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アクセシブルなパワーポイントのガイドライン

視覚障害あるいは印刷物を読むことに障害がある視聴者のために、パワーポイントその他の視覚的なプレゼンテーションの使用をアクセシブルにする方法に関するガイドライン

世界盲人連合(WBU)発行

項目 内容
発行年 2007年

セクションA :視聴者

演壇に立つときには、視聴者が本当は大物実業家や見込み客、あるいは公務員で構成されているのではなく、あなた自身と変わらない人たちの集まりなのだということを覚えておいてください。つまり、メガネやコンタクトレンズが必要な屈折異常を抱えている人もあれば、弱視や全盲の人もおり、また中にはディスレクシアや色盲のように、印刷物を読む上で問題となるほかの障害を抱えている人もいるという意味です。このような人たちに共通しているのは、これから始まるプレゼンテーションを理解し、インパクトのある内容のすべてを吸収するのが難しいということです。

このガイドラインでは、プレゼンテーションの内容とその発表手段を、すべての視聴者にとってできるだけアクセシブルにすることを確保し、そのインパクトを最大限に発揮させるための簡単なガイダンスを提供します。

忘れてはなりません。世界保健機関によれば、現在世界には3億1400万人の視覚障害者がおり、3700万人は全盲で、1億2400万人は矯正しても弱視であり、1億5300万人は、屈折異常を矯正していないために遠視力に問題がある視覚障害者です。さらに、人口の4%近くが重度のディスレクシアに苦しんでいると一般にいわれています。視聴者には視覚障害者が含まれている可能性があり、その障害はこれらすべての種類にわたっているのです。

セクションB:弱視、色盲、およびディスレクシアの人への支援

「弱視」は、見る能力を表すスペクトラムで、安全に移動することができるすぐれた周辺視野があっても読むことが難しい場合もあれば、視野狭窄がありながらも拡大鏡を使用して読むことができる場合もあります。このため、パワーポイントやOHPを使用する場合は、以下の点に留意してください。

広い部屋の後ろからでも容易に見えるように、コントラストの強い配色を使用します。暗い背景に白い文字、あるいはオフホワイトの背景に暗い色の文字を使用することが勧められます。純白の背景は、弱視やディスレクシアの人々にはまぶしく、不快感をもたらすことを覚えておくとよいでしょう。

視聴者一人一人の視覚レベルが異なっていることなど、さまざまな理由から、投影するテキストを最大限読みやすくする、一番よい色の組み合わせを特に決めることはできません。ただし、複数の色からなる背景は決して使用しないようにしてください。もし背景に画像を入れることが望ましい場合は、低輝度の画像だけを使用します。さもなければ、テキストが非常に読みにくくなってしまうからです。

プレゼンテーション用スライドの作成

このセクションでは、以下の点に関して望ましい方法を検討します。

  • フォントサイズおよび1枚のスライドに載せるテキストの量
  • 書体
  • 色および明るさのコントラスト
  • 図表やグラフの使用方法
  • 動画
  • スライドについて口頭で説明する方法
  • 参考となる配布資料

1. 望ましいフォントサイズおよび各スライドに載せるテキストの量

1枚のスライドに載せる量は、ほんの2,3行の文章か、あるいは5つから7つ以下の箇条書きがよいでしょう。左揃えにし、1行につきおよそ5語もしくは6語だけにするのが理想的です。読む際の「字詰まり」効果を防ぐため、行間を十分にとる必要があります。

テキストは、ホール前方の席に座っている弱視の人の大部分にも、また後方の席に座っている正常な視力の人にも読めるよう、十分大きな文字にしなければなりません。そこで、スライド上では行間を1.5にし、テキストは6行以下とすること、四方にヘッダーあるいはフッターなどとして1インチずつマージンをとることが勧められます。これは文字サイズを48ポイントとすることによって実現できます。長い単語のためにスペースを多くとる必要がない限り、このサイズを推奨しますが、決して32ポイントより小さいサイズは使用しないでください。

弱視の参加者にとっては、すべて大文字を使用するよりも、大文字と小文字を混ぜて使用したほうがわかりやすく、有効です。

2. 望ましい書体

弱視の人は、ひげ飾りのついた書体のテキストを読むのが難しいので、‘Times New Roman’のような書体よりも、Helvetica、ArialおよびVerdanaのような、ひげ飾りのない書体を使ってください。

イタリック体も、弱視の人には読みにくく、また正常視力の人にとっても読みにくいので、使用を避けます。

1枚のスライドに2種類以上の書体を使用しないようにしてください。テキストの一部を目立たせたい場合は、注意をひくために、その部分に大きいフォントサイズを使用するか、あるいは太字を使用します。

プレゼンテーションの見出しを付けたヘッダーやページ番号など、スライド上の情報が発表者にとってのみ重要な場合は、それをできるだけ小さくし、視聴者にとって重要な情報のためにスペースを節約します。

3. 色および明るさのコントラスト

これについても、人によっては、色のコントラストによって見え方が良くなる場合がありますが、弱視の医学的な原因はさまざまで、それによって色の組み合わせに対する反応も違ってきます。

背景と前景の二つの色について、弱視の人にとって望ましい色のコントラストをもたらす組み合わせがあるということを考えたことがありますか?

下に紹介するリンク先は、非常に役に立つオンラインツールです。

このリンクを開くには、コントロールキーを押しながらクリックをしてください。
 http://www.snook.ca/technical/colour_contrast/colour.html
このツールを使用するには、ForegroundとBackgroundのカラーボックス内のスライドバーアイコンをクリックしてください。アイコンをスライドさせて希望するForegroundおよびBackgroundの色をそれぞれ表示し、Results Boxの一番下に’Yes!’と現れるのを目指します。

コントラストには、明るさのコントラストと色彩のコントラストの2種類があります。明るさのコントラストが最も強いのは、黒と白の組み合わせです。物体は補色の関係にあるとき、最も強い色彩のコントラストを示します。

補色の関係の例としては、赤と緑、黄色と青の組み合わせがあげられます。

フルカラーのコントラストには、明るさのコントラストは含まれません。このため色盲の人にはフルカラーのコントラストを識別することができないということに気をつけてください。ですから、スライドではコントラストはおもに色ではなく明るさで出さなければなりません。

多くの人々がまぶしさを苦手としていることを考慮し、弱視の人や高齢者のために、暗い色(低輝度)を背景に、明るい色(高輝度)をテキストに使用するようにしてください。濃い青色の背景に白い文字というのが大変よい組み合わせです。

画家やデザイナーは、弱いコントラストを使用することを好む場合が多いのですが、もしあなたもその一人なら、そのようなテキストは高齢者や弱視の人にとっては読みにくいということを覚えておいてください。さらに、光の状態が悪ければ、誰にとっても読むことが難しくなる可能性があります。

前述のように、色のコントラストが強くても、明暗のコントラストがないテキストは色盲の人には読むことができません。特に、色盲の人は赤と緑を知覚するのが困難で、赤い背景に緑の文字で書かれたテキストを読むのは難しいのです。ですから赤い背景にすることが重要な場合は、濃い赤を使用し、白い文字にする、あるいは緑の背景にする必要があるなら、黄緑色の背景に黒い文字を使用するのがよいでしょう。

多くの色盲の人々は赤を見分ける力が弱いということを覚えておいてください。ですから、赤い背景に黒い文字を使用したり、黒い背景に赤い文字のテキストを使用したりしないよう、提案します。

4. 図表やグラフ

図表やグラフがある場合は、できるだけ簡単なものにします。上記のように、テキストの場合と同様、色を対比させるためには明暗のコントラストを利用します。

図表中のテキストにはひげ飾りのない書体を使用し、一枚のスライドの中で2種類以上の書体を使用することは決してせず、イタリック体の使用も避けます。

5. 動画

動画の使用は弱視の人を非常に混乱させるので、最小限に控えてください。

6. スライドの口頭説明

自己紹介をするときに、セッションの形式と、質問をいつ(セッションの途中か最後か)受けるかを説明してください。質問を受けたり、何かを説明したりするために、途中で中断する心づもりがあるかどうかをはっきり示してください。

スライドで紹介されるテキストをすべて発表者が声に出して読み上げてくれれば助かります。なぜなら、前方の席に座っている弱視の人の中には、テキストや図表がまだ小さすぎて見えないという人もおり、また、大勢の視聴者の中で後方に座っている正常な視力の人の中にも、同じ問題を抱えている人がいる可能性があるからです。

後方の席に座っている、単眼の弱視の人や視野狭窄の人、読むのに時間がかかる人などは、どこから読み始めたり、見始めたりしたらよいのか、場所がわかりにくい場合があるので、図表やグラフの説明をしてください。

発表者はスライドのどの部分について話しているのか、はっきりと伝えてください。話している部分を小さな光の矢印で示すのは、完全に見える人にとっては有効ですが、弱視、または視野が限られている人にとっては、矢印をすぐに見つけることができないので十分であるとはいえません。

視聴者がスライドのどの部分を見たらよいか分かるように、スライドの内容を表現力豊かに説明することは有効です。たとえば、「画面上に四つに区切られた図があります。右下の部分は・・・・」というように。

棒グラフの凡例など、図表の中には、正常な視力の人でも常に理解しにくい部分があるということを承知しておいてください。ですから、スライドについて別の表現を使って説明をすることが勧められます。たとえば、「このスライドでは、結果が棒グラフにまとめられています。左側の棒グラフは、実験条件下のデータで、右側の棒グラフは・・・・」というように。

視聴者の誰もが長い文章を読むことができるわけではないということを知っておかなければなりません。ですから、スライドのテキストを、ゆっくりそしてはっきりと読んでください。一言も省略しないようにし、自分自身で読みたいと考えている人すべてに、次のスライドに移る前に必ず読む時間を与えるようにしてください。

たとえば根本的な概念の定義など、長文のテキストが極めて重要な場合は、あとで配布資料を読み返すよう伝えてください。

7. 配布資料

発表の前に、特に弱視およびディスレクシアの参加者のために、スライドのコピーをスライドで提示されない重要な情報と併せて常に配布してください。セッションの最初に提供される配布資料は、参考になり、役に立ちます。また視聴者は、さらにメモをとる必要があるかどうかを判断できるでしょう。

グレースケールの印刷では、色が失われてしまうことを配慮してください。これが、テキストおよび図表を背景と対比させる基本的な技術として、明暗のコントラストを使用するもう一つの理由です。

読みが難しい人のために、必ず、スライドの全面をコピーした資料を十分に用意するようにしてください。

セクションC:全盲の方への支援

  1. 資料を点字、CD、あるいは全盲の視聴者が自分のラップトップにダウンロードできるようなメモリースティックで用意してください。これによって、もし全盲の方がパワーポイントによるプレゼンテーションを見ることができなくても、あるいは配布資料を読むことができなくても、少なくとも発表に参加したほかの視聴者と同じ情報にアクセスすることができるということになります。
  2. もし何かを見せるのなら、その内容を口頭で伝えてください。その際、自分の発表内容をラジオで聞いたらどうなるかを想像してみてください。意味は分かるでしょうか?また伝えられた情報はすべて完全に理解できるでしょうか?
  3. 視聴者に向けてパワーポイントのプレゼンテーションをしながら話をする際には、名詞を使用してください。「これ」は「あれ(『もう一方』よりはましですが)」の原因となる、というように、代名詞を単独で使用するのは、ガソリンのない自動車同然、役に立ちません。

セクションD:結論

WBUは、視覚資料の使用が現代のプレゼンテーションにおける標準的な特徴であり、それには独自の様式および独自の色彩を盛り込む必要が多々あると認識しています。ですからこのガイドラインは、法による規定を目的とするというよりはむしろ、好事例の提案であるといえます。このガイドラインは、ユーザーが視聴者全員の参加を得るための手助けをし、それによってすべての視聴者に対してプレゼンテーションのアクセシビリティを最大限に発揮させることを目的としているのです。

付属のPPTファイルでは、このガイドラインを使用した場合と、使用しなかった場合の違いを紹介しています。

このガイドラインの著作権および使用条件
©Copyright World Blind Union 2007

このガイドラインの著作権は世界盲人連合(WBU)にあります。すべての関係者は、世界盲人連合のクレジットをつけることを条件に、このガイドラインの全文を複製することができます。

このガイドラインは、英国ディスレクシア協会の後援のもと、世界盲人連合弱視作業部会により作成されました。

さらに詳しい情報は、WBU 弱視作業部会へ。

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