音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

日英NPOフォーラム-共生のコミュニティにおける民間非営利組織の役割と経営-

NPOの役割と経営

山岡義典氏

山岡義典 (日本NPOセンター常務理事兼事務局長)

 ご紹介いただきました山岡でございます。
 きょうの私の話は、この後引き続いて行われるイギリスからおいでいただいた方のお話の前座でございまして、日本の状況を理解しておいた上で、我々がまたイギリスの話を聞くということを通じて、より一層この後の話が理解できればということで、30ほどお話をさせていただきます。
 きょう、ここでこうして行っているというこの会は、恐らく1年前にやる会、あるいは1年後にやる会と比べまして違うわけでございます。これはいつだってそうなんですけれども、今やるという、今、行っている意味ということがございます。とりわけ、私はこの時期、重要な意味を持っているタイミングだなと思っております。
 「はじめに」のところに、私のレジュメに書いておりますけれども、今、日本の社会の仕組みは大きく変わりつつあります。地方分権一括法というのがこの4月に通りまして、国と自治体の関係が大きく変わりました。「変わりました」と言っても制度的な構造が変わっただけで、まだ実態は変わっておりませんけれども、変わっております。これは地方分権ですね。この4月1日から歴史に残る一つの出来事だと思います。
 これはこれで制度の問題ですから、えいやっと4月1日からやればいいわけなんですけれども、それだけではなくて、私はこの地方分権がただの地方分権、行政間の権力の移行だけでは余り意味を持たない。これは何かと言いますと、地方分権はそれに引き続いて起こってくる市民分権、市民への様々な権利の委譲、あるいはさまざまな仕組み、政策、そういうものが国・県を通してやってまいりましたけれども、これからは市民の力でそういうものをつくっていく。そのことが重要になってまいります。これを私は「市民分権」と呼んでいるわけでございます。この地方分権という行政上の分権、それから行政から市民への分権、これを一緒に合わせて地域分権、地域に任されるんだと。地域の中には行政組織もあればNPOのような民間の団体もある。あるいは企業のような団体もあるということでございます。地域で新しい問題解決をしていく時代。前から言われていたわけですけれども、実態としてはそれが徐々に見え始めているということでございます。
 それから第2の点は、介護保険の制度がこの4月から実施されました。私どももいろいろな介護保険の現場を訪ね歩いて調べておりますけれども、ある種の戸惑いはありながらも着実に日本社会に定着していくと思います。これは日本の福祉の仕組みを大きく変えました。これとあわせて、高齢者の介護だけではなく社会福祉全体の構造が変わります。今年の6月に、社会福祉事業法が改正されて、社会福祉法になりました。この社会福祉法によって、福祉の構造はかなり変わると思います。それに制度以外のさまざまな、制度にのっとらないさまざまな福祉サービスがNPOによって行われると、こういう介護保険と福祉の基礎構造改革。それと、そういう制度以外のさまざまなサービスを通じて、新しい福祉が実現する。今年の4月1日が、その第1歩であったということですね。今、変わりつつある。日本社会はそういう面で大きく変わりつつあります。
 そういう中で、地域分権にしろ、新しい福祉にしろ、大きな役割を果たすのがNPOである。この認識が次第に日本全国、かなり草の根レベルで広がりつつある。そして、地方行政においてもこのNPOとどういうおつきあいをすべきなのかということが、今、日本各地で議論されております。
 そのような日本各地のこのうねりのような動きの中で、きょう、この会が行われているということを認識していただければと思います。  NPOに関連している幾つかの言葉が、私どもの周りにに飛び回っております。このことについて、ちょっと整理しておきますと、NPOはnonprofit organization、きょうのタイトルには「民間非営利組織」と書いてあります。これがNPOのことですね。nonprofit organization、それだけを訳すと非営利組織になりますけれども、governmentも非営利組織なんですけども、governmentのことはNPOと言わないわけでございまして、ですから日本語に訳すときは民間非営利組織というふうに言うのが正しいと思います。
 これは企業ですね。営利組織。for profit organization。for profit、利益を目的とした組織に対する言葉でございまして、アメリカで生まれた言葉でございます。恐らくイギリスではvoluntary organizationだとか、あるいはcharitable organizationというような、あるいはcharityという言葉で用いられているものが、このNPOに当たると思います。国によって制度や文化がまるで違いますので、なかなか言葉は置き換えにくいですね。NPOという言葉自身はアメリカの文化、アメリカの制度を背景にした言葉でございまして、なかなかこれに当たる日本語がないということで、これをこの5年ぐらい前から日本社会は使い始めたという状況でございます。
 NGOという言葉が、今から20年ぐらい前に日本に入りました。これは、non governmental organization、政府ではない組織ということでございますけれども、政府でなければ企業もNGOか。企業はNGOと言いません。基本的にnonprofitであるということが前提になりますので、NGOもNPOも基本的には同じものを指しております。  ちなみに、中国とか韓国では、私どもがNPOと言っているものをNGOと呼んでおりますね。NGOのほうが一般的かもしれません。しかし、利益を追求するものではないという言い方と、政府とは違うんだという、どちらを強調するかによってこの言葉の使い分けが行われておりますけれども、何々でない、利益ではない、政府ではないという言い方ではなかなかこの組織のアイデンティティーが示せない。ましてやNPO、NGO、ややこしい。どう違うんだ。そういう中で、最近ではCSOという言葉を使おうではないかという提唱がなされておりまして、実際、かなりアジアでもアメリカでもヨーロッパでもそうだと思いますが、日本でもCSOという言葉が少しずつ目についてまいりました。これは、civil society organization、市民社会をつくっていくための組織というふうに理解したらいいと思いますね。市民社会組織、そういう呼び方もしております。
 そのほか、NPOと言いますと、きょうの主催者の高齢者・障害者ケア開発協力機構、これもNPOですね。法政大学もNPOでございます。私立大学、アメリカのハーバード大学、イギリスのケンブリッジ大学、みんなNPOですね。国立大学はNPOではないんですけれども、私立大学は広い意味で言うとNPOです。ただ、今日本でNPOというときに特に注目されているのは、市民活動団体。市民一人一人のイニシアチブによって、市民のサポートによって行われているさまざまな活動、それを行うorganizationを日本語で市民活動団体と呼んでおりますけれども、これがNPOのうち特にとりわけ現代社会において大きな意味、役割を期待されている。そして、新しく元気な活動がそこから生まれつつあるということが言えるかと思います。  そういう中にあって、1998年の3月にNPO法(特定非営利活動促進法)という法律ができて、そういう市民団体、従来は任意団体、法人格のない任意団体であった市民活動団体が契約主体になれる。法人格を簡単に持つことができる。政府のコントロールがない形で法人格を持つことができる。そういう制度がやっと実現したという状況でございます。日本では古い伝統でさまざまな町内会とか、あるいはその町内会、地域に根ざした子ども会だとか老人会、青年団、あるいはまちづくりのための会とか、いろいろ地域に根ざした組織がございます。これも皆さんが自発的に参加して、社会のために積極的な働きをしようということになれば、これもNPOの仲間になるのではないかなというふうに思っております。  この辺の定義の問題は、かなり文化の問題とかかわってまいります。歴史の問題ともかかわってまいります。ですから、細かく言い出すと非常に難しい問題がありますけれども、一応、前触れとしてご説明させていただきました。
 では、地域社会、コミュニティの中でNPOはどのような役割を果たすべきなのかということでございます。10年ぐらい前、もう少し前でしょうか、1980年代の初め、20年ぐらい前と言ったらいいでしょうか、私どもNPOという言葉を一般には使っていませんでしたけども、専門家の間ではよく使っておりました。こういう話をしますと、民間が営利に結びつかない活動をやることなんか、必要ないのではないかと、よく言われました。そういうことは政府にやらせればいいのではないか、なぜ民間が儲からないことをやるのか、民間は儲かる仕事をしてちゃんと税金を納めて、儲からない仕事は政府がやればいい、こういう発想が明治以来、日本では百数十年続いてまいりました。戦後もそういう思想が非常に根強かったわけでございます。ですから、「民間は営利を追求する。企業で企業活動をしっかりやりなさい。そして、それで利益が上がったらきちんと税金を納めなさい。儲からない仕事は全部公共でやりましょう」そういう流れの中にあって、少しずつ民間が儲けにならない活動をやることが非常に重要な意味を持っているんだという認識が、この20年ぐらいの間、もう少し正確に言うと1980年代の後半、15~16年前から急速に明確になって理論的な研究もふえてきたように思います。私もその中の一環にあって、いろいろ日本の社会の変革の提言をし、また運動をしてきたわけでございますけれども、この5年ぐらい、特に阪神淡路大震災のときのあのボランティアの活動によって、「やはり行政とは異なる民間の自発的な活動が重要だ」「民間の自発的な営利を求めない活動が、いざというときに社会の支えになるんだ」ということが世論的にもはっきりと認められてきた。そして、それを制度的にも認めたのが、NPO法の成立であったと言えるかと思います。
 では、その場合のNPOの役割は何かということでございます。今の話で言いますと、行政ではできないこと、できにくいことですね。行政というのは、制度によって行われます。議会によって法律をつくり、条例をつくり、そして予算をつくって議会で認められてやる。しかも、公平に納税者に対してサービスを提供するという役割を担っております。それは非常に重要でありますけれども、もっと柔軟なさまざまな新しい試みをやらないといけない。そういうときに行政の限界があります。そういう制度の制約がないからできる活動、これがNPOの一つの基本的なスタンスだと思います。  もう1つは、企業ではできないこと、あるいはできにくいこと。企業は、利益の上がらないことをしますと経営者は背任行為になりますね。株主代表訴訟によって訴えられて、「我々や株主や企業が儲からないことをして利益を失った」というと、経営者は訴えられます。企業は利益を上げることが経営の責任でございます。ですから、儲からないことは基本的にできない。ただ、大きな事業をやっている場合には、一部で儲からないことをやるということはできますね。これが企業の社会貢献活動ということでございますけども、そういうのはありますが、企業全体としては基本的には利益を上げるということが至上命令でございます。それに対してNPOは、利益を上げなくてもいい。むしろ、利益の上がらないことを社会的なサポートによって行うということでございますから、企業ではできないこと、できにくいことができる。利益の制約がない、そういうものだからできる。私は、この2つが基本的に考えておくべきことだろうと思います。  具体的な役割としては、いろいろございます。やはり先駆的、パイオニアとしての新しい、冒険的、実験的、そのような社会サービスの提供というのが大きいと思います。行政ではまだいろいろ全体に公平にというわけにはいかないけれども、今、この人たちがこういうふうに困っている、こうやってみたら、制度にとらわれることなく、利益にとらわれることなくやらないといけないと思うことを自分たちのやり方でやることができる。これが先駆的、試行的な社会サービスの提供ということですね。そのやり方は、失敗するかもしれません。失敗したら、また新しいやり方でやってみる。成功するかもしれません。成功したら、そしてこれはもっと広めて全部の人たちに同じやり方でやってもいいのではないかということになりますと、これは法律を定めて行政の役割としてやっていく。すると、NPOはまた新たに実験を開始していく。絶えずパイオニアとしての役割を担うのが大きな役割だろうと思います。  それからもう1つ大切なことは、恐らくこのパイオニアとしての役割とかかわりがあると思いますけれども、さまざまな価値観ということです。政府は、基本的には法律や条令で定めた一つの価値観のもとに行動を行います。これは当たり前でございます。こういうことは禁ずると言えば、それは禁止することですよね。こういうことは義務づけると言えば義務づけるということです。しかし、どうもそういうやり方とは自分たちの生き方は違うのではないかと思うことがある。100人のうち50人以上の人が、「これはいいね」という社会サービスは、行政で供給できますね。100人のうち3人ぐらいの人が「自分たちはこういうサービスが欲しいんだ」、福祉のサービスであれ、文化・芸術であれ、自然保護であれ、国際協力であれ、どうも政府のやっているのとは自分たちはちょっと違うんだという考え方の社会サービスがあります。ここでは、「社会サービス」というのは、非常に広い意味で使っております。政策提言とかそういうものも含めて言っておりますけれども、そういう政府とは違うさまざまな価値観、さまざなま考え方による活動があるということが重要でございます。そういうサービスがある。政府が提供するサービス、ベーシックにはそれでやっているけれども、もうちょっと違う。美術館にしても、本当に5人か10人しか愛好家がいないようなコレクション、そういうものがあって1つの美術館になっている、そういうものがたくさんある、そういう社会は文化的にも豊かですよね。みんなが「いいね」というものだけが美術館にある社会と、それぞれが「こんなものがいいんじゃないの」、ほかの人から見たらがらくたにしか見えないものがある、そういうものがいろいろなところにNPOの美術館としてある。それは非常に私どもの想像力をたくましくするためには、いいことだと思います。福祉のサービスについても、同じでございます。さまざまな団体が行政の1つのやり方とは違うやり方でやっていく、そのことによって一人一人の受益者はたくさんの選択肢を持つことができるということですね。これは豊かな社会だろうと思います。  それから、人の心にかかわるサービスですね。死の床にある、そういうホスピスにあって、物理的なケア、肉体的なケアは保険制度のもとでお医者さんがやることができますね。しかし、必要なのはそれだけかどうかというと、もっともっと心のかかわる内面の悩みを一緒に話し合うとか、自分たちの生き方、死に方を一緒に語り合う人が必要かもしれません。あるいは、いろいろ悩みを持って自殺したい、そういうときにどうする。そのときの人々に対して相手ができるのは、一人一人のボランティアということもありますけれども、組織でいえばNPOですね。行政組織がそういうことに対応することはできません。税金でそれに対応することはできません。企業も、営利に基づく相談にのって、自殺の相談にのったので30分相談にのりましたから5万円下さいと請求書を出す、そんなことをやっても自殺しようとしている人が払えるわけもございませんし、相談に来ませんね。企業も儲けになりません。そういう意味で、心にかかわるサービス、あるいはお祭りをやるようなこともそうですね。企業がお祭りをやると、「大勢来てくれた」「きょうは何人来てくれた」「どれだけPR効果があった」ということで評価しますね。行政がやるとみんなが参加できるようなお祭りで、そう変なことはやらないとか、いろいろ制約がつきますけど、民間の人がお祭りをやるとかなり行政の人がはらはらするようなことをやるとか、やったあとでとんでもない赤字が出てしまって、5年ぐらい一生懸命募金をやって返したなんていうのもありますけれども、結構おもしろい新しい動きはいきますね。芸術祭、各地のフェスティバルなんかも、本当におもしろいのは民間が中心になってやっているものですね。そういう意味で、心にかかわる社会サービスは、やはりこれからはNPOが中心にやっていかないといけないのではないかなと思いますし、逆に「これはおもしろいね」というのはNPOがかかわっておりますね。  それから、NPOの大きな役割として、行政とか企業の活動に対して第三者的な立場から監督するということがありますね。行政にとっては怖いことで、そういうNPOとはつきあいたくないと思いますし、企業もそういうNPOはつきあいたくないと思いますけれども、最近はだんだんとなくなりましたね。行政は行政なりに行政の自分たちの仕組みを監視する仕組みがあります。企業も企業なりに、自分たちの企業活動を監視する仕組みがあります。しかし、内部で監視するのには限界がありますね。外から見ると、内部では「これ、いいんじゃない」と思っていることが、外からみると「ちょっとおかしくなっているんじゃない」ということがございます。日本は、ある意味で企業とか行政に対して第三者の目が働かない社会なんですね。社会だったと言っていいでしょう。最近は、市民オンブズマンにしろ、さまざまな「行政、ちょっとおかしいんじゃない」「たしかに議論してみたらちょっとおかしいね。改めようか」、あるいは企業についても「そういうやり方はおかしいんじゃない」「そう言われればそうだ。少し改めようか」と、いろいろ企業も行政も変わりました。そして、そういう企業や行政に対してきちんとものを言える仕組みもできつつあります。愛知県の万博なんかの計画がいい例だと思います。従来なら行政が決めて企業と一緒にやったらじゃんじゃんできたことが、今やできない。それをやると世界のNPO、あるいは世界のNGPが「あれは変だよ」と言えば、世界の各国の企業も「いやあ、NGOが変だと言っているんなら、日本のあれも変なんじゃない」ということでできなくなります。そこで、NGO、NPOの人と企業の人と行政の人が一緒になってとことん突き合わせて解決策を探していくという形が、愛知万博の中では取られましたけれども、似たようなことがいろいろ起こっていますね。そういう意味では、私はNPOがこの社会にあるということは、エンジンブレーキがあるということだと思います。エンジンブレーキがないと暴走してしまうんですね。暴走してしまうと、だってブレーキかければいいわけですけれども、追突したり、いろいろある。ブレーキも利かなくなっているということがございますね。最近の企業の例を見てみますと、やはり内部で監視していてもだめだなという感じがします。とことんいってしまうと、それぞれ司法に任せて行政も余りひどいことをやると裁判所がチェックします。企業も、余りひどくなると、裁判所がチェックする。しかしNPOがあれば、そういう裁判所のお世話になる前、検察のお世話になる前に、やはりこれはおかしいから新たにいこうかと、企業や行政の自己変革が進むわけです。そのために、若干批判的なこともやる。あるいは、最近はただ批判するだけではなくて、きちんと調査に基づいて政策提言をするという形がふえてきておりますけれども、そういう形で役割を果たすということが重要かと思います。  社会的な効果、そういうものがあることによってどうなるのか、私は社会の面からと個人の面から考えたい。社会、そういうNPOがたくさんある。あるいはvoluntary organizationが地域にたくさんある、そのことは社会を常に若く保ちます。そして、社会全体としての自己変革を可能なものにしてくれます。個人の面から言いますと、さまざまな個人が参加する。自分は公務員として行政に務めている。しかし、土曜日と日曜日はNPOに行って仕事をしている。あるいは会員として会費を払うことによって、企業にいる人もNPOの活動に参加する。あるいは、いや、やはりもう企業も行政もやめて自分はNPOの専任のスタッフになるんだということで、NPOがたくさんふえることによって人生の選択肢がふえてまいります。いろいろな生き方、人生の選択肢をふやすということを通じて、一人一人が生き生きしてくるということがありますね。
 次に、きょうは私の題は「可能性と経営」ということで、可能性だけで30分過ぎてしまいましたけれども、経営について一言申し上げたいと思います。恐らくこのあと、イギリスのお2人の方から、この可能性の部分と経営の部分と、両方お話があるかと思います。NPOの経営がとりわけ企業と違うところは、ミッション(社会的な使命)、この社会的な使命をマネジメントするということなんですね。企業は利益の追求という割合わかりやすい目標があります。「ことしはこれが悪いね」「もっと経費を削減しようか」と数字で出てくる。NPOの経営というのは、ミッションを経営するということでございます。ミッション、社会的使命の経営、これは我々には経験のないことなんですね。社会的にやらないといけない、そのことを実現するための組織運営をどうするかということで、これが第1点に一番重要なところでございます。
 それから第2点として、自発性を経営する、マネジメントするということです。自発性というと一人一人の、個人で言うとボランタリーな気持ち、情熱ですね。一人一人、上からやれと言われるから月給1万円やれと言われたらやりたくなくてもやらないといけない。しかしNPOは、例え有給スタッフであってもそういう仕事のしたい人はいないですね。だからですか、一人一人がやりたいと思うことをみんなでやろうというのがNPOでございまして、この「一人一人がやりたいと思うこと」というこの自発性をマネジメントする。一人一人、生き方は違いますからね。そのためにも、みんなが組織のミッションを共有するということが重要になりますけれども、この自発性を経営するということも企業の中にはないことでございまして、これが難しい。この2点が、NPOの経営の基本だと、私は思います。そういう基本に立って、人のマネジメント、人をどういうふうにマネジメントするか、人材ですね。NPOにかかわる人はたくさんあります。会員という形で会費だけ納める人。あるいは役員として運営の責任を担う人。ボランティアとして無償で働く人、有給のスタッフ、それから専門のアドバイザー、いろいろございます。そういうものがある。
 それから、金のマネジメント、これもいろいろあります。企業よりもはるかに多様な種類のお金ですね。売上だけではなく社会的なサポートがあります。会費であるとか、企業の寄付金、協賛金、あるいは財団による助成金、あるいは行政による補助金、そういうものがあります。あるいは自主事業もあります。自主事業は企業と似ておりますけれども、それからいろいろな委託事業を受けることもあります。支出のほうは、企業とそんなには変わらないかもしれません。収入は企業と随分違います。  それから、最近は情報のマネジメントも重要ですね。特にこれが重要です。きょうは議論しません。
 それから、ネットワーキング。NPOは、一つ一つは小さい組織です。なぜこれだけ社会を動かせるか、ネットワーキングを持っているからです。我々、日本NPOセンター常勤スタッフ、私を入れて4人です。全国でいろいろ動いています。全国にいろいろな組織があって、いろいろなネットワークを持っています。そこでいろいろな情報の交換があります。そこで社会のいろいろな動きができます。そういう意味でネットワーキング、これはこの数年、NPOのネットワーキングの強さというのは実証されたと、私は思っております。  それから、法人化の仕組みということがございます。これらがNPOのマネジメントで重要な意味を、今、持っていると思います。  自治体とのかかわりは、きょうは時間の都合もありますので省略して、もし何か議論があれば後半の討論のときに話し合えればと思います。  以上、少し時間が過ぎましたけれども、私の講演にさせていただきます。どうもありがとうございました。