音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

日英シンポジウム2000「高齢者と障害者の自立と社会参加の促進:NPOと企業・行政の役割を探る」

プレゼンテーション報告:「企業とボランタリー・セクターの視点から」

ロビン・ローランド  

ロビン・ローランド

皆様、おはようございます。本日は皆様方にお話をするわけなんですが、私の肩書きとしては、かつてはロイヤル・サン・アライアンス・インシュアランス・グループの国際担当役員であったということもそうですが、もうひとつ、その会社でコミュニケーションリレーションズのディレクターをしていたということもあえて申し上げたいと思います。この経験を通して私はボランティア・セクターの皆さんと非常に有益な関係を築くことができました。ですからその意味ではラッキーだったと思います。多くの友人、そして多くの社会事業家とお会いし、そして仕事をすることが出来るわけですから。

 さて、本日私がお話するのはすでにレイミング卿がお話したことにも繋がってきます。ボランティアセクター、またソーシャルセクターはですね、やはりカスタマー、お客様のニーズにむしろ企業よりも近い存在であるということです。多くの企業は例えば政府などとは関係を築けるかもしれませんけれども、実際のカスタマーと果たしてどこまで関係が築けるか時として疑問になることがあります。政府ももちろんボランタリー・セクターについてまだまだ学ぶべきところが多いということも言えます。ということで、企業、政府そしてボランタリー・セクターの間で素晴らしいシナリオが書いていけるのではないかと思っています。

 さて、企業地域社会投資プログラムという言葉がありますけれども、まずこれについてお話しをしましょう。企業地域社会投資プログラムとは何なのか。パターンとしては3つの段階があります。最初の段階、これは私たちもよく知っているパターンです。企業はむしろボランタリー・セクターに対して受身で遠巻きの役割を果たします。ですから必要な時に若干のお金を渡すと、大義名分のためにお金を出しましょうというものがあります。これによって企業の役員、幹部の気持ちはよくなりますし、それから株主に対してもうちの会社はとても思いやりのあるところだといえる訳です。しかし、これは企業のいわゆる成功とは無関係なのです。やはりボランティア組織との間に確実で互いに尊敬しあえる関係がまだ築けないということです。それがまず第一の段階です。第二の段階、これはイギリスではより多くのケースで、見受けられますが、それは、企業がボランタリー・セクターにいい意味での深入りをしてきます。ボランタリー・セクターが立ち上がる、そのヘルプをします。また、企業からボランティア・セクターに出向やヘルプという形をとることもあります。ボランタリー・セクターに対してある調査を行い、直接的な金銭的なサポートよりも専門家によるアドバイスや技術の指導は真剣に求められているという結果がでました。そういった声もあるわけです。さて次の段階、第三の段階というのはまだ私どもも先は長いと思っております。これはどういうものか。企業がボランティア・セクターと共にビジョンをきちんと分かち合うという段階です。そのためにはお互いにプランを共有し、またどうすればお互いにとって価値がある活動になるのか、どうすれば本当にお互いにとって利益があることになるのか、それを話し合える関係になることです。このような経過を得て、本当に正しい真実のパートナーシップが築けたということになると思います。

さて企業がコミュニティ投資プログラムの中でボランティアと共に働くことでどれだけの利益があるか、これからはそこに焦点を絞っていきましょう。第一に企業にとってはボランティア・セクターに関わっていくことによって非常に多くのことが学べます。通常の従業員だけでなくマネージャークラスにとっても学ぶことはたくさんあるわけです。なぜなら社会事業家はそのサービスを必要としている人たちの近いところにいますし、そのニーズをよりよく理解しているからです。また、官僚支配とかお役所仕事とは無縁のボランティア・セクターですから意思決定も非常に早いですし、また果たしてその意思決定がどういうものか、重要性を問わず、早い決断を下すことができます。ちなみに今日の午後にお話するリビー・ブレイショーさんは私と同様に一企業に働いている人です。大企業で私と共に仕事をし、その後、ボランタリー・セクターに出向という形で働き出した方です。今や彼女は立派な社会事業家です。さらにこのようにボランタリー・セクターへの協力に積極的な企業、思いやりのある企業というのは働きやすい会社だと思われているようです。ある調査によりますと85%の回答者が社会やコミュニティを支援する企業は働きやすい企業であると考えています。これはやはり企業にとっても非常にプラスではないかと思います。新たな顧客を開拓するにもプラスになることでしょう。そして、その企業を管轄する政府側から見ても諸問題解決の一助になると考えてもらえるのではないでしょうか。また企業内で働く人たちにとってもこれは非常にプラスになることです。特に管理職についてはよりよい人の管理、また社会事業家から物事の運営について学ぶところが大きいと思われます。また、直接活動に関わる従業員レベルにとってはより視野が広がるし、自分の住むコミュニティについての関心が高まるということでこれも非常によい効果が得られると思います。また、ある企業を退職した、つまり年金生活者、彼らにとっても自分たちが何かの役に立てると思えることは素晴らしいことではないでしょうか。私は個人的にはいわゆる退職というのを何年の何月にこれで終わり、退職と決めてしまうのではなくて、もっと緩やかな、柔軟な退職が実現できればいいなと思っております。何年かかけて最後の数年は1週間の数日をボランティア活動に費やすといった緩やかな移行ができたら素晴らしいと思っています。

 企業からのサポートを求めているNPOの皆さんに、それではいくつかのアドバイスを差し上げたいと思います。まず皆さんのNPOがどんなスキルを必要とするかまずそれを考えてください。そしてどんな企業がそのスキルに秀でているかを考えましょう。そしてその企業は果たして皆さんの尊敬に値する企業かどうか考えてください。それらの条件を満たした場合にはまず提案書を作ります。この提案書、これは皆さんのNPOにとっても、また企業にとっても、それからその企業の従業員にとってもプラスになるような提案書にしなければいけません。完成後、今度はその企画書、提案書をもって、一番最高の企業、最高のパートナーとなる企業を探しましょう。そしてその企業の特に幹部、あるいは役員レベルの方たちを実際に皆さんのNPOに招待して下さい。イギリスではある組織がございます。ビジネス・イン・ザ・コミュニティという組織ですが、こちらはちょうどビジネスマンとNGOの仲立ちをするような組織です。こういった組織がなければ皆さんご自身でどんどん働きかけるべきだと思います。それから実際に皆さんが何をしているかをその目で見ていただくわけです。さて、いい感触が得られましたら次にどうするか。今度はこれでサポートが得られると安心するのではなく、最終的な細かい詰めを行うようにしましょう。これはどんなビジネスでも同じですけれども何回も討論をして最終的にお互いにとってプラスになる方向性を定めればいいというわけです。

 さてボランタリー・セクターに私自身が関わるようになって何年にもなります。もともとはロイヤル・サン・アライアンスという会社でスタートをしたわけですが、やはりこの会社もただ単に寄付金などの小切手にサインするだけのレベルからだいぶ変わりました。

そこで私が経験してきたいくつかの例をご紹介します。ひとつはCAN、これはコミュニケーション・アクション・ネットワークの略です。これは組織です。のちほど午後にリビー・ブレイショーさんが詳しくお話をしてくれますが、このCANが技術を活用できる人のネットワークとして大いに役立つものになりつつあるということはご紹介するに値すると思います。

それから、より多くの会社がコンピューターの専門家をボランタリー・セクターに送っています。もっともっとこれは促進していいと思います。コンピューターの専門家は、とかくコンピューターおたくではありませんが、コンピューターにずっと張り付いたような状態になっているので、コミュニケーションスキルをアップさせるのにもプラスになりますし、またボランタリー・セクターの多くが今、コンピューター技術、あるいは知識不足に悩んでいるので、お互いにとってこれはプラスになるアイデアだと思います。また、いわゆる上級管理職の方たちが実際にボランティア・セクターの活動に関わって、そして自分たちが色々なサービスを行うという例も多々あります。 さらに、イギリスではアン王女のご協力もいただきまして障害者のための国際スポーツセンターというのも建てられました。これももちろん私どものスタッフが大変な努力をいたしまして起工するにいたったものです。

 それからもうひとつの例としては、目の不自由な方あるいは耳の不自由な方にも劇場、芝居を楽しんでもらおうという試みです。これは私がもともと働いていた会社とロイヤル・シェークスピア・カンパニーという劇団が共同で行いました。目の不自由な方、耳の不自由な方にも芝居を楽しんでいただけるような例えばナレーションのサービスなどを行ったわけです。このような活動を行うにあたり企業として多額のお金が必要だと思う必要はありません。むしろ社員や年金受給者に時間をあげる、またはその時間を使わせてあげる必要はありますけれども、お金の調達はむしろその彼らが考えることが出来るからです。

 それからもうひとつの面白い例としてこんなものもあります。企業の従業員が例えば有給休暇の2日間をボランティア活動に使用したとします。するとその場合、企業はあと2日間、同じその日数を追加支給してさらにボランティア活動してくださいということで提供する、そんな例もあります。もちろん、最良の答えはこれひとつというものではございません。協力とはいってもあくまでもその状況に即した協力でなければ意味もありません。しかしながら企業とボランタリー・セクターが共に一同に会し、そしてお互いに対してどのようなことができるかを考えることは非常に価値があることだと思っております。ご静聴ありがとうございました。