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マイクロソフト社とDAISYコンソーシアムの協力 障害者の情報アクセスへの新たな展望

ゲイツ氏、視覚障害者と印刷字を読めない障害をもつ人々への情報をよりアクセシブルにするデジタル技術の重要性を強調

項目 内容
リリース元 マイクロソフト社
リリース年月日 2004年11月15日

目の見えない、または印刷字を読めない障害をもつ人々へのサービス改善のために図書館で実施された有効な手段を共有するため世界中の図書館の代表がマイクロソフトに結集。マイクロソフト会長ビル・ゲイツ氏は印刷されたデータまたは音声データをよりアクセシブルなデジタル形式に変換しインターネットを通じて配信するアイデアを模索するためにフォーラムに参加した。

教科書、人気小説、雑誌、毎日の新聞など95%以上の印刷物を読むことができなというのはどのようなことであろう想像してみてください。視覚障害者や従来の印刷された本を使うことが困難な上肢障害や学習障害を持つ人々など印刷字を読めない障害をもつ世界中の何百万という人々にとって、生活していく上で上記のような制限が事実としてある。しかし、そうだからといって必ずしも制限されるわけでもない。

先週、マイクロソフト・アクセシブル・テクノロジー・グループ(ATG)は「視覚障害者と印刷字を読めない障害を持つ人々のための図書館:デジタルな未来へ向けて」と題する3日間の国際フォーラムを開催し、世界中の図書館の代表を結集し、マイクロソフト会長で、チーフ・ソフトウェア・アーキテクトでもあるビル・ゲイツ氏が基調講演を行なった。

ゲイツ氏は、デジタル技術が従来の録音テープなどのアナログ形式に対して優れている点を述べ、デジタルに変換しコンテンツを配信するコストの安さや、図書館が情報の共有をすることがより簡単になること、より多くの人により多くの情報を届けることができるということを説明した。ゲイツ氏は、またデジタル形式が視覚障害者と印刷字を読めない障害をもつ人々のユーザ体験の向上をもたらすことが多くあり、インターネット上で、個々のユーザが同時に同じ情報にアクセスでき、文章の中からそれぞれの特定箇所の情報を探すことが容易になると述べた。

図書サービス向上のための新戦略

フォーラムは11月8日~10日の期間レッドモンドにあるマイクロソフト社の敷地内で開催され、視覚障害者と印刷字を読めない障害のある人々のための世界中の図書館より約75名の代表が集まった。参加者は熱心に図書館で実施された有効な手段を共有しサービスやプログラム向上のための新しい戦略について討論した。このイベントは1996年に発足し、世界的にアナログからデジタル録音図書への移行を主導しているDAISYコンソーシアムとの共催で開かれた。

マイクロソフト・アクセシブル・テクノロジー・グループ主任、マデリン・ブライアント・マッキンタイアー氏によるとフォーラム開催の目的は視覚障害者と印刷字を読めない障害をもつ人々のための図書館の蔵書をアナログからデジタル情報に変換する上で図書館が共通の戦略を持つように方向付け、ユーザがパーソナルコンピュータ、ポケットPCやスマートフォン等の手を使って利用する機器からアクセスできるようにすることに焦点を当てた議論を図書館間に喚起するためである。

「このイベントの最終目的は、討論の場を提供し、図書館がバリアのない未来への共通のビジョンを得て、アナログからデジタルへ移行するためにデジタル技術のインフラ整備の設計を始めることです。」とマッキンタイアー氏は述べ、「図書館の間で統合されグローバルに協力しあう手法をとることにより、印刷字を読めない障害をもつ人々に入手可能な本数の飛躍的な増加と情報にもっとすばやくアクセスすることが可能になります。」と続けた。

デジタルテクノロジーのもたらす新しい機会

これは単なる理論上の話ではなくなっている。2年前にゲイツ氏はマイクロソフト社の史上に残るアクセシビリティへの取り組みと、カナダ国立盲人協会(CNIB)におけるデジタル図書館の開発への貢献によりLouis Braille金賞を世界盲人連合より受け取った。この賞は、世界中の視覚に障害を持つ人の権利と自由の向上に対して多大な取り組みを行った個人に授与されるものである。

CNIBデジタル図書館は世界中でコンテンツの代替フォーマットにおいて最も先進的な図書館の一つである。CNIBデジタル図書館がサービスを始めた時105,000人以上のカナダの盲人または印刷字を読めない障害のある人々が何千もの本と雑誌そして40紙以上の新聞への瞬時のアクセスを獲得した。この新しい技術はCNIBの情報やリソースの配信方法に変革をもたらし、ユーザには、コンテンツへのアクセス方法の選択肢を与えた。

「技術は晴眼者がより簡単に情報にアクセスすることを可能にしますが、私のように盲人にとって技術はただ、アクセスを可能にするだけです。」とCNIB会長ジム・サンダース氏は語り、次のように続けて語った。「CNIBのデジタル図書館のおかげで、今は新聞が売店に届くその日に読むことができ、ベストセラーも郵便での配達を待たずに読むことができます。」

CNIBデジタル図書館は書籍目録やデジタル書籍レポジトリーを含む全てのオンラインサービスを二ヶ国語対応の一つに統合されたインターネットゲートウェイ上に提供している。オンライン図書館はChildren's Discovery Portalというポータルサイトも含んでおり、全盲の、あるいは視覚障害をもった子供達がオンラインゲームで遊んだり宿題の手助けを受けたり、オンラインで本の試し読みをしたり、本を読んだり、他のカナダにいる全盲の子供達とチャットすることができる。

マイクロソフトはCNIBデジタル図書館のソフトウェアの開発を盲人もしくは視覚障害者のアクセシビリティのニーズに応えられるように設計した。最先端の支援技術機器に対応しておりスクリーンリーダーや点字キーボードなどを使用することが出来る。またあらゆるバックエンドシステムとの相性も良く他の図書館も既存の技術インフラを考慮せずにこのソフトウェアを使用することが出来ることを意味する。

マイクロソフトはCNIBの図書配信システムのコンポーネントと技術仕様を盲人と印刷字を読めない障害のある人々のための図書館が使用したい場合に無料で入手出来るように計画している。図書館はソルーションの組み込みやカスタマイズにかかる費用は支払うことになるがソフト自体に対しての費用は全くかからない。

録音図書とマルチメディア出版のためのDAISY規格はこの分野を代表するもう一つの主導する技術であり、カナダCNIBや米国Recording for the Blind & Dyslexia(RFB&D)を含む図書館によって評価され次々採用されている。DAISYコンソーシアム事務局長ジョージ・カーシャー氏によるとコンソーシアムの構想は全ての出版された情報が印刷字を読めない障害のある人々へ紙の出版と同時に余計なコストをかけず入手可能とし、アクセシブルな機能豊富なフォーマットを備え、提供され使い勝手も簡単に操作することが出来るようになるというものだ。

「盲人がDAISY録音図書を読む際の機能は晴眼者が印刷物を読む事ととても似ています。」と、カーシャー氏は語った。「章や節を簡単に出すことが出来ますし、文章を閲覧して、つまらないところはとばして読んだり、興味のあるところに戻ったりと複雑な印刷物ですることはすべて実行できます。」

特別なニーズとメインストリームを繋げる

ゲイツ氏によると、適切な技術は問題解決のごく一部分にすぎない。

「マイクロソフト社のビジョンは、全ての人のエンパワーメントです。」とゲイツ氏はキーノート講演の後に続いた質疑応答のセッションでそう述べた。また「盲人または視覚障害者が社会的な力を発揮するためには我々のソフトウェアが幅広いアクセシビリティ機能を組み込みスクリーンリーダーやその他の支援技術機器と一緒に使うことが出来ることを保障する必要があります。そして世界中の図書館、出版社とともに印刷字を読めない障害のある人々のバリアを取り除くために共に取り組んでいくことを意味します。」と続けた。

盲人や印刷字を読めない障害のある人々のためのグローバルな図書館の前に立ちはだかるバリアの一つに配信やデジタルデータの保存に関する共通の世界規格が確立されていないことがある。世界中の図書館は蔵書をアナログからデジタルに変換しようとしているが、規格の欠如が多くの重複作業を生んでいる。

多くの図書館が限られた人材等の資源を同じ作業のために充てているためにデジタルコンテンツを提供できる量は非常に限られている。それに加え出版社やその他のコンテンツ提供者と同様に多くの図書館は他で使っているシステム上で使えるように設計されていないフォーマットや技術を利用している。これは図書館がコンテンツを自由に共有出来るというデジタル化による主要な恩恵の一つを受けることを不可能としている。

もう一つ欠如している点は著者や出版社の知的財産を守る著作権の法律を各国間で調整する効果的な方法がないという事である。例えば米国の著作権法は図書館にほとんどの出版物を盲人が使う目的では著作権使用料を払わずに複製することを許可しているが、これは米国内でしか適用されない。マイクロソフト社主催のこのフォーラムは図書館の代表に国境を超えリソースを共有できる取り決めを交わしたらどうなるか考える機会を与え、各国の著作権法を尊重し内包しつつ解決していくグローバルな解決法を提示した。

ゲイツ氏はフォーラムに参加する図書館代表達に盲人と印刷字を読めない障害のある人々のための最高水準のデジタルソルーションをなるべく一般市場で使われているソルーションに沿った形に調整し追求するようにアドバイスを与えた。

「我々は一般市場と特別なニーズを結びつけるかけ橋を創る必要がある。」ゲイツ氏はそう述べ、また「多様なデジタル情報に多様な機器でアクセスできるという利点は視覚障害だけのものではない。特別なニーズのためになされる先進的な今日の努力は明日の全てのユーザの広範な利益になりうる。そして両者がつねに接近していることによりコストを押し下げ開発を加速することを可能にする。」と述べた。

ゲイツ氏はフォーラムで図書館が新技術の活用による配信の向上、アナログからデジタルへの変換、そして盲人と印刷字を読めない障害のある人々によりよいサービスとより多くの情報を提供していくためにマイクロソフト社はあらゆる努力を惜しまず関わっていく意思を再確認した。マッキンタイアー氏はマイクロソフト社のマイクロソフト・アクセシブル・テクノロジー・グループがこの分野を主導していく事を約束した。

「図書館は避難所のようなものです。」マッキンタイアー氏はそう述べ、さらに「フォーラムで議論した諸問題を解決することを我々が手助けできればデジタル図書館を盲人と印刷字を読めない障害のある人々にとっての避難所にすることが出来ます。それは一所懸命に働いて目指すゴールとしてとても価値のあるものです。」と述べた。

(注)英語での原文は以下のURLで見ることができる。

  http://www.microsoft.com/presspass/features/2004/nov04/11-15LibrarySummit.asp

翻訳:(財)日本障害者リハビリテーション協会情報センター