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日英NPOフォーラム-共生のコミュニティにおける民間非営利組織の役割と経営-

質疑・応答

■萩原 どうもありがとうございました。今のエサリントンさんのお話は、先ほどの山岡さんのお話にかなり近いものであったと思いますが、より細かく数字なども挙げられまして、イギリスのボランタリー・アクティビティーが社会に占める役割をご説明いただいたと思います。最後にエサリントンさんもおっしゃっていましたが、質問のおありの方、いらっしゃいませんでしょうか。はい、どうぞ。

■質問者 私は、障害の子供たちのいすをつくっている工房というのがあるのですが、それの連絡会の事務局長をやっております。今度、NPOの集団として認可されるのですが、NPOとして何をやるかということで、1982年にノーマン・ジョンソンさんという人が書かれた『イギリスの民間福祉活動』というのを教科書にして計画を立てております。私たちがやろうとしていることは、体に合わない福祉用具が多く提供されていることについて監視をして、情報をとって公開をしようという計画を立てておりますが、イギリスでもそういうことをやっているNPOがあると思うのですが、その辺の事情がわかったら教えてほしいと思います。これから私たちは日本で初めてですから、イギリスとかアメリカとかと連携をしながら、体に合わない福祉機器に対してコメントを出したり情報を集めたりしたいというふうに思っております。イギリスの情報を少し教えていただきたいです。

■ステュアート・エサリントン 手短にお答えしたいと思います。全く同じことをイギリスでやっているところがあります。その障害者用の福祉器具のサービスあるいは提供をしているところなんですけれども、そこで大切なのは、やはり障害者を設計に関与させるということなんですね。つまり、こういった福祉器具というのは昔はもう全くそういった障害者を関与させないでどんどん設計・製造してしまった。そして、結果として体に合わなかったという歴史を持っています。disabled living foundation(障害者の生活財団)という財団もありますし、それからレイダーという、これは障害者の人たちのための総括的な団体なんですけれども、もしもお名刺をいただけましたらその方たちとのコンタクトもとれるかと思いますけれども、いかがでしょうか。

■質問者 わかりました。

■萩原 名刺が欲しいとおっしゃっていましたので、お渡し下さい。  そのほかに。

■質問者 いろいろ質問したいことがいっぱいあるんですけれども、とりあえずgood governanceのところの話を1つしたい。イギリスのNPOはイギリス政府と行動規範の協定をしているというお話があったのですが、その大きな協定の内容というのは、相談にのるとか、キャンペーンを認める、資金源の調達みたいなお話でした。このあたりを政府との話し合いというのも大事だろうなと思うんですけれども、イギリスのいわゆる自治体ともう少し地域の密着した形の中で、基礎自治体との関係はどうなっているのかということと、あとはオンブズマン制度があるということ。これはNPOのオンブズマン制度だというようなお話だったかと思うんですけれど、そのオンブズマンというのがどういう形でgood governanceの機能を果たしているのかということを聞かせていただきたいということです。  もう1つ、NPOの財源の話なのですが、やはり財源が偏るというか、政府とか自治体の補助金に頼るということは非常に危うげな要素だということは非常にわかるわけなんですけれども、イギリスの場合、特にそちらの方は40から50の資金源を持っているというお話なのですが、これというのは具体的にどういうふうな資金源をお持ちなのか、そのためにどんな働きかけをしているのかということについて、お話をいただきたいと思います。

■萩原 ありがとうございました。  今のご質問は、特にgovernanceの項目の中でエサリントンさんがお話になりましたけれども、特にローカルな自治体といいますか、地域自治体との関係についてもう少しお話をしてほしいということと、それからもう1つ、オンブズマンの話がありましたが、その機能についていま少し詳しくということと、私も驚いたんですけれども、財源が40から50ぐらいあると。それはパブリックトラストのありようにかかわるというようなお話でしたけれども、その辺の内容についていま少し具体的にということです。  どちらにお話しいただけますか。エサリントンさん。

■エサリントン まず、自治体との関係について、お話をさせてください。自治体ですね。地方当局といいましても、いろいろなものがあります。それから、ボランティア団体といっても、いろいろなものがあります。ですからある1つの協定というのは、つまり政府との協定のようなある1つの協定という単一のものは存在しません。統一されたものはありません。ただ、ガイドラインがあります。ですから、一応ガイドラインがありまして、そういった地方ベースでの地方自治体との協定をつくるための指針あるいはガイドというものが用意されています。ですからその地域の事情に合わせてそのガイドラインを参照して、そして個々につくってもらうと。ですから1つの単一協定というものは用意しておりません。状況がみんな違うからです。
 従って、各地方のこういったボランティア団体というのは、先ほどお話ししました国レベルの単一協定というものを一応参考にしています。ただ、今既にこの地方レベルで過去2年間に80ほどの地方協定が出来上がっていますし、関心の度合いも大変高まっています。もし皆さんのほうでそういったこの地方コンパクトあるいは地方協定をつくるための統一ガイドラインにご興味のある方がいらっしゃいましたら、私のほうでコピーをお送りすることもできます。
 例えば、ヘルスケア、医療なのですが、ボランティア団体と地方自治体との間ではあまりいい関係がありません。ですから、この協定化というのはそこでは余り進んでいないんですけれども、分野によってもかなり違いますが、地方自治体についてはこういったガイドラインがあります。  それからオンブズマンなのですが、オンブズマンはNPOを監視しているというよりは、チャリティー・コミッションという団体がイギリスにありまして、このチャリティー・コミッションというところがNPOに対するいろいろな規制をつくっています。ただNPO側が登録しなければならないんですね。つまり、NPO側がどういったサービスをしているのかとか、どういったことをしているのかということをきちんと登録しておかなければならない、そういった団体はあります。ただ、このオンブズマンについては、この協定の方にすごくかかわってくるんですね。実際、先ほどお話しました単一協定の中にも、このオンブズマンというのが入ってくるんですけれども、そういった項目自体が設けられているんですが、どういった役割を果たすかといいますと、例えばNPOと政府の間に何か問題があった場合、つまりどちらかが協定に違反した場合ですね。つまり、協定というのは政府側でもNPO側でも一応これは自発的なものですから法的な拘束力はないんですけれども、何かそれに対する違反事項があった場合、またなんと言っても出来上がってからまだ2年しかたっていませんし、一応この行動規範についても最終的に5つできるもののうちまだ2つか3つしか出来上がっていませんから、具体的な違反事項があったというケースはまだ上がっていません。でも、例えばお金を上げているNPOに対してキャンペーンをしてはいけないとか、そのようにして政府が介入をしてきて、そして協定に違反するというようなことが将来的に考えられると思います。そういった違反事項があった場合にはこのオンブズマンが乗り出してきます。ですから、オンブズマンは対協定ということで考えてください。しかしNPOに対するその規制制度というのは、チャリティー・アソシエーションというところがやっております。
 また財源ですけれども、非常にたくさんあります。例えば、いわゆる自発的な寄付といっても個人からの寄付もありますし、これはイギリスではすごく大きいのですけれども、大体全人口の65%ぐらいが定期的に寄付をしていると言われています。しかし、これも90年代に入ってからは数が減ってきていますので、減って65%ということなのですが、よく遺産の一部として資金を寄付する場合が多いのですね。イギリスで非常に大きなNPOの1つなのですが、これはライフ・ボート、いわゆる救助艇の運営をしているところなんですけれども、ここの財源の実に70%はこういった遺産からの寄付によってまかなわれています。つまり、遺言で「寄付してください」と残されたお金ですね。ですから、それも寄付の1つです。それから計画的寄付というのもあります。つまり、決まって定期的に寄付すると。一時的な寄付ではなくて定期的な寄付というのもあります。ですから、今、単に一般の寄付と申し上げましても、一般の寄付だけでも非常にいろいろな場合があるんですね。
 それから、政府からのいろいろな助成金ですとか補助金につきましても、官庁ですとか、部門ですとか、非常にたくさんありますので、例えば私のところであれば政府の部門、官庁、少なくとも6つのところからいろいろな資金をもらっています。一般助成金という場合もあります。つまり、特に目的を設定していなくて、こうこうこうしなさいというようなものがないものもありますし、あるいは完全に委託事業ベースの助成金もあります。それが政府ですね。  それから3つ目は、パートナーシップ財団というのが最近イギリスでは非常にふえてきております。これは、あとでミラーさんのほうからまた話があると思うんですけれども、このパートナーシップというのは、企業やNPOセクター、それから政府の間でパートナーシップをつくって、そこでその基金を創出する。そのパートナーシップに入っていなければそのお金を得ることができないという形態です。ここ2~3年、非常に政府のほうも関心を示しておりまして、その目的でかなり政府からの支出もふえています。それから、もちろん企業もありますね。NPOセクターでイギリスで一番伸びが著しいもの、この5年ぐらいをふり返りますと、これはアメリカでもそうだと思うんですけれども、これはNPOが実際に、例えば会員料ですとか、あるいはサービスの売買、あるいは何らかの取引を通じて実際に売上を計上するという財源からのお金が非常に多くなっています。イギリスのNPOですと、利益を上げてその利益をまたNPOに戻す、そういう目的の補助金もあります。従って、実際にサービスを売ったりというところですね。これはNPOの収益あるいは財源としては、この5年間で大変伸びています。

■萩原 どうもありがとうございました。

■質問者 わかりました。

■萩原 あとでまた、午後の議論のときに、ちょっとそのあたりを伺ってみたいと思いますけれども、大体今お話しになった内容とすれば、例えば遺言で亡くなったときに遺産を残されるといったような寄付金をお出しになるとか、もっと重要なことは個人の寄付というのが、国民の7割5分以上が常にNPOに寄付を行っているということと、最後にこれはアメリカでも同じなんですけれども、パートナーシップを組むことによって財源が非常に多様になり潤沢になるとか、それからもう1つはアンド・インカムといってセルムサービスという話がありましたけれども、会費ばかりでなくいろいろなサービスで貢献していくことによって得る収入とか、トレーニングとかですね。一種のアウトソーシングのような役目も果たしているということで、これはアメリカでも同じだと思います。
 そのほかにございませんか。  ございませんでしたら、スケジュールですと11時55分からステュアート・ミラーさんのお話になっていまして、今、40分ですので、同時通訳の方にも少しお休みいただくので、10分か15分ぐらい休憩をしてからステュアート・ミラーさんのお話を11時50分ぐらいからいただくことにしたいと思います。それでは、ちょうど10分間、休憩をしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。