紹介したNLSとは違って、有料で借りられるデジタル音声図書館です。オンラインでデイジー図書館を提供しています。つまり、カートリッジやテープなどは提供していないのです。現在のところ、3万人の利用者がいます。そして、30万冊タイトル以上の図書の在庫があるということです。

渡部美香氏 スライド8(スライド8の内容)

渡部美香氏 スライド9(スライド9の内容)

利用希望をする人は、先ほどのNLSと同様に、申し込みが必要です。その申し込みには、読みに障害があるという証明書を同封して、ブックシェアに送る必要があります。1週間か1週間半ぐらいで、ブックシェアから、メールで連絡が来ます。現在のところ、1年間の会費が50ドルです。

そして、日本在住の読み障害の人にも利用が可能です。このブックシェアは、肉声ではなく、テキストのみのデイジー図書が提供されています。そして、無料で、ブックシェアのウェブサイトから再生ソフトウエアをダウンロードがすることができます。また、タブレットや携帯で読む場合は、再生ソフトアプリを購入することもできます。

ブックシェアの在庫は25万冊タイトルあります。これは、どのようにブックシェアが、本を収集しているかというと、全国に本をデジタル化しているボランティアの人が多くいます。モンタナ大学の障害学生支援センターでも、ボランティアが教科書のデジタル化をしています。

ボランティアが作ったデジタル図書をブックシェアに使用してほしいと提供します。すると、ブックシェアがデイジーに直してくれます。それをブックシェアのウェブサイトから配布してくれるようになっています。そういったこともあり、25万タイトルがあるのかと思います。

渡部美香氏 スライド10(スライド10の内容)

そして、ブックシェアのいいところは、2007年に米国政府から助成金を受けたことです。その助成金のおかげで、年齢にかかわらず、資格のある生徒、幼稚園、小学校、中学校、高校。そして、大学生の会員の会費50ドルが無料になったのです。

アメリカでは、多くの大学などの高等教育機関に障害学生支援センターがあります。障害学生支援センターをDSSというのですが、ブックシェアの会費が無料ということなので、ここのスタッフが学生にブックシェアを使うよう、プロモーションをしています。ディスレクシアや、他に読みに障害のある学生などにブックシェアを使ってもらうようにしています。

次に、二つめの図書館の例は、ラーニングアライ(Learning Ally)を紹介します。

このラーニングアライもブックシェアと同じように、有料でのオンライン図書館です。このラーニングアライもデイジー図書を提供しています。1948年に設立という歴史の長い図書館です。

渡部美香氏 スライド11(スライド11の内容)

利用希望者は申込書、障害の証明書、そして、会費の支払いが必要になります。ブックシェアよりも少し会費が高く、119ドルの年会費が必要です。119ドルということは、1万2000円ぐらいになります。この金額では経済的に払えないっていう人も出てきます。最近は、3カ月のみ使用できる申請も可能になりました。その場合は、3カ月で49ドル。5000円ぐらいになります。

渡部美香氏 スライド12(スライド12の内容)

渡部美香氏 スライド13(スライド13の内容)

ブックシェアと違って、少し会費が高いので、それを配慮しているのか、支払いが困難な場合は、支払いができないという証明書を提出すれば、会費免除は可能ということです。ラーニングアライの在庫は2014年現在で、8万タイトルの図書があるそうです。そのうちの、65パーセントが小学校、中学校、高校、大学で使われる教科書を提供しています。

昔は、ラーニングアライの図書は、肉声の音声デイジー図書だけを提供していましたが、近年は音声とテキストが一緒になったデイジー図書をオンライン提供するようになりました。

これは、再生プレーヤーを使って読むと、読んでいるところがハイライトしてくれます。ブックシェアは、以前からマルチメディアのデイジー図書を提供していましたが、ラーニングアライでは提供がなかったので、私が担当している学生には、ものすごく評判になっています。

やはり分かりやすい、そして聞いているだけでは、どこ読んでいるか分からないということがありますが、見て聞いてというのがやはり分かりやすいというフィードバックをもらいました。

渡部美香氏 スライド14(スライド14の内容)

そして、最近では、図書を提供するだけでなく、情報提供支援ということも始めました。ディスレクシアの人への情報提供支援として、2010年からラーニングアライを利用する子どもたちの親への無料サポートサービスの提供を始めました。

具体的にどんなサポートかといいますと、親がラーニングアライに電話して、どんなふうに読み書きに関して、子どもが苦労しているのかということを相談したり、また、インターネットを使って、その学校への対応セミナーなどを行なっています。

またウェブサイトから、ディスレクシアの子どもを持つ親への情報提供をしています。例えば、ディスレクシアとはどんなものなのか、そして、ディスレクシアを持った子どもに対して、学校での対応、こういう配慮で提供したほうがいいですよといった情報も提供しています。

渡部美香氏 スライド15(スライド15の内容)

では、次に地方版を紹介したいと思います。ここまで三つの全国版図書館のことを紹介しました。地方版として、高等教育機関の図書館でのディスレクシアの人へのサービスを紹介します。モンタナ大学の図書館は、Audio formatと英語ではいいますが、音声ファイルがついていない本に関しては、図書館内にできたアクセシビリティセンターのサービスを通じて、本をスキャナーでデータ化してもらい、それをデイジーではありませんが、読むことができるPDFにし、ディスレクシアの持っている人に配布をするようになりました。これは実は去年からのサービスです。今、パワーポイントスライドで表示しているのはモンタナ大学の図書館のホームページの写真です。そのホームページの写真には「Accessibility service for library user」と書いてあります。モンタナ大学の図書館では、障害を持っている利用者へのサービスが少ない。そこで図書委員で障害を持っているスーサムソンという人が、何かをしたいというスーさんの希望が最近現実化となり、スーさんの配属されているアクセシビリティサービスでスキャナーとかを使って出版されている本を読むことができます。

渡部美香氏 スライド16(スライド16の内容)

渡部美香氏 スライド17(スライド17の内容)

モンタナ大学には、IT、いわゆるインフォメーションテクノロジーという部署があります。そこでスキャナーで読み取った画像をEメールで送ると、文字データ化をするサービスをつい最近提供するようになりました。

これはモンタナ大学を利用している人、つまりディスレクシアを持ってる職員、学生が、何かを読みたいが、でも、読むものがデータ化をされてない場合や、PDFがあっても、絵だけのPDFだったりする場合で、自分ではOCRを使用して文字データ化できなという人のために行っているサービスです。メールで、インフォメーションテクノロジーサービスに送ると、それをデータ化してくれるようなっています。24時間以内でEメールで本人に送られてくるというサービスを始めました。

モンタナ大学の図書館でデータ化しようとしても、ちょっと技術的に問題がある場合は、インフォメーションテクノロジーと連合をして、データ化をするようになっています。

ディスレクシア本人が、図書をテキストデータ化できるように、図書館にも高速スキャナーを配置しています。そのスキャナーは大きなスキャナーで、1秒かからずにスキャンできるようになっています。そこで、ディスレクシア持っている本人が、使うことができないともったいないので、図書館ではスタッフのトレーニング行っています。これは、図書館でこの本をスキャナーでとりたいのですが、どこに行けばいいんですか。といったことを、きちんと説明ができるように図書館のフロントの人だけではなく、アクセシビリティセンターの人も答えられるように、トレーニングを年に何回か行っています。

モンタナ大学では、去年から、読み上げソフトを学生、職員、全員に無料で配布するようになりました。その読み上げソフトというのは、「Read&Write Gold」といい、モンタナ大学のウェブサイトからログオンして、自分のコンピューターに読み上げソフトをインストールすることができるようになっています。

でも、その読み上げソフトを使用できないと意味がないので、モンタナ大学の障害学生支援センター、私が勤めているところでスタッフや、そして学生にもトレーニングを行なっています。

この背景には、2012年に、ある読み書きに障害のある学生がモンタナ大学に来て訴訟を起こしたのです。モンタナ大学としての対応は大変だったのですが、訴訟を起こしたから、そのおかげでシステムの基盤ができたのです。

今までは、障害学生支援センターだけで対応をしてきましたが、それでは限界があります。ディスレクシアを含む読み書き障害を持っている学生や身体に障害のある学生、視覚障害を持っている学生が、オンラインで授業を受けていて、教員が、ムードル(Moodle)というオンラインシステムに学生が読まなくてはならない資料などをアップロードします。教員が勝手にアクセシブルではないものをアップロードすると、学生が使えないということがおきます。それで、学生がすごく困ってしまったのです。

教員にきちんとスキャンをして、スクリーンリーダーなどで読み上げることが出来るようなデータをアップしてください。とお願いしても対応は遅いです。だから、読むまでに時間がかかって、試験ができなくなったってしまったということが何度か起こったんですね。

ここ数年の間にオンラインで授業を受けている人がかなり増えたのです。そういうこともあり、学生はこれじゃいけないとものすごく腹を立てたのです。

図書館でも、ライセンスをとって、オンラインでものを提供していますが、そのもの自体がアクセシブルなものを作ってないとすると、読みたいものが読めない。そして、これはモンタナ大学の責任じゃないかっていうことで、学生が訴訟を起こしたんです。

そのおかげでモンタナ大学でも、図書館にアクセシビリティセンターができました。そして、インフォメーションテクノロジーセンターでスキャナーを使って、OCRをかけてあげて、スクリーンリーダーで読めるように文書を変えるといったサービスをし始めたのです。

アメリカの教育省に「Office for Civil Rights」というところがあり、ここに、学生が不平を訴えます。そうすると、例えば2016年までにここを改善してください。という契約が送られていきます。それのうちの一つは、図書館のアクセシビリティな情報の改善とオンラインでカリキュラムを提供しているところの改善。そして、ウェブサイトの改善がありました。他にもいくつかあります。あと、2年の間にきちんと改善しないと、罰則があるのです。

こういったことがあったからこそ、システムが改善されていくので、いいことなのです。ただし、学長といった方々は大変たったとは思います。学生にとっては、自分たちの意見を正しい所で訴訟を起こすことができ、そして、システムが改善したということで、学生としてはとても満足しています。

渡部美香氏 スライド18(スライド18の内容)

では、次に、ディスレクシアの人の情報提供支援の一つとして、「National Center for Learning Disabilities」という機関を紹介します。

これは、1977年に、ニューヨーク市で設立をされた機関です。ディスレクシアのある息子を持ったお母さんが、ニューヨーク市で自分の経験を生かしてディスレクシアの子どもたちにどういうふうな苦労があるのか。どういうふうなサポートが必要なのかということを理解していたお母さん、名前は「ケリー・ロゼル(Carrie Rozelle)」といい、彼女が主体になって、NCLDっていうのが設立されたそうです。

年に1000万人の子ども、大人、家族に情報提供をしています。どのような情報を提供してるかといいますと、「ディスレクシアの早期診断」。こういうようなサインが子どもにあったら、ディスレクシアかもしれませんから、ちゃんと診断をしたらいいですよといった情報提供をしています。

渡部美香氏 スライド19(スライド19の内容)

そして、ディスレクシアの子どもをもつ親も、学校の対応はこういうふうにしたらいいですよといった情報提供もしています。ディスレクシアのある子どもたちの中には、特別支援学級に入る子どもたちもいますが、その特別支援学級に対して、親はどういうふうに対応していくのがよいのか。また、どのような交渉をすると、子どもたちがきちんとした教育を学ぶことができますよといったハウツーを提供しています。

そして、制作体制に関しても行なっています。システムをきちんと整備するということ、法律の調整に対しての促進も、このNational Center for Learning Disabilitiesで行って、力を入れているのです。

ここでは、ネットサービスをメインで情報を提供しています。それには、ディスレクシアを含む、学習障害の種類。学習障害とは、NCLDでは、読み書き障害。注意欠陥障害も入っています。あと自閉症も含まれていますが、それの種類の違いというのも説明しています。

そして、家族に対する情報として、障害を持つ子どもたちが、どういうふうな権利を持っているか、教育を受ける権利を持っているか、そして、その特別支援学級に対しての対応のハウツーガイドのようなものが、家族に対する情報として提供されているそうです。

渡部美香氏 スライド20(スライド20の内容)

そして学校への情報も提供しています。学校に対しての情報提供も行っており、ディスレクシアの生徒が学びやすい環境にするためのハウツーガイドを提供しています。

そして、学習障害、ディスレクシアを含む、学習障害のある大人への情報も提供しています。その情報は、就職活動の際に、どのように自分の障害を説明するべきか、いつ、自分の障害を話したほうがいいかといったハウツーガイドのような情報を提供しています。

最後に、学習障害の理解促進に何ができるかという情報も提供しています。パワーポイントスライドで今ご覧にいただいているのが、そのNational Center for Learning Disabilitiesのウェブサイトです。このNCLDでは、ビデオを使って、情報をかなり提供しています。そのビデオは、字幕が出るようになっています。とても素晴らしいことなのです。中には、YouTubeとかになると、字幕が表示されなくて、聴覚障害の人などでは使えないということが多いのです。このNCLDのYouTubeのビデオは、私が見ている限りでは、キャプションと英語ではいいますが、字幕が出るようになっています。このビデオを活用して、ディスレクシアのある人の体験談や、あと、家族からのアドバイスなどをアップしています。多分、日本からも見ることもできますので、ご覧ください。

渡部美香氏 スライド21(スライド21の内容)

渡部美香氏 スライド22(スライド22の内容)

そして、パンフレットをオンラインで無料配布もしています。Read Speakerという文書読み上げソフトが無料で利用することも出来、PDFのパンフレットもそのRead Speakerを使うと読み上げができるようになります。だから、耳で確認ができます。

以上、図書館と支援情報の提供の例を紹介しました。

では、アメリカは、恐らく日本よりも少し進んでいて、ディスレクシアの理解とか、サービスというのは進んでいると思います。けれでも、やはり、まだ今後の課題というのは残っています。その課題とは、やはり、他の海外、諸外国も含め、日本も合わせて比べて、理解は進んでいるかもしれないが、やはり、これからも理解を向上しなくてはいけない。

具体的には、最近起こったことですが、モンタナ大学で、ディスレクシアのある学生が、60人ぐらい、私がサポートをしていますが、1人の教員が、自分で作った文献をウェブサイトにHTMLでアップロードしたのです。けれでも、どういうコードを使ったのか分からないのですが、それを読み上げるソフトを使うとソフトがフリーズしてしまい、使いものにならなかったのです。教員自体も、どういうふうにして直したらいいのか分からない。簡単な文書だったらよかったのですが、絵があったりして、いろんなことが入り込んでいたので、多分、クラッシュしてしまったのだと思います。

渡部美香氏 スライド23(スライド23の内容)

そのせいで、その学生、とても苦労して、1日に50ページ読むといった授業だったのですが、1日その読むものが読めないと、100ページ、150ページと増えていってしまったのです。まだ、そういったこともあり、米国ではいくらディスレクシアの理解が進んでいるといっても、これからも、もっと理解を深めていかなくてはならないというのが、今後の課題だと思います。それも、一人一人に対してですね。

そして、そのアクセシブルな出版物に関しては、さらに増やしていくということが、今後の課題だと思います。そして、アクセシブルな出版物というものが、どういうものかという理解も広めていく。そして、その知識を広めていくということも大事なことだと思います。

デイジー図書のいいところは、ナビゲーションがあるということです。自分が行きたいところにちゃんとできるっていうのが一つの特徴だと思います。それの制作の知識、技術ということも、やはり必要であります。特に、数学、科学に関する教科書に関しては、難しいのです。問題だけでも作ろうと思ったのですが、イーテキストという、本、教科書をデジタル化する専門のスタッフが1人居るのですが、作り方を知らない。そして、そのトレーニング行きたいのだけど、トレーニングする場所がないということを彼女が言っていました。

だから、今のところ、恥ずかしいことですが、まだ、モンタナ大学では、デイジー図書で、数学科学に関しての書物は、まだデイジー化できていません。今後の課題、アメリカというより、私たちのモンタナ大学の問題であります。

今後の課題としてそういうデイジー図書を制作する知識と技術の向上っていうのは、本当に痛い思いをして感じています。

以上、どうもご清聴ありがとうございました。