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母親が語る『発達障害のある大学生、ユニコと歩む日々』 その10

民間療育機関のプログラム

通級以外に、ユニコは小学校4年生から2年間、民間療育機関のプログラムの集団クラスに参加していた。

この機関では、療育のほかに、相談、検査はもちろん、本人とカウンセラーとの1対1の面談もあり、年齢や状態に応じた支援が受けられる。

集団クラスでは、こんなことをした。

近くのファーストフード店に行って、自分で注文し、みんなで食事会

ちょっとした工作

暗黙のルールの確認

ストレス解消方法の紹介

いわゆるソーシャルスキルを中心に、それぞれの困り感に対する解決策を探して、身に付けていく練習である。

子どもたちがこんな活動をしている間、

付き添いの親たちは、近所のファミリーレストランでお茶を飲みながら、

同じような苦手さを持つ子どもたちの、日々の悩みをわかちあった。

通級と同じように、

この時間を持つことで、親も救われた。

愚痴を言い合うこともあったが、

うまくいった方法や、役に立つ情報の交換

何よりも、深い共感

大変なのは自分だけではないのだと励まされた。

少し年齢が上のお子さんを持つ方の話は、

これからのことに備えるきっかけになった。

どんな形でもよいが、

親同士のつながり、支え合いの場があるのはとても心強い。

中には、中心となってこういう場を立ち上げ、運営していく、行動力のある親御さんもいて、本当に頭が下がる思いだ。

ユニコのような子どもを育てながら活動するのは、なかなか大変だが、

それぞれが無理のない形で

こういう集まりに思い切って参加してみたらよいと思う。

療育プログラムについては、

参加してみないことには、その子に合ったものなのかどうかわからない。

また、子どもの状態が変われば、プログラムの効果も違ってくるだろう。

ユニコの場合、

ある日の療育の様子の録画映像を見て、

問題行動(指かじり)が普段以上に激しいことに気づき、

少なくともその時点では、プログラムへの参加がストレスになっているように感じられたので、参加するのをやめた。

どんなに優れた療育プログラムでも、子どもの様子を見ながら、参加するかどうか、続けるかどうかを判断しないと、

実はかえってストレスをためていて、逆効果ということもある。

その後利用した本人面談では、個別の問題への解決策を提案してもらうなど、有意義な支援を受けられた。

当時のユニコには、集団療育よりも個別面談の方が合っていたのかもしれない。

年齢、性格、そのとき抱えている問題の種類によって、

相談(面談)がいいのか、療育がいいのか

療育なら、集団形式がいいのか、個別形式がいいのか、

しっかりと考え、時には臨機応変に切り替えなければならない。

今はさまざまな機関が、学習、職業訓練、ソーシャルスキル、読み書きの問題などに関する独自のプログラムを提供しているので、

このような機関が利用できる状況にあれば、幅広く検討・活用できるのではないだろうか?

ユニコに聞いてみた。

療育プログラムのことで、何かコメントはある?(ユニコにはあいまいすぎる質問だった…反省。それでも頑張って答えてくれた。)

―― 通級との違いが、今一つわからないね。ひたすら遠かったことだけは覚えている。もう永遠に着かないかと思った。(家から地下鉄で1時間くらい。暗闇の中を1時間近く乗っていたので、とてもつらかったのだろう。これも反省。)

確かに、今思えば、通級に通っていたのだから、わざわざ遠くまで療育を受けにいかなくてもよかったのかもしれない。

でも、当時は藁にもすがる思いだったのだ。

ファミリーレストランでのあの時間も、絶対必要だった。

許してくださいな、ユニコさん。

<ユニコからも一言>

この療育を受けた場所については、とても遠かったという印象が強い。今だったら、高校生の時に遠距離通学を体験したから、普通に通えると思うけれど、当時の私からしたら、とにかくとても遠かった。月曜日から金曜日まで小学校で勉強するのはどの子もやっていることだ。だが、そこで疲れた体と心を週末に休められないというのは、なかなかにストレスがたまった。もし同じように家から遠くの療育プログラムに参加させようと考えている親御さんがいたら、見通しをたてられるようにしてあげることをお勧めする。先が見えるだけでも、だいぶ気分が落ち着き、ストレスもたまりにくくなるのだ。

療育プログラムの内容自体は、とてもためになったと思う。そこでお店での注文の仕方などを覚えたおかげで、普通の人からしたらぎこちないとは思うけれど、注文もできるようになった。療育に行くのは、交通費もかかると思うし、それ以外にも療育プログラム自体にもお金がかかると思う。だけど、絶えず「変」とか、「おかしい」とか言われてきた障害のある子どもにとって、自分と似た子どもに会えるというのは、大きな心の支えになる。ためらっているなら、参加してほしい。