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日英シンポジウム2001「すべての人が尊厳をもって共に暮らせるまちづくりをめざして」

プレゼンテーション報告 ロビン・ローランド(大阪)
「コミュニティと企業のパートナーシップ」

ロビン・ローランド(大阪)

 こんにちは、皆さん。12年間、私は幸運にもすばらしい仕事に恵まれました。
世界中を出張し、国際的な会社の社長として活躍してまいりました。 ロイヤルインシュアランスという大きな保険会社の社長でした。私の元には1 万人以上の社員と700 万人以上の顧客と、50カ国に100以上の取引先がありました。もちろん日 本もその一つです。私はビジネスマンとして大小を問わず組織と関係を持ってまいりました。いろいろな国 でいろいろな条件で仕事をしてきました。しかし3年前、退職を決心し、私の経験を使ってさまざまなコミュ ニティや社会プロジェクトに関与しようと思いました。なぜそう思ったのでしょうか。
 91年、ロイヤルインシュアランスでコミュニティ・リレーションズのディレクターもやってくれないかと 言われたのです。幸運でした。それで私の人生が様変わりしました。92年、私はロンドンの東端に案内され ました。アンドリュー・モーソンが運営しているブロムリ・バイ・ボウ・コミュニティセンターを見に行っ たのです。この地域についてはアンドリューがお話しした通りですが、彼が行く前には絶望的な場所でした が、すばらしい場所に生まれ変わっていました。いろいろな人々、歳や肌の色も文化も違う人がお互いに尊 敬しあって生きていました。誰も疎外されていません。高齢者であろうと障害者であろうと英語をしゃべれ ない人であろうと疎外されていません。いろいろな努力をしてすべての人が自分たちの才能をこのコミュニ ティで使えるように運営していたのです。
 私の目は開かれ、勇気が湧いてきて、その日に即アンドリューと話を始めました。一緒に、他の人のため に何かできないかということを話したのです。ブロムリ・バイ・ボウは、多くの企業に対して彼らの顧客の ニーズにもっと近しくなるためにはどうしたらいいかを教えてくれました。そして我々は企業としてスキル があるわけですから、最適な形でブロムリ・バイ・ボウに関与することができます。計画づくり、財務、コ ンピューター、マーケティングのスキルを提供することができます。
 まもなく私は若い人をセンターに送りました。彼女はそこですばらしい開発の仕事をしました。そして企 業で十分な経験があってもここの仕事はすばらしいと言ってくれたのです。
 アンドリューは、世界を良い方向に変えようとしている他の社会起業家にも私たちを引き合わせてくれま した。当時は、いわゆる福祉国家イギリスが、必要な人々に解決を提供することができない状況でした。ス タンダードパッケージをすべての人に一律に提供するのは簡単です。しかし中央政府が特別な多くの人々の ニーズを満たすことは難しいのです。
 ビジネスとしてアンドリューの他の提案を支援しました。グランドバンケットを95年に開き、社会問題を ここで話しました。ブレアご夫妻がいらっしゃいました。そして「ファイナンシャルタイムズ」のジャーナ リストであるチャールズ・レッドベター氏も来ました。ブレアさんが施政演説をしたときもそうでしたが、社 会起業家を応援しようということを言ってくれたのです。そしてチャールズ・レッドベター氏がすばらしい 本を書きました。「社会起業家の台頭」というタイトルです。

 こういった経験を通してはっきりとわかってきたのは、構造ではなく、人々が先にあるということです。営 利団体であっても、NPOであっても同じです。優先順位は実際にそれを必要としている人々のニーズを満た すということ。そういう社会起業家は成功し、世界で重要な役割を果たしているということがよくわかりま した。ビジネスとコミュニティのパートナーシップは私にとっても一つの訓練でした。ビジネスマンとして は経験がありましたけれども、私は喜んでこの仕事を楽しむことができ、早期退職を決心させるほど私に影 響を与えてくれました。そして、今までの私の経験と新しい社会起業家としての勉強をしながら、二つ目の キャリアを模索することができました。そして他の人たちが自立するのを手助けすることができました。 現在ボランティアとして10以上の社会コミュニティ、そして環境活動に奉仕しております。7000人ものメ ンバーのいるUKで最大のNPOの副会長もやらせていただいています。
 でも、お聞きになるでしょう。では日本とどういう関係があるのか、と。
 私が最初に日本を訪問したのは1987年のことでした。すぐにいろいろな人たちと友だちになりました。こ こに来るのは本当に楽しかったです。ビジネスマンとして12年間で40回訪日しました。その間、偉大なる国 を拝見しました。たくさんのことが成就されています。政府と企業がすべての問題に対応し成功を収めてい た自信に満ちている状態から、経済や社会問題にどのように対処していいかわからないというところに陥っ ている現在までを見てきました。

この3年間、私の二番目のキャリアとしてボランティア社会アドバイザーとして仕事をするようになって、 その後14回来日しています。
 多くのNPO やコミュニティ組織の人々に話をしています。今年の6回の訪日では、東京、横浜、名古屋、神 戸、京都、仙台、北九州、大阪、浜松も訪ねました。12の異なった会議でも講演をしました。ワークショッ プやコミュニティ会議にも出ました。そこから明確な結論が出せました。私たちはお互いに助け合うことが できる、お互いに学習することができるという事実です。
 イギリスでは、福祉国家として本当に必要な人々に対してサービスを提供していくことは非常に困難で、市 民が参加していく必要があるということを知るのに、15年以上かかりました。各々のコミュニティは特徴が あり、そこにいる人々が関与しなければ、問題を解決することはできないということがわかりました。だか らこそ、社会起業家のネットワークづくりが必要なのです。
 日本で、いろいろな社会問題に対応しようとしている、社会的に、また市民としても起業家としても能力 のある方々とお会いしました。
 私は8月に浜松に行き、そこで、N- PocketというNPOの民間支援組織の代表理事とお話ししました。1時 間、彼女のオフィスで話し、そこで私はそのオフィスの壁にかける標語としてふさわしい言葉を提案させて いただきました。仙台とUKでも引用しました。UKでも歓迎されたようです。

「あなたの創造力を使いなさい。
オープンになりなさい。
ビジョンを持ちなさい。
ビジョンのために資金を集めなさい。
他の人々から学び、そしてその経験を生かしなさい。
良きビジネスの実践を学びなさい。
人々にあなたが何をやっているか伝え続けなさい。
人こそが最も重要なのです。
人々に対する尊敬を失っては何もすることはできません。
質の高い仕事をすれば、質の高い結果が得られる。
パートナーシップを大切にしよう」

政府-地方自治体も中央政府も、企業もコミュニティもお互いに協力するということを学ばなければなり ません。必要なものがほんとうに必要としている人々に届くように声をあげなくてはなりません。
 私だけがブロムリ・バイ・ボウのような「構造よりも人」を重視する組織に深く関わっているビジネスマ ンではありません。
 ブリティッシュ・ガスのCEOで、ブリティッシュテレコムの会長がこのように言っています。 「このような社会事業は権利を剥奪され、社会的に排除された人々にとって、重要な変化をもたらす。全て の人々がともに関わるパートナーシップが重要なのだ。」と。
ありがとうございました。